ああ、ミノムシくん……
僕がミノムシを意識するようになったのは小学校高学年のころだ。
植え込みのツツジにぶら下がっているのを見かけた。図鑑で見たのと同じように、枝や枯葉で器用に作った蓑をまとっていた。
蓑は外敵から身を守ったり寒さをしのいだりするために作るらしい。魅入られた。
中身が気になって蓑をめりめりと剥いてみたら、小さくて頼りない、なんの変哲もないイモムシがそこにいた。ははあ、こんなのが、自分で蓑を作るってすごいなあ。
自由研究ではミノムシの着せかえ実験に取り組んだ。
蓑を剥いて裸にしたミノムシを色紙と一緒に容器に入れておくと、ミノムシが色紙を材料にカラフルな蓑を作るというものだ。
大人になった今はミノムシを見かけてもイタズラしたりしないのだけど、ついつい観察してしまう。見れば見るほど独創的で洒脱。
ミノムシウェアを作ろう
ファッションには疎いほうだけどミノムシみたいに着飾ってみたいとは思う。
寝袋に両面テープをぐるりと巻き付けて、身の回りの素材をくっつけていけば自分だけの蓑が作れるんじゃないか。
そんなアイデアを当サイト編集長である林さんに話してみると、返ってきた答えは手厳しいものだった。
「寝袋の時点で蓑として機能するのに、後づけで装飾を施すことは悪徳にほかならない。そのカルマはやがて御身を焼き焦がし、汝は永久に迷いの生存から抜け出ることはないだろう」
岩波文庫の青帯かよ。
説法は一旦置いておくとして、林さんがラフ画を描いてくれたので、それを元にミノムシウェアを作ることにした。
フラフープのような円形物を紐で結んで体のまわりに垂らし、そこにミノの素材を引っ掛けるイメージである。
さっそくホームセンターで材料を買ってきた。工作風景は長くなるのでダイジェストでお届けしよう。
ミノムシウェアの完成である。
竹枠やネットにフックを取り付けて、そこに好きなものをぶら下げればオリジナルの蓑を作ることができるぞ。
黒いネットを使ったので闇夜に擬態することもできる。
日々生きていると、猛獣・理不尽・恥辱・税金・力士…そういったものが突如として襲いかかってくることがある。
そんなときは蓑のなかに隠れてやり過ごそう。
さすれば万事解決であろう。
ミノムシになれました
完成したミノムシウェアで着飾ってみよう。
はじめは失敗したくないのでコンバインの袋で堅実に蓑を作ることにした。
僕の生きる世界は昆虫界よりも文明が発達しているので、枝や落ち葉ではなく人工物を身にまとうのである。
想像以上にミノムシだ!
現に、通りがかりのギャルめいた女性に「関係者の方ですか?なにしてるんですか?」と聞かれて、ミノムシになってます!と答えたらすぐに通じたのだ。
試みは大成功と言っていい。
上手くいきすぎて書くことがなくなってしまった。どうしよう。
夢はいつか叶う!
スペースが余ってしまうのでポジティブ発言をしました。
よし。次は身の回りにあるもので蓑を飾りつけしてみよう。ミノムシウェアは着せ替えが楽しめるのだ。