広告企画 2023年3月29日

奈良の大仏さまを事前に予習した上で改めて見学する

大仏殿のおすすめの見方とは?

安達:大仏殿はおすすめの見方があるんですよ。 

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大仏殿のおすすめの見方とは?

安達:大仏殿に歩いて近づくときに、入口の方をみるんじゃなくて、上の屋根の方をみながら近づくんですよ。すると、へんな言い方になっちゃいますけど、VRとか3Dみたいな感覚で建物がグーッと迫ってくる感じがするんです、実物なんですが……。あ、もうここは、鹿はいないのでフンを踏んづけることはないから(屋根をみていても)大丈夫です。

西村:現実を仮想現実っぽく感じることができるという。複雑だけどおもしろい見方……。鹿のフンを踏んづける心配もしなくていいのも仮想現実っぽいし。

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迫ってくる……
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覆いかぶさるように迫る大仏殿

安達:みんなつい入口をみながら進んじゃうんですけど、やっぱりこの下から見上げる迫力はすごいんです。

西村:建物は奈良時代のものと似せるように頑張ったんですかね?

安達:頑張ってないですね。

安藤:頑張ってないんだ。

安達:ちなみにあの真ん中にあるくにゃっと曲がっている屋根、唐破風というんですけど、あれは江戸時代アレンジなんです。奈良時代や鎌倉時代の屋根にはああいうのはなかった。

西村:唐破風あると、お城というか……銭湯っぽさが出ますね。

安達:そうなんです。で、唐破風の下に獅子の彫り物があって、さらにその下。扉が四枚並んでるの見えますか? 実はあれ、年に2回ほど開いて、そこから大仏さまのお顔が見えるようになってるんですけど、そういうギミックをやっちゃうのが、江戸時代のセンスなんですよね。

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顔見えるようにしちゃうのか〜

安藤:顔見えるように扉つけたろって、つけちゃったんですね。

安達:再建するたびに、その時代時代に進化というか、流行りは取り入れているようなんですけど、現代でいうと完全に巨大ロボの発想ですよね。

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完全に巨大ロボの発想ですね

扉が開くと、大仏さまの顔のアップが見える。ケレン味がある演出だが、見てみたさはかなりある。 

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手のポーズは喋らない仏さまからのメッセージ 

それではやっと、大仏殿の中に入る。

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ジャーン

西村:今回は事前、大仏さんの手がそれぞれ「施無畏印」「与願印」というポーズであるのは予習してまいりました。

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手にも意味ある(『NHKラーニング』より)
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まあ、おちついて、というしぐさの「施無畏印」
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どうぞ、というしぐさの「与願印」

安達:施無畏印は、よく「まあまあ落ち着いて」とやるときの手の仕草なんですよね。で、与願印は「どうぞ、喋ってください」ってやるときの「どうぞ」っていう手の仕草。施無畏印と与願印で「まあまあ、怖がらずに、願いや悩みをどうぞ」という意味があるわけです。

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「まあまあ」の仕草と「どうぞ」の仕草。施無畏印と与願印

西村:ああ、なるほど。いわれてみれば、わかりやすい。

安達:仏像が日本に入ってきた当時は、仏教のことは貴族やインテリしか知らなかったわけです。日本に限った話じゃないんですけど、時代や地域にかかわらず、文字も知らないような庶民は、仏教の教えの素晴らしさがさっぱりわからない。しかし、そういった人々にもわかるように、ポーズ(仕草)で、仏さまの素晴らしさを伝えているわけですね。

西村:仏像は物ですから、喋らないわけですけど、手話というか、その形や仕草によって、その仏さまのメッセージを伝えているわけですね。

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仏さまはアニメのキャラ設定みたいなところがある 

西村:施無畏印、中指がすこし折れていますけれど、あれはなにか意味あるんでしょうか? 

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意味あるんでしょうか?

安達:これは、指自体がどうのということではないと思うんですが、奈良に仏教や仏像が入ってきてから進化をしていて、指先の表現も細かく豊かになってくるわけですよ。だから手のひらをまっすぐでもいいんでしょうが、やっぱり、こう、指先をすこし倒すことによって、やさしさややわらかさを表現しているんでしょうね。

西村:言われてみれば、ちょっと折れてるだけで、指に表情がついて、すこし優しそうな印象がでますね。大仏の横の仏像も同じポーズ……といっても左右逆になってますが。ありますね。

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大仏横の仏像

安達:仏像、というか仏さまそれぞれに、どんなお姿をしていて、どんなポーズで、どんな特徴があるのかは、決まっているんです。お経の一種で、仏さんはどんな形してて、どんな功徳があるんだよというのを説明しているお経もあるんです。

西村:へー。

安達:例えば、薬師如来は薬でもって心と体の病を直してくれるという特徴があるので、薬壺を手に持っていたりとか。アニメのキャラ設定と同じなんですよね。どんな事が得意でどんな功徳があるのか。もちろん、例外やちょっと違うものもあるんですが、だいたい決まっている。だから、慣れてくれば、仏さまの姿をみればだいたい種類がわかるようになってきます。

西村:仏さまのパンチパーマが「螺髪(らほつ)」で、おでこのほくろが「白毫(びゃくごう)」というのも予習してきました。

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白毫はほくろではなく、とぐろを巻いた毛。(『NHKラーニング』より)

西村:おでこのほくろとおもっていた白毫。毛なんですよね。

安達:そうです、キュルキュルスポーンと収まってる。

西村:なぜそういう特徴があるということになったのか……こういう、仏さまの大きな特徴は他に32種類あって、白毫や螺髪もその特徴のひとつ。ということですよね。

安達:そうですね。ほかにも「手に水かきがある」「歯が40本ある」「舌が髪の生え際まで届く」とか、いろいろありますが……、(奈良の大仏では)水かきはちょっと分かりづらいですね。

安達:「三十二相」というのは、仏さまは人のようなお姿はしているけれども、人を越えている超人的な姿なわけですね。これがもし、ゴジラのような形だったら……。

西村:怪物のような形だと、たしかに「親しみ」はでないですね……。

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人の姿に似ているからこその仏さま……

安達:人の姿に似ているからこそ、話も聞いてくれそうだし、親しみがでる。でもそこで、人とは違う要素を付け加えたい。というところで、白毫をつけたり、螺髪にしたりしたわけですね。

西村:神道とかだと、鏡が飾ってあったりしますけども、これは親しみというよりはもっと厳かな、近寄りがたい雰囲気がありますけど、その点仏像はこちらの悩みや辛さを聞いてくれそうな雰囲気はありますね。

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