特集 2019年6月10日

大東島では荷物も人もクレーンに吊るされ上陸する

カゴに入ってクレーンで吊るされる、そんな体験を南北大東島でしてきました

実に多種多様な島々から成る日本列島。その中でも私が昔から気になっていたのが、沖縄本島の遥か東に浮かぶ南大東島・北大東島である。

まさに絶海の孤島というべき場所なのでなかなか行けずにいたのだが、先日ようやく訪問することができた。

どちらの島も長年の期待を上回るほどの個性があり、滅多にできない体験ができたと思う。なんせ、フェリーの上陸からして超エキサイティングだったのだ。荷物も人も、クレーンで吊るされるのである。

1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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一般的には那覇からの空路が便利

南北大東島は沖縄本島から約340km東に離れたところにあり、アクセスの手段は飛行機とフェリーがある。

飛行機は那覇空港から南大東島へ毎日2便(月・金・土・日曜日は午後便が北大東島経由)、北大東島へは毎日1便(火・水・木曜日は南大東島経由)の運航があり、所要時間はどちらも1時間ほどだ。

とてもお手軽なので、両島を訪れる人の多くは飛行機を使っているようである。私も那覇から南大東島へは空路を利用した。島の住民や観光客のみならず、工事関係者など乗客は思いのほか多く、割と満席になりやすいようなので予約は早めが良いだろう。

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那覇空港の出発ロビーからバスで移動し、小型のプロペラ機に乗り込む
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程なくして南大東島に到着。私は左の窓席だったが、右の方が景色が良く見えたと思う
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到着時はあいにくの雨だったが、空港の職員さんが傘を貸してくれた
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そしてプロペラ機は新たな客を乗せ、北大東島へと飛び立っていった

ちなみに、南大東島と北大東島は10kmほどしか離れていない。両島の空港を結ぶ空路の飛行距離は8マイル(約13km)で、所要時間は10分足らず。日本最短の定期航空便なのだとか。

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断崖に囲まれた大東島の港湾事情

さてはて、ここからが本題の航路である。南北大東島へのフェリーは、大東海運の「だいとう」が5日に1本程度のペースで那覇港と南北大東島の間を往復している。……が、ぶっちゃけ飛行機と比べると、遥かに利用が難しい。

便数が少ない上に、海の状態によっては出航の延期も珍しくない。どの港に到着するのかも直前にならないと分からなかったりする。なぜそんなことになるのかというと、それは大東島の特殊な港湾事情によるものだ。

南北大東島は厚く堆積した珊瑚礁が隆起してできた海洋島だ。どちらも元はドーナッツ状の環礁であったために外周部が高く盛り上がり、中央部は低く窪んでいるという地形的な特徴がある。

以下、南大東島の景色を眺めながら説明しよう

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内陸部にはサトウキビ畑が広がり、製糖工場の周囲に町が形成されている
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一方で、沿岸部はゴツゴツした石灰岩の断崖だけで砂浜は一切存在しない(東海岸)
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西海岸もまた同様だが、そんな断崖の中にも人工の施設が見える
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南大東島の主要港「西港」である
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岩盤を削って整地しただけの、とてもシンプルな構造だ

南大東島には、西海岸、北海岸、南海岸にそれぞれ「西港」「北港」「亀池港」の三つ、フェリーが発着できる港が存在する。北大東島もまったく同じ港の配置だ。

いずれも入江ではなく、外洋に剥き出しになっているので波風の影響をモロに受けやすい。島の三方に港を分散することで、風向きや波の状況に応じて使い分けているのである。フェリーが到着する港が直前まで決まらないのはそのためだ。

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こちらは西港の、より昔に築かれたと思われる部分
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太平洋の荒波が打ち付ける、とても過酷な環境である
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この密集して散乱するドラム缶に、そこはかとない美を感じた
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北海岸に位置する「北港」。西港よりもかなり規模が小さい
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岩盤を削って拡張したらしく、それ以前の道路の残骸が儚げに残っていた
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いよいよフェリー「だいとう」に乗船!

私は南大東島へのアクセスこそ飛行機を使ったものの、その後の旅程が「だいとう」の運航スケジュールに合致したことから、南大東島から北大東島へ渡るのと、北大東島から那覇へと戻る際にフェリーを使うことができた。

だいとうに乗船するためには、電話での事前予約が必須だ。発券は西港の事務所で行われるが、西港からフェリーが出るとは限らないので前日までに発券を済ませておく必要がある。

当日、港が決まったら電話で連絡を頂けるということであったが、入港の予定時刻である8時を過ぎても着信がない。やきもきしながら待っていると、8時半ぐらいに「10時までに亀池港へ集合してください」との連絡があった。出港の予定時刻は9時なので1時間遅れだが、まぁ、そのくらいは誤差の範囲なのだろう。

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亀池港に到着すると、既に荷役が行われていた。建築資材を搬出してるようだ

南北大東島の港は、港とはいうものの波が強すぎて船を接岸することができない。なので岸から少し距離を開けて停泊し、クレーンで荷役を行うのだ。

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停泊中も常に波に揺られているので、岸に着けることができない
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こちらは北大東島での荷役の風景。クレーンで吊るされたコンテナを船に載せる
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プロパンガスのボンベもケージに入れてこの通り

とまぁ、貨物はクレーンでひとつずつ積み下ろしを行うのだが、人の乗り降りもまたクレーンで行われる。これがとにかく楽しくて興奮した。

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南大東島ではこの青いカゴに入って吊るされた
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北大東島のカゴはグレーで屋根付きだ
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巧みのクレーンさばきで海をまたぐ
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わずか20秒ばかり、あっという間に上陸だ

私もまたこのようにしてフェリーの乗り降りをしたのが、最初の南大東島からの乗船ではあまりに興奮しすぎて写真すら撮れていなかった。

その反省を活かし、二回目の北大東島への上陸と、三回目の北大東島からの乗船の様子はバッチリとカメラに収めることができたのでご覧ください。

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まずは港からカゴが船上へと運ばれてくる
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カゴが到着すると、乗客が乗り込む(この時は8人くらい)
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カゴの扉がロックされ、船員さんの合図によっていよいよクレーン・アップ!
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すると、カゴは一気に海の上へ
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港の職員さんによってカゴが受け止められ、無事上陸

船員さんの慣れた連携作業により、実にスムーズな上陸であった。より臨場感が伝わるよう動画も用意しましたので、お時間がある方はどうぞ。


お次は翌日、北大東島からの乗船の様子だ。こちらの方が天気が良く、乗客も私含めて二人だけだったのでリラックスできた……と思いきや、最後の最後にアクシデントが。

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南大東島から乗船していた乗客に見守られながら上昇
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美しい海やカゴのシルエットを眺めながらと余裕であったが……
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船に着く間際にガツンとした衝撃が。カゴが船体に衝突したのだ
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下りる時には「大丈夫ですか?」と声を掛けて頂いた

熟練の操縦士さんでさえ、時には船体にぶつけてしまう。絶え間のない波で揺れ動くフェリーにカゴを載せる、その操作の難しさがうかがえるというものですな。個人的には思わぬハプニングで楽しかったけど。

こちらも詳しい様子は動画をご覧ください。

 


断崖に囲まれた絶海の孤島ならではの上陸体験

というワケで、クレーンに吊るされての乗下船を満喫することができた。フェリーを港に接岸できない、大東島の特異な港湾事情からなる貴重な体験であった。これはもう、ひとつのアクティビティといっても過言ではないだろう。

飛行機の方が早いし悪天候に強いので便利ではあるのだけど、大東島を訪れる際には南北間の移動だけでもフェリーの使用を強くオススメします。楽しいですよ!

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ちなみに那覇港では貨物のみクレーンで、人は普通のステップで乗り降りします
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