通潤橋とはなんぞや
通潤橋は日本最大級の石造りアーチ式水路橋で、およそ170年前に水源の乏しかった台地に水を送り込むために作られた。通潤橋が運ぶ水は現在でも農業用水として使われていて、約100ヘクタールの水田を潤しているそうだ。
そもそも「水路橋」とは読んで字のごとく、谷や川を挟んで水を運ぶことのできる橋のことである。いまググって勉強したので間違いない。
つまり、水を運ぶことが通潤橋の本当の役割なのである。
なぜ放水を行うかといえば、もとは橋の中を通っている送水管のゴミを排出するためだったらしい。現在は観光客のためのパフォーマンスとして高頻度で放水が行われているということなのだ。
そんな通潤橋は今年の6月に開催された審議会によって国宝に指定されることが決まり、秋頃の官報告示を経て正式国宝に指定されることになった。土木構造物のなかでは国内初のことらしい。
他にも通潤橋にまつわる情報を調べると、庄屋の布田保之助さんが頑張って作ったとか、水が流れるのは逆サイフォンの原理だとか、無限におもしろい話が出てくる。
油断すると知識の森に誘い込まれてしまうので、水噴き出しててすげー!!橋でけー!!うひょ~!という歓声で沸き立つおバカの国に帰りましょう。
道の駅「通潤橋」はお祝いムード
通潤橋があるのは熊本県の山間にある山都町という町。僕が住む宮崎の高千穂からは車で1時間かからないくらいの距離である。
通潤橋のすぐそばの道の駅に車を停めると国宝指定のお祝いムードにあふれていた。
夏休み期間に入っていたこともあって道の駅は多くの観光客で賑わっている。
知る人ぞ知るマニアックなスポットを紹介するぜ!という心持ちで取材に出かけたけど、どうやら直球の観光スポットだったらしい。なんたって国宝だし、ソフトクリームをぺろぺろ舐めている子どもがたくさんいるし。
駐車場から通潤橋のほうを望むと橋上を歩く人の姿が目に入った。
広報物に使われている写真は無人であることが多いのでかなり新鮮な景色に見える。そして人が立っていると橋の大きさ、高さがありありと分かるのだ。思っていたよりすごい。
橋を間近で見ることを楽しみにしながらトイレに入ると、手洗いの水が1か所だけ垂れ流しになっていて興奮した。
なるほど、これは通潤橋の放水との対比ですな(たぶん蛇口が壊れてるだけ)。
橋を間近で見る
通潤橋の放水は特定の期間中の午後1時から行われる。放水まで少し時間があったので橋を見学することにした。
単純に石造りの建造物として見ても迫力がある。どういう作用がはたらいてアーチが支えられているのかが分からないのが凄い。おまけに中は送水管まで通っていて、管にゴミが溜まったら放水もできるのだ。これってめちゃくちゃすごいものなんじゃないか。
国の文化審議会、見る目あるな。
道の駅で500円を払えば橋の上を見学することもできる。
写真を見る限りでは橋の上に柵は無いし、どう安全管理をしているか気になっていたのだ。ちなみに橋の上から水面までの高さは20mほどもある。
橋の上に登ってみると柵はなく、代わりに白線が引かれていた。警備の人も立っている。
そう、各々のモラルに安全性が委ねられているのだ。今なお人間の良心は担保になり得るという事実を示すこの光景は、極めて美しいものとして目に映る。
そんなことを考えながら心の揺れ動くままに橋の上を歩いていたら、背後から突然声をかけられた。
「線から出ないでくださーい!!」
気づけば僕の左足が白線を踏み越えていたのだった。まぬけだ。ボーっとしててすみませんでした。