まずはホームセンターで調査
まずやってきたのはホームセンター。
写真たてとしては比較的安価な商品が中心のラインナップ。見た目は万人受けするシンプルなものが中心だ。
ロゴ … 5種類
花 … 4種類
子供 … 3種類
犬 … 3種類
旅行 … 1種類
猫 … 1種類
写真ではなく、商品名の入ったロゴがはさんであるものが多かった。なるほど、デフォルト写真は必ず入っているわけではないのか。
写真が入っているものも、花、動物、子供など、ザッツ・無難という感じで誰が見ても不快感を感じないような被写体ばかり。そのかわり主張もない。本当に主張したいのは写真ではなくて写真たてなのだから、まあなっとくできる話だ。
とはいえ、調査する側としては破綻がなくて面白くない。もっとパンクなデフォルト写真はないだろうか。ほかの店に向かおう。
ナチュラル系の雑貨屋さん
つづいて、おしゃれな雑貨屋さんにやってきた。ここは木の質感を基調とした、ナチュラルな感じのお店。店内には植物が多く配置されている。写真たての写真もナチュラルだろうか。
インテリア … 4種類
子供 … 3種類
旅行 … 3種類
人物絵 … 2種類
静物 … 2種類
遊園地 … 1種類
靴下 … 1種類
ぬいぐるみ … 1種類
さすがおしゃれな店。インテリアが一番多かった。椅子やテーブルの写真だ。ついで子供、旅行。旅行はパリの風景。ここにもおしゃれさがにじみ出ている。
遊園地、子供の靴下、ぬいぐるみなど、ちょっとメルヘンチックなものが多いのも特徴だ。店の特色が出てきて面白くなってきた。
アンティークなインテリアショップ
次に、、アンティーク系のインテリアショップにやってきた。天井から吊るされた無数のランプがまぶしい。まだ11月なのにいち早くクリスマスムードを取り入れている点も見逃せない。このサンタはあと1ヶ月以上この場所に立ちっぱなしだ。
花 … 11種類
ロゴ … 10種類
インテリア … 5種類
子供 … 4種類
外国人 … 3種類
赤ちゃん … 2種類
旅行 … 2種類
靴下 … 1種類
犬 … 1種類
ぬいぐるみ … 1種類
静物 … 1種類
アンティークと写真たては相性がいいらしい。ほかの店と比べると商品数が圧倒的だ。
写真で多いのは圧倒的に花。同じ写真は1種類にカウントしているのだが、かなり展示数の多いものもあったので、数で数えたら20枚くらいあったと思う。
スタイリッシュな家具屋
つづいて、洗練された雰囲気の漂う家具屋さんにやってきた。
家具屋だけに、インテリア系の写真が多いのではないか。
絵葉書 … 15種類
子供 … 2種類
外国人 … 2種類
ほとんどが写真ではなく絵葉書。写真たてのデフォルトというよりは店員さんがディスプレイしているような気もしないでもないけれども、そういうのひっくるめてのデフォルト写真ということにしようじゃないか。
インテリア系の写真は皆無。意外だ。
ポップな雑貨屋
お次はポップでカラフルな雑貨が集まるこんなお店。写真たてもカラフルなものが目立つが、写真のほうはいかに。
子供 … 9種類
ロゴ … 5種類
? … 5種類
インテリア … 3種類
外国人 … 2種類
ぬいぐるみ … 1種類
人物画 … 1種類
全体に楽しそうな雰囲気をかもし出している写真が多かった。そんなわけで子供がトップ。
ちなみに「?」というのは、ぼやけていてなんだかわからないけど何かのアップが写っていました。
高級文具店
雑貨屋の次は文具店。銀座の高級文具店にやってきました。文房具屋だけに、地図や図面といった新ジャンルが登場してくるのでは。
旅行 … 6種類
外国人 … 2種類
建物デッサン … 1種類
旅行というのは世界の観光地の建物の写真がメイン。面白いので外国人の写真ばっかり載せてしまったが、一番多いのは旅行だった。
デッサンが出てくるあたりが、さすが文房具屋といった感じ。ただし期待していた地図や図面は見あたらなかった。
東急ハンズ
最後の2つは定番のお店。まずはデイリーポータルZ御用達、東急ハンズを物色だ。
フォトフレームのコーナーはウェディングのコーナーに隣接していた。
外国人 … 21種類
静物 … 8種類
赤ちゃん … 8種類
花 … 7種類
ロゴ … 4種類
子供 … 3種類
犬 … 1種類
まず数が多い。さすがの品揃えだ。
そして外国人の多さに驚いた。この店に限らず、外国人の写真は総じてモノクロが多い。写真たてとの色の組み合わせを選ばないようになっているのかもしれない。
それから赤ちゃんが子供を上回ったのはハンズのみ。これは隣にウェディングコーナーがある影響かもしれない。
無印良品
最後に、もうひとつの定番、無印良品だ。商品だけでなくディスプレイもシンプルなイメージがあるが、果たして。
説明 … 5種類
空 … 3種類
花 … 2種類
旅行 … 1種類
なんと、「説明書き」があるのみ、という商品が5種類もあった。思った以上の徹底した簡素ぶりだ。
そのほか写真が入っているものも、写真たてについているのではなく店員さんがディスプレイしたものと思われる。印刷がドットの荒いインクジェットだったりしたからだ。
調査結果発表
これまでの結果を合計したのが下のグラフだ。
一位は外国人。ほとんどがハンズだが。つづいて花、子供、商品名ロゴ、の3つが2位。このあたりは店も分散していて、どの店にいっても割と見られるデフォルト写真である。
個人的には犬、猫、空あたりが少ないのは意外。子猫が寝ているところや、夕日に染まった空は大定番かと思ったのだが。やはりかわいすぎる/綺麗すぎる写真は写真自体が注意を引きすぎて、写真たてに注目を集めることができないからだろうか。
よし、大体わかった。この研究結果を元に、次は自分なりのデフォルト写真を撮りに行きたい。
デフォルト写真を自分で撮りたい
デフォルト写真の傾向はわかった。わかってしまえばやるべきことはただひとつ。自分でデフォルト写真を撮るのだ。
調査で一番多かったのは外国人の写真だったが、あいにく協力を頼めそうな外国人はいない。ここは2番目に多かった花を撮ることにしよう。
ここまでの調査で夕方になってしまった。撮影は明日、といいたいところだが、天気予報によると明日から雨。原稿の締切を考えると、今日のうちに写真を撮っておかなければいけない。花…花…。傾き始めた太陽のようすを気にしつつ、あわてて携帯で検索する。
あった。中央区にある浜離宮恩賜庭園のお花畑だ。ネットで調べたところによると、庭園内にはお花畑があり、季節の花が咲き乱れるらしい。この時期はコスモスが満開なのだとか。
庭園の入場は16:30まで。今は16:09。今は有楽町にいるので、新橋まで電車で2分+徒歩15分。道に迷っても4分以内なら余裕がある。考えている猶予はない。
電車に飛び乗って、新橋で降りる。駅の地図を見て方角だけ確認して、早足で歩き出す。日が沈む!庭園も閉まる!いそげ!
しかしこんなところに庭園があるなんて聞いたことがなかったし、行けども行けどもリクルートやら電通やら、大企業のビルが立ち並ぶばかりだ。本当に時間までにたどり着けるのだろうか。
地図も適当にしか見てこなかったし、このへんはやたら高架が多くて道が入り組んでいる。
走れメロスみたいな気分で、ハアハア言いながら庭園を目指す。
もし間に合わなかったらどうしよう。花をやめてやっぱり外国人の写真にすればいいだろうか。サングラスに短パンはいて、東京タワーあたりで記念撮影してくればいいだろうか。
…いかん、それでいいじゃん、という気分になりつつある。それじゃまずい、企画がねじまがりすぎだ。がんばって走って花の写真を撮るんだ、メロス(俺)!
ギリギリで到着
庭園の入り口に着くと、管理人さんが門を閉めようとしているところだった。鬼気迫る顔で走りこんでくる僕を見て、管理人さんは思わず「あ、」と声を上げた。
時計は16:32。閉園時刻を少し過ぎているが、急いで来たので入れてほしい旨を伝えると、「どうぞ」といって通してくれた。助かった。
これがオリジナルのデフォルト写真
そして、なんとか日没前にお花畑にたどり着くことができた。お花畑はあまり広い畑ではなかったけれども、畑一面にコスモスが咲いている。あとは花の写真を撮るだけだ。
おもしろくないのがデフォルト写真
あれだけ苦労して撮ってきた写真だったが、家に帰って飾ってみると、案の定、面白くなかった。素人が薄暗いところであわてて撮った花の写真。面白くないのも当たり前だ。
しかし、デフォルト写真の本質は「面白くなさ」にあると思う。お店で飾られるデフォルト写真は、あくまで写真たての引き立て役。面白くてはいけないのだ。僕の写真はなんだか生気の感じられないぼんやりとした写真だが、面白くなさの点ではなかなかいい線いっているのではないだろうか。
ひとたび使われてしまえば、一転して主役は写真になり、写真たては引き立て役に降格されてしまう。そんな写真たてに、束の間の主役の座を与えてくれるデフォルト写真。なんだか夢のある話じゃないか。