創り出すのはむずかしい
中国の変な日本語商品に負けない出来だった。作れば作るほど、バランスなど気にならなくなり、思いのままに、言葉の意味を意識せず作れるようになった。デザインしつづければ変な日本語職人になれそうだ。
と強気になったが、実はずっと画像をいじっている間に何がおもしろネタかわからなくなってしまった。変な日本語を摂取しすぎてしまった。
このサイトでよく中国から変な日本語の商品を紹介している。年に1度は変な日本語の記事を書いている。そのため中国にいって変な日本語をハンティングしたいのだが、最近は中国に行くことができない。困った。
一方ネットを見てみると、中国では変な日本語の服ブームが過ぎたのか、以前よりも新作を見なくなり、代わりに「JK」と呼ばれる制服のような服や、「不良」と呼ばれるロングスカートの不良風の服が人気になっている。
このままでは、今度中国に行くときには、昔ながらの変な日本語服の文化がなくなっているかもしれない。これは困った。
日本語話者でないだろう人が書いた日本語。その近年のトレンドといえば、文章が増えてきたのがひとつのポイントだろう。以前は「かわいい」などの単語が多かったと思う。
英語でいうと、「SPORTS」とか「FASHION」とか書かれた服ではなく、なんだかポエムのような英語が書かれる服が目立つようになった、そんな感じだ。
あとちゃんとモデルの人が着るようになったというのもひとつの変化だ。昔は服だけの商品写真だったけれど、近年はかっこいいお兄さん、かわいいお姉さんが着るようになった。
そうそう、最初に書いた新しいトレンド「JK」と「不良」だ。中国語でそう表記されるのだから仕方がない。
中国には日本の女子高生の制服みたいなのを着る女性が昔からいた。それが最近急激にファッション化し、JKファッションのアパレルメーカーが出てきて、大都市のモールに店を構えるほどになるなど、ビッグウェーブになっている。
「不良」はJK同様に制服風なんだけど、ロングスカートにバラの刺繍といったもの。どうも「今日から俺は」をアピールしているものが多いので、その影響を受けているデザインなのだろう。
JKと不良のいずれも、日本語が使われていないものもあるが、日本らしさをアピールすべく、たまに変な日本語が縫ってあるものも混ざっていたり、写真に日本語ポエムをつけていたり。
中国ではアパレルに限らず、日本風にすれば人気になりやすいというトレンドある。
そんなこともあって、写真にプリクラで日本語を入れられるような、フォトレタッチアプリも出ている。
母語が日本語の人には天然モノの変な日本語は真似できないが、そういったフォトレタッチアプリを使えば、天然モノを再現できるのだ。これで変な日本語商品の量産が可能だ。
このようなアプリに虜になって積極的に自分撮りに変な日本語を使う人がいた。名前はちとせさん。中国や韓国などのB級カルチャーが好きで語学もできるという。
醒图推しのちとせさんに、最高の変な日本語のファッション写真を作りましょう!と相談すると「いいですね」と快諾。
「なければ作れ」の精神で、ちとせさんと、ちとせさんの友人のひとみさんとカメラマンのDENさんに協力してもらい、最高の変な日本語入り写真を作ることにした。
当日、ちとせさんは予想に反してノリノリでキリル文字の服を着てあらわれた。読めない、そこにしびれてあこがれて、オンラインショップのアリエクスプレスでいろいろ買うんだそうだ。
いきなりカオスな写真を作ってしまったちとせさんだが、そこでは終われない。もう1ステップある。
中国のオンラインショップに変な日本語のフレームが売られている。アプリがあるにもかかわらずわざわざ売っているだけあって、さらにごった煮感がすごい。それを導入しようというわけだ。
この何百ファイルもの天然モノの変な日本語の詰め合わせを、ちとせさん、ひとみさんの写真に合わせる。もう情報のアルマゲドンだ。
買うのは中国語と慣れとクレジットカードが必要だ。クレジットカードで購入すると自動でダウンロードURLを教えてくれるんだけど、そのURLを知るためにアリババのチャットアプリをインストールする必要があって、ダウンロードするにはバイドゥのアプリが必要でといった具合。どうにかこうにか中国のアプリをいろいろインストールし、素材をダウンロード。
作業の最中、ちとせさんに聞いてみた。アリエクスプレスの買い物ってどう?
「欲しいデザインの服を見つけて、何度も同じような商品をクリックしてると、おすすめ一覧が変なモノだらけになります」
「上を指さすポーズで『kigurumi』って書いてあるうんちの着ぐるみパジャマをみつけて、面白がって検索いっぱいしてたら、うんちくんグッズがおすすめにいっぱいになりました」
なるほど。上級者の世界だ。
そうこうしているうちに出来上がった。それっぽいのが出来ていた。
中国の変な日本語商品に負けない出来だった。作れば作るほど、バランスなど気にならなくなり、思いのままに、言葉の意味を意識せず作れるようになった。デザインしつづければ変な日本語職人になれそうだ。
と強気になったが、実はずっと画像をいじっている間に何がおもしろネタかわからなくなってしまった。変な日本語を摂取しすぎてしまった。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |