特集 2021年4月27日

中国の変な日本語で着飾る

こんな感じで中国独特の変な日本語ファッションを作る。

このサイトでよく中国から変な日本語の商品を紹介している。年に1度は変な日本語の記事を書いている。そのため中国にいって変な日本語をハンティングしたいのだが、最近は中国に行くことができない。困った。

一方ネットを見てみると、中国では変な日本語の服ブームが過ぎたのか、以前よりも新作を見なくなり、代わりに「JK」と呼ばれる制服のような服や、「不良」と呼ばれるロングスカートの不良風の服が人気になっている。

このままでは、今度中国に行くときには、昔ながらの変な日本語服の文化がなくなっているかもしれない。これは困った。

変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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変な日本語の服は健在

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「アップ」が目立つ。細かくみると投資をするとか金持ちになるとか書いてある。
チャイナドリームが伝わる逸品でしまいま。

日本語話者でないだろう人が書いた日本語。その近年のトレンドといえば、文章が増えてきたのがひとつのポイントだろう。以前は「かわいい」などの単語が多かったと思う。

英語でいうと、「SPORTS」とか「FASHION」とか書かれた服ではなく、なんだかポエムのような英語が書かれる服が目立つようになった、そんな感じだ。

あとちゃんとモデルの人が着るようになったというのもひとつの変化だ。昔は服だけの商品写真だったけれど、近年はかっこいいお兄さん、かわいいお姉さんが着るようになった。

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「着る服ないの」。されどテロリスト。
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むかしの変な日本語商品にありがちな商品も出ているが、だんだん新作は減ってきている。

そうそう、最初に書いた新しいトレンド「JK」と「不良」だ。中国語でそう表記されるのだから仕方がない。

中国には日本の女子高生の制服みたいなのを着る女性が昔からいた。それが最近急激にファッション化し、JKファッションのアパレルメーカーが出てきて、大都市のモールに店を構えるほどになるなど、ビッグウェーブになっている。

「不良」はJK同様に制服風なんだけど、ロングスカートにバラの刺繍といったもの。どうも「今日から俺は」をアピールしているものが多いので、その影響を受けているデザインなのだろう。

JKと不良のいずれも、日本語が使われていないものもあるが、日本らしさをアピールすべく、たまに変な日本語が縫ってあるものも混ざっていたり、写真に日本語ポエムをつけていたり。

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「遠い空、空の果てに」と書かれた服。オリジナルの不良の罪を除くの乙女だそうです。
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なぞのトン(コットン)の説明が入るオシャレJK服の商品写真。
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春日部で検索すると出てくる、春日部というブランドのJK服だ。クレヨンしんちゃんの影響がありそう。
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変な日本語写真を作る

中国ではアパレルに限らず、日本風にすれば人気になりやすいというトレンドある。

そんなこともあって、写真にプリクラで日本語を入れられるような、フォトレタッチアプリも出ている。

母語が日本語の人には天然モノの変な日本語は真似できないが、そういったフォトレタッチアプリを使えば、天然モノを再現できるのだ。これで変な日本語商品の量産が可能だ。

このようなアプリに虜になって積極的に自分撮りに変な日本語を使う人がいた。名前はちとせさん。中国や韓国などのB級カルチャーが好きで語学もできるという。

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中国のアプリ「醒図」で日本語をがんがん盛っていくちとせさん。
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「東京イン」「ス|パ|!!!」「楽しみを保つ」ほか、突然の「ほ」など、日本では真似できないスタンプで盛るちとせさん。

醒图推しのちとせさんに、最高の変な日本語のファッション写真を作りましょう!と相談すると「いいですね」と快諾。

「なければ作れ」の精神で、ちとせさんと、ちとせさんの友人のひとみさんとカメラマンのDENさんに協力してもらい、最高の変な日本語入り写真を作ることにした。

当日、ちとせさんは予想に反してノリノリでキリル文字の服を着てあらわれた。読めない、そこにしびれてあこがれて、オンラインショップのアリエクスプレスでいろいろ買うんだそうだ。

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キリル文字の服を着てきたちとせさんに不意を突かれる。この服を来た上で中国製の日本語を入れていく
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ひとみさんも合わせてキリル文字の服を着る。
さらに小道具で中国の「燃」と書かれた飲料を持つ。
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ちとせさんはさらにそれをスマホでさっと加工し、
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新大久保のようなカオスインターナショナルな写真に。
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他にもこんな写真も。日本のようで日本のようでなく、とても独特だ。
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怪しさに磨きをかける

いきなりカオスな写真を作ってしまったちとせさんだが、そこでは終われない。もう1ステップある。

中国のオンラインショップに変な日本語のフレームが売られている。アプリがあるにもかかわらずわざわざ売っているだけあって、さらにごった煮感がすごい。それを導入しようというわけだ。

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こんな感じで画像素材が売られている。
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変な日本語の盛り合わせだ。ツッコミどころ満載だ。

この何百ファイルもの天然モノの変な日本語の詰め合わせを、ちとせさん、ひとみさんの写真に合わせる。もう情報のアルマゲドンだ。

買うのは中国語と慣れとクレジットカードが必要だ。クレジットカードで購入すると自動でダウンロードURLを教えてくれるんだけど、そのURLを知るためにアリババのチャットアプリをインストールする必要があって、ダウンロードするにはバイドゥのアプリが必要でといった具合。どうにかこうにか中国のアプリをいろいろインストールし、素材をダウンロード。

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バイドゥとかアリババのアプリをいれてどうにかこうにか買った素材にたどりつく。
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ひとつひとつがスマホアプリ醒图に負けない変な日本語のオンパレード。
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何を使うか悩むちとせさん。

作業の最中、ちとせさんに聞いてみた。アリエクスプレスの買い物ってどう?

「欲しいデザインの服を見つけて、何度も同じような商品をクリックしてると、おすすめ一覧が変なモノだらけになります」

「上を指さすポーズで『kigurumi』って書いてあるうんちの着ぐるみパジャマをみつけて、面白がって検索いっぱいしてたら、うんちくんグッズがおすすめにいっぱいになりました」

なるほど。上級者の世界だ。

そうこうしているうちに出来上がった。それっぽいのが出来ていた。

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村山春樹と二べ宮知子
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縦書きのレースの長音が横棒になったり、改行が独特なのはネイティブには真似できない良さだ。
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突然の「濱口沙世子か」の疑問形!

創り出すのはむずかしい

中国の変な日本語商品に負けない出来だった。作れば作るほど、バランスなど気にならなくなり、思いのままに、言葉の意味を意識せず作れるようになった。デザインしつづければ変な日本語職人になれそうだ。

と強気になったが、実はずっと画像をいじっている間に何がおもしろネタかわからなくなってしまった。変な日本語を摂取しすぎてしまった。

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通販サイト「タオバオ」でも素材は活用されていた
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