たぶん、太ったかもしれない
健康診断で体重が減った分を今日で戻したと思う。でも、おいしい炒飯を食べられたので満足です。

デイリーポータルZにはチャーハン部という、チャーハンを食べるだけの部活があり、月に1度集まってチャーハンを食べに行く。そんな部活があるのかと思われるかもしれないがあるし、全国大会も狙っています。
そんなチャーハン部が、今日も集まって食べることになった。ただ、部長である筆者が近々、健康診断があり節制しているので、チャーハンが食べられない。どうする?
今日は御茶ノ水にある『萬龍』というお店でチャーハンを食べることにした。ビジネスマンや学生さんで店内はにぎわっている。にぎわっているお店ということは間違いなくおいしいお店だ。
今日は平日、火曜日の夜である。なのに満席で入れない可能性があるらしい。でも、少しでも可能性があるのなら、おれたちは1%でもその可能性にかける。
ただ、一応、他のお店も探した。「ダメだったらバーミヤン行って食べましょう」と言ったとき、「あー」と反応された。
(なんかごめん)と思って静かに待った。今は入れることを祈ろう。
安藤さんが「今日、お昼食べてなくて夜も食べられなかったら、暴れてしまうかもしれない」と言っていて、暴れないでほしいと思った。
店内に入り、どのチャーハンを食べるかの話になった。しかし、部長である筆者が「今週の金曜日に健康診断があって、炭水化物をあまり食べないようにしているんですよ」と部員たちに伝える。(この日は火曜日)
安藤さんが「え!チャーハン食べられないの?」と驚かれたが「ぼくだって食べたいですよ……!」とくちびるを噛みしめながら答えた。
そう、今日は食べられないのだ。月餅さん、安藤さんが食べているのを見ているだけ。こんな拷問あるのか。でも、自分のためである。健康診断でいい結果を残したいのだ。
「餃子も食べたいじゃないですか。あと、ラーメンもワンタンもおいしそうだな」といろいろ食べたいものを言っている。食べれらない人の前で。
店内はおいしそうなにおいが漂っている。これだけでも胃が刺激されるのに、違うテーブルではメニューが運ばれた瞬間に「こんなことある?」と言っていた。なにが起きている?
そして、すぐに炒飯がやってきた。
見るからにおいしそう。おいしいそうというか、おいしい。食べてないけどおいしいと体が言っている。見た目だけでよだれがあふれて、どうにかなってしまいそう。
「どんな味なんですか?」と聞いたが、答えないで悶えていた。答えてほしい。
「江ノ島くん、これやばいよ」
いや、なにがやばいのかを教えてくださいよ。
「これ、食べないのもったいないよ」
味を教えてほしい。
甘辛い味の肉の味が濃くて、それをチャーハンと一緒に食べると、ものすごくおいしい。そして、この玉子もふわふわで一緒に食べると味が少しまろやかになって、計算されているチャーハンらしい。
そして、月餅さんのチャーハンもやってきた。これも訴えかけてくるな。空腹の胃に。
あまりにもおいしそう。何か食べないと「わー!チャーハン!!」と言いながら走ってお店から出てしまいそうだ。しかし、夜に炭水化物を食べていいものか。健康によさそうなメニューを食べよう。
やさしさの中にしっかりとした味があり、かなり満足感があるスープ。満足感はあるが、チャーハンを食べたい気持ちが抑えてきれない。でも、耐えるんだ。今週ある健康診断のために。
あまりにもつらそうな顔をしていたのか、安藤さんが「健康診断って普段の自分を診断してもらうものだからさ、もう食べてもいいと思うよ。まだ数日先なんでしょ?」と言ってくれた。
「でも、自分との戦いなんで」と答えると、「気持ち強いな」と言って餃子を食べはじめていた。あと一声あったら食べていたので、もっと力強く説得してほしかった。
ここにあのおいしそうなチャーハンがあったのかと思うと、お腹は減ってくるし、お皿をなめてしまいそう。そのときはなぐってでも止めてくれ。
「江ノ島くん、そんなチャーハン我慢した状態でこんなにおいしいチャーハン食べたら死ぬと思うよ。うま死。」と安藤さんが言う。
だから、こう言ってやったのさ。
「おれ、ここで死ねるなら本望です」と。そう言ってお店を出た。
健康診断が終わった後にもう一度来よう。そのときは同じメンバーで集まろうと約束して帰った。そして、数日後、健康診断が終わった。
終わった当日、同じメンバーで萬龍へと行き、チャーハンを食べる。前回の分まで食べるぞ。
魚や豆腐など肉を控えた食生活を中心に運動をしてください。と言われた。数値的には「明日死にます!」と言われなかったので、大丈夫だ。
だから今日は、今日だけは炒飯を食べさせてください。
今、目の前にあの日食べられなかった炒飯がある。あのときどれだけ我慢をしていたか。そして、翌日食べたい気持ちがあふれ出て、肉玉炒飯の写真を何度見たことか。
豚肉に甘辛いタレがしみ込んだ炒飯のうまさったらない。あまりにおいしくて「うまい」しか言えない。
体中においしいがかけめぐって、幸せが私を包み込んでいる。このまま天使が舞い降りて、そのまま天空へと行ってしまうそうだ。死なないで。
我慢をしたかいがあった。ちょっとうますぎるな。シュウマイも肉がふわふわして単品で頼みたい。このあとレバー揚げも頼んで最高の気分になった。レバーもおいしい。このお店、全部おいしいな。
いい終わりである。これでみんなもご飯を食べて帰ろうと思っていた。きれいに終わってよかったと思った瞬間、炒飯が牙をむいてきた。炒飯って牙があるんだ。
牙をむいたのは月餅さんが頼んだ『肉王炒飯』である。先日、来た時に売り切れだったらしく、興味本位で頼んだそうだ。
テーブルに運ばれてきたとき、安藤さんが「これ、なんですか?うちらのテーブルのやつですか?」と言うぐらい全員が戸惑った。
やってきた炒飯を見て「こんなに食べきれないかも…」と月餅さんが言う。いや、こんなの食べきれる人、普通にいないだろう。
自分も炒飯を大盛りにして、餃子とレバー揚げを食べてしまっている。空腹のときだったら食べられたが、もうお腹9分目だ。今、全員の中に絶望感が漂っている。月餅さんも肩を落として食べているようだ。
そんな人を放っておけないだろう。今、チャーハン部の団結力と胃袋が試されるときがきた。
申し訳ない気持ちからか、何度もおかわりする月餅さん、もうお腹いっぱいなのに食べる安藤さん、レバー揚げを頼まなければ全然食べられたなと思っている部長。
それぞれの思いがチャーハンを食べさせる。
一人、また一人と力尽きていく中でなんとか食べようとする筆者。健康診断終わりの開放感が彼を強くさせ、また「残したら悪いし…」の気持ちが炒飯を口へと運ぶ原動力となる。
でも、限界がある。あと部長、節制をしていたせいか胃袋が小さくなったかもしれない。もう腹11分目。
チャーハンと言えば、スープである。スープでサラサラと流し込むのだ。安藤さんは「絶対に余計だと思う」と言っていたが、見ててくれ。
そういえば、先日来た時に頼んだ野菜スープもでかかった。忘れていたよね。でも、頼んだものはしょうがない。食べるぞ!!
あれかもしれない。スープ、いらなかったかもしれない。スープが多い。
チャーハンだけでも大変だったのに、(自分で頼んだ)スープもやってきて、鬼が金棒を持ってきている。その金棒、置いてきなよ。危ないから。持ってきてと頼んだのは自分だけど。
安藤さんがライターの伊藤さんへ買ったレコードである。「〇〇の女」というタイトルを集めており、今日、ここに来るときにたまたま見かけたので買ったらしい。北島三郎、若いのに迫力がある。平面の写真なのに飛び出して見えるな。3D写真?
気合を入れて、口へとチャーハンをかきこみ、スープも飲んだ。やりきったぞ、おれは!!
メンバーからは「さすが部長!」と称賛の声があがる。
だからおれはこう言ってやったのさ「おれはチャーハンなら無限に食べられる男だぜ」ってね。
(本当は「みんなメニューで疑問があるときは必ず店員に質問しましょう。こういう事態にならないように」と言った。チャーハン部の教訓ができた瞬間だった。)
次の日、全然お腹が空かず、夜まで何も食べなかった。これは戦いの記録である。
健康診断で体重が減った分を今日で戻したと思う。でも、おいしい炒飯を食べられたので満足です。
![]() |
||
▽デイリーポータルZトップへ | ||
![]() |
||
![]() |
▲デイリーポータルZトップへ | ![]() |