特集 2023年11月21日

チャーハンを我慢した向こう側にあるもの~チャーハン部活動報告

スーツの男は炒飯を我慢していた。

デイリーポータルZにはチャーハン部という、チャーハンを食べるだけの部活があり、月に1度集まってチャーハンを食べに行く。そんな部活があるのかと思われるかもしれないがあるし、全国大会も狙っています。

そんなチャーハン部が、今日も集まって食べることになった。ただ、部長である筆者が近々、健康診断があり節制しているので、チャーハンが食べられない。どうする?

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

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御茶ノ水にある『萬龍』

今日は御茶ノ水にある『萬龍』というお店でチャーハンを食べることにした。ビジネスマンや学生さんで店内はにぎわっている。にぎわっているお店ということは間違いなくおいしいお店だ。

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もやしそばも食べたいよね。
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今回は月餅さん、編集部安藤さんが参加した。そして、指の先には、
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入れない可能性があるのか。

今日は平日、火曜日の夜である。なのに満席で入れない可能性があるらしい。でも、少しでも可能性があるのなら、おれたちは1%でもその可能性にかける。

ただ、一応、他のお店も探した。「ダメだったらバーミヤン行って食べましょう」と言ったとき、「あー」と反応された。

(なんかごめん)と思って静かに待った。今は入れることを祈ろう。

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待っている間、チャーハンに思いをはせる。

安藤さんが「今日、お昼食べてなくて夜も食べられなかったら、暴れてしまうかもしれない」と言っていて、暴れないでほしいと思った。

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30分ぐらい待ったがなんとか入れた。予約したお客さんが来なかったらしい。ラッキー。

部長、炒飯を食べられないってよ

店内に入り、どのチャーハンを食べるかの話になった。しかし、部長である筆者が「今週の金曜日に健康診断があって、炭水化物をあまり食べないようにしているんですよ」と部員たちに伝える。(この日は火曜日)

安藤さんが「え!チャーハン食べられないの?」と驚かれたが「ぼくだって食べたいですよ……!」とくちびるを噛みしめながら答えた。

そう、今日は食べられないのだ。月餅さん、安藤さんが食べているのを見ているだけ。こんな拷問あるのか。でも、自分のためである。健康診断でいい結果を残したいのだ。

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うまそうなメニューたちが胃袋に訴えかけてくる。訴えかけてこないでほしい。

「餃子も食べたいじゃないですか。あと、ラーメンもワンタンもおいしそうだな」といろいろ食べたいものを言っている。食べれらない人の前で。

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楽しそうだな!おい!!!

店内はおいしそうなにおいが漂っている。これだけでも胃が刺激されるのに、違うテーブルではメニューが運ばれた瞬間に「こんなことある?」と言っていた。なにが起きている?

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周りを気にしていたら、安藤さんは肉玉炒飯を頼んでいた。

そして、すぐに炒飯がやってきた。

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こちらが豚玉炒飯。甘辛いタレがたっぷりと絡んだ豚肉にふわふわの玉子と、シュウマイがついている。こんなことあるのか。

見るからにおいしそう。おいしいそうというか、おいしい。食べてないけどおいしいと体が言っている。見た目だけでよだれがあふれて、どうにかなってしまいそう。

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「じゃあ食べるから!」と宣言して食べていたが、宣言しないで食べてほしい。
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そんなおいしそうなチャーハンを食べる。
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かみしめて、
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おいしすぎたのか、画角からいなくなった。

「どんな味なんですか?」と聞いたが、答えないで悶えていた。答えてほしい。

「江ノ島くん、これやばいよ」

いや、なにがやばいのかを教えてくださいよ。

「これ、食べないのもったいないよ」

味を教えてほしい。

甘辛い味の肉の味が濃くて、それをチャーハンと一緒に食べると、ものすごくおいしい。そして、この玉子もふわふわで一緒に食べると味が少しまろやかになって、計算されているチャーハンらしい。

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ずっとおいしそうに食べている。

そして、月餅さんのチャーハンもやってきた。これも訴えかけてくるな。空腹の胃に。

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そして月餅さんが頼んだ萬龍焼豚炒飯。秘伝のタレで時間をかけて煮込んだチャーシューがたっぷりとのっている。秘伝のタレ、ストレートで飲ませてくれ。
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「うわ!おいしい!」と驚いていた。隣に座っている人、そんなうらやましそうに見ないで。
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自分の中の理性が崩壊しそうになっているのをなんとか食い止めている。

野菜スープで耐える

あまりにもおいしそう。何か食べないと「わー!チャーハン!!」と言いながら走ってお店から出てしまいそうだ。しかし、夜に炭水化物を食べていいものか。健康によさそうなメニューを食べよう。

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悩んだ末、頼んだのが野菜スープ。

やさしさの中にしっかりとした味があり、かなり満足感があるスープ。満足感はあるが、チャーハンを食べたい気持ちが抑えてきれない。でも、耐えるんだ。今週ある健康診断のために。

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おいしそうに食べているが、
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(おれだってチャーハンを食べたい)という悔しさを胸に秘めて野菜スープを飲んでいます。
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そんな悔しさを持っていると知らずに「餃子もおいしい」と言っていた。あまりのうらやましさに「ウェイ!」と言った。

あまりにもつらそうな顔をしていたのか、安藤さんが「健康診断って普段の自分を診断してもらうものだからさ、もう食べてもいいと思うよ。まだ数日先なんでしょ?」と言ってくれた。

「でも、自分との戦いなんで」と答えると、「気持ち強いな」と言って餃子を食べはじめていた。あと一声あったら食べていたので、もっと力強く説得してほしかった。

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食べ終わった皿すらおいしそうに見える。

ここにあのおいしそうなチャーハンがあったのかと思うと、お腹は減ってくるし、お皿をなめてしまいそう。そのときはなぐってでも止めてくれ。

「江ノ島くん、そんなチャーハン我慢した状態でこんなにおいしいチャーハン食べたら死ぬと思うよ。うま死。」と安藤さんが言う。

だから、こう言ってやったのさ。

「おれ、ここで死ねるなら本望です」と。そう言ってお店を出た。

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「部長だから払いますよ」と伝票を手に取ったが、「あまりにもかわいそうだから大丈夫」と安藤さんが払ってくれた。
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あまりの食べたさにお店を出てから地団駄を踏んだ。大人になっても地団駄を踏むことあるんだ。
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健康診断が終わったあとの最高の炒飯

健康診断が終わった後にもう一度来よう。そのときは同じメンバーで集まろうと約束して帰った。そして、数日後、健康診断が終わった。

終わった当日、同じメンバーで萬龍へと行き、チャーハンを食べる。前回の分まで食べるぞ。

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健康診断の結果(当日にわかる範囲でもらえるやつ)を片手に食べるぜ!!

魚や豆腐など肉を控えた食生活を中心に運動をしてください。と言われた。数値的には「明日死にます!」と言われなかったので、大丈夫だ。

だから今日は、今日だけは炒飯を食べさせてください。

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そして、やってきた肉玉炒飯。
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肉玉炒飯大盛りに肉まみれ(お肉を増量)そして、目玉焼きものせた。これが欲望を爆発させた炒飯である。

今、目の前にあの日食べられなかった炒飯がある。あのときどれだけ我慢をしていたか。そして、翌日食べたい気持ちがあふれ出て、肉玉炒飯の写真を何度見たことか。

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できたて熱々の炒飯をいただきます。いただかせていただきます。
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こんなのってないじゃん…
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うますぎる…

豚肉に甘辛いタレがしみ込んだ炒飯のうまさったらない。あまりにおいしくて「うまい」しか言えない。

体中においしいがかけめぐって、幸せが私を包み込んでいる。このまま天使が舞い降りて、そのまま天空へと行ってしまうそうだ。死なないで。

我慢をしたかいがあった。ちょっとうますぎるな。シュウマイも肉がふわふわして単品で頼みたい。このあとレバー揚げも頼んで最高の気分になった。レバーもおいしい。このお店、全部おいしいな。

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いや、本当においしい。我慢したかいがあった。

炒飯が牙をむく

いい終わりである。これでみんなもご飯を食べて帰ろうと思っていた。きれいに終わってよかったと思った瞬間、炒飯が牙をむいてきた。炒飯って牙があるんだ。

牙をむいたのは月餅さんが頼んだ『肉王炒飯』である。先日、来た時に売り切れだったらしく、興味本位で頼んだそうだ。

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あまりにもでかい。自分の炒飯の2倍か3倍はある。たぶん1キロ以上あるかもしれない。

テーブルに運ばれてきたとき、安藤さんが「これ、なんですか?うちらのテーブルのやつですか?」と言うぐらい全員が戸惑った。

やってきた炒飯を見て「こんなに食べきれないかも…」と月餅さんが言う。いや、こんなの食べきれる人、普通にいないだろう。

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そんな中「こないだ、月餅さんが食べていておいしそうだったから」と焼豚炒飯を頼んで堪能している。この焼豚がやばいらしい。ちょっともらったら確かにやばい。

自分も炒飯を大盛りにして、餃子とレバー揚げを食べてしまっている。空腹のときだったら食べられたが、もうお腹9分目だ。今、全員の中に絶望感が漂っている。月餅さんも肩を落として食べているようだ。

そんな人を放っておけないだろう。今、チャーハン部の団結力と胃袋が試されるときがきた。

おいしい。おいしいが量が多い。

申し訳ない気持ちからか、何度もおかわりする月餅さん、もうお腹いっぱいなのに食べる安藤さん、レバー揚げを頼まなければ全然食べられたなと思っている部長。

それぞれの思いがチャーハンを食べさせる。

お腹いっぱいだがなんとか1杯だけ食べてくれた安藤さん。
本気を出したのか上着を脱いだ部長。炒飯をもらう。
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みんなの力で少しずつ減っていく炒飯。

一人、また一人と力尽きていく中でなんとか食べようとする筆者。健康診断終わりの開放感が彼を強くさせ、また「残したら悪いし…」の気持ちが炒飯を口へと運ぶ原動力となる。

でも、限界がある。あと部長、節制をしていたせいか胃袋が小さくなったかもしれない。もう腹11分目。

ここで味を変えたい。

チャーハンと言えば、スープである。スープでサラサラと流し込むのだ。安藤さんは「絶対に余計だと思う」と言っていたが、見ててくれ。

玉子スープ。たっぷり。

そういえば、先日来た時に頼んだ野菜スープもでかかった。忘れていたよね。でも、頼んだものはしょうがない。食べるぞ!!

スープを飲んで、
そして、チャーハンを食べて、思うことがある。
明らかにスープが多いな…。

あれかもしれない。スープ、いらなかったかもしれない。スープが多い。

チャーハンだけでも大変だったのに、(自分で頼んだ)スープもやってきて、鬼が金棒を持ってきている。その金棒、置いてきなよ。危ないから。持ってきてと頼んだのは自分だけど。

そんな大変なときに、若いころの北島三郎さんが応援してくれた。

安藤さんがライターの伊藤さんへ買ったレコードである。「〇〇の女」というタイトルを集めており、今日、ここに来るときにたまたま見かけたので買ったらしい。北島三郎、若いのに迫力がある。平面の写真なのに飛び出して見えるな。3D写真?

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気合をもらったのでなんとか食べきった。

気合を入れて、口へとチャーハンをかきこみ、スープも飲んだ。やりきったぞ、おれは!!

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あんなに食べきったのすごいと言われたが当たり前だろ、誰だと思っているんだ。

メンバーからは「さすが部長!」と称賛の声があがる。

だからおれはこう言ってやったのさ「おれはチャーハンなら無限に食べられる男だぜ」ってね。

(本当は「みんなメニューで疑問があるときは必ず店員に質問しましょう。こういう事態にならないように」と言った。チャーハン部の教訓ができた瞬間だった。)

次の日、全然お腹が空かず、夜まで何も食べなかった。これは戦いの記録である。


たぶん、太ったかもしれない

健康診断で体重が減った分を今日で戻したと思う。でも、おいしい炒飯を食べられたので満足です。

先生、ありがとうございました。

 

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