フライパンでささっと材料を炒めて、水とペーストタイプのルウを合わせるだけ。短時間でできて、野菜のシャキシャキとした食感やおいしさを楽しんでいただける、新しいタイプのカレーです。
「ルウ」「レトルト」「レシピ」3つの分野の担当者が答えてくれることに
「カレーについて、いろいろ聞きたいです」とインタビューのお願いをし、かえってきた回答をみて、ささやかにびっくりしたのが、「ルウの担当、レトルトの担当、レシピの担当がそれぞれいるので、別々に回答させてください」ということだった。
大きな会社の大きさを改めて感じ入る。というわけで、各担当のみなさん、ここぞとばかりに色々聞かせてください!
やっぱり種類が増えていた
ところでみなさんは、ハウス食品から出ているルウが何種類あるか、ご存知だろうか。
なんと20ブランド(アイテム数は計52)もあるという。思っていた以上に多い。
着々と増えている気がしていたのも、気のせいではなかった。新種が誕生していたのだ。まずはこちら。
これまでは、世帯や年代ごとのニーズに対応できるよう、製品開発を進めていました。しかし、今は同じ世帯や年代であっても、お客様の生活スタイルは同じではなく、ニーズは細分化しています。
そのため、多様化するお客様の生活スタイルや嗜好性を踏まえながらさまざまな調理型カレーを開発しています。
パッケージ裏を見ると「たくさん作って冷凍しておくと、忙しい日の食事のお助けに。」と書いてある。
さらに、である。
ロングセラー商品である「バーモントカレー」や「ジャワカレー」にも、ニューカマーが続々登場しており、50%カロリーオフ、食物アレルギー対応製品、減塩タイプの商品などがある。
あらゆる人に食べてもらおうという執念を感じる。そして、その執念はルウという概念を飛び出して「粉」をも誕生させていた。
この製品は、新領域開発部という部署で開発した「味付カレーパウダー(バーモントカレー味・ジャワカレー味)」です。
子育て共働き世帯の食卓の実態を調査した際、土日にある程度まとめ買いをして1週間の食事作りをすると、週半ば以降、余った肉や野菜を使った炒め物などのような、名前のつけられない「名も無きメニュー」が多く作られていることがわかりまして。「そういった料理を作る際に、カレーのパウダーがあったら便利なのでは?」と考えました。
主力選手のバーモントはもうすぐ還暦
そんなハウス食品の主力選手といえば、りんごとはちみつでおなじみの「バーモントカレー」であろう。バーモントカレーの誕生は1963(昭和38)年。もうすぐ還暦を迎える。
バーモントカレーが生まれるまえ、1960年ごろ、徐々に家でカレーが作られるようになっていたものの、子どもたちが気軽に食べられるような「辛くない」商品はまだなかった。
当時、世の中のカレー製品は「辛いもの」だという常識がありました。しかし、お子様のいるご家族は多い。お子様でも食べられるカレーは、今後市場として拡大するチャンスがあるのではと考えたのがきっかけです。
実際にご家庭で子どもたちにどうカレーを食べさせているのかを、お得意先や社内の人間など、いろいろ確認をしたと聞いています。
そこで出てきたのが「辛さを抑えるために、甘いものを入れている」という話。
「バーモント」の名前の由来は、アメリカのバーモント州に伝わるりんご酢とはちみつによる健康法だ。
バーモントの「反対側」として登場したジャワカレー
バーモントカレーは、発売とともに大ヒットを記録し、狙いどおり、子どもたちの心をつかんだ。そんななか、次に作ろうと考えたのがバーモントの「反対側」という。
ジャワカレーは、バーモント誕生の5年後、1968(昭和43)年に販売がスタート。
降り注ぐ太陽の下で、めちゃめちゃ汗かきながら食べることを、ブランドのイメージとして打ち出している。なお辛さが売りのジャワには現在、辛口のさらに先、辛味がぶっとんじゃったやつもある。
辛さを存分に楽しんでいただくために、まろやかさや、煮込みすぎるとでんぷんがでてしまう具材を避けて記載しています。とはいえ、じゃがいもを入れていただいても問題ございません。少し、辛さの感じ方が弱まる…というところはあるかもしれませんが。
そもそも、カレーってどんな具材でもいいというのが、大前提にあります。
ルウが一般化したことで誕生した新たなルウ
ところで、家庭でのルウカレー作りが一般的になるとともに、話題にのぼりはじめた調理法がある。
「いろいろなルウを混ぜて作ると、”こく”と”まろやかさ”がUPする」というものだ。その口コミの広がりは、1996年、新たなルウを誕生させることとなった。
辛さはどう作られているのか
さて。そんな経緯を経て作られたルウカレーには、辛さが「甘口」「中辛」「辛口」と3段階ある。
ここで素朴な疑問。辛さって一体どうやって作られているのだろう?
この話に大きく関わってくるのが、ルウの各パッケージに記載されている「辛味順位」。
これは「食べた時に感じられる辛さ」を示す数値である。単純に辛味(カプサイシン)の量だけをベースにしているのではなく「一皿実際に食べてみて、感じられる辛さ」なのだという。
たとえば、辛味順位3番なら3番なりの「食後の口の中での感じ方」がありまして。それを作り上げるのは、とうがらし量を増減するだけでは、非常に難しいんです。
ソースの一体感やスパイスのバランス。カレーを食べ始めてから、食べ終わるまでに感じる、味覚のカーブの山の立ち方などを考えます。そうすると、中辛にしか入れない原料が出てきたりします。
「食べている時の感じ方」で辛味順位を決めているため、生身の人間による評価も行われているという。具体的には、社内にいる味覚のプロたちが実食し、食べたうえで評点をしている(それだけで全てを決めているのではないが)。
歴史を経て、変化させたものとそうでないもの
ところでもうひとつ興味深い数字があった。ジャワカレーのお皿の数である。
なぜ中途半端かといえば、ルウは基本、2つに割れる仕組みだからだ。2つに割れるようになったのは2000年のこと。時代とともに家族のかたちが変わってきたことに影響を受けている。
単身世帯や核家族世帯では、一箱を一気に使いきれないことも多いのだ。
ジャワカレーの「9皿」は、2つに分けた際、割り切れないので「4〜5皿」ずつになる。「だったら、皿数を8とか10に変えればよかったのでは?」と思う人もいるかもしれない。だが、あえてしなかったのだという。
実際に、調理工程を見させていただく機会があるんですが、みなさん作り方が実にさまざまでいらっしゃいます。もし我々が皿数を変更した場合、「いつもより濃くなってしまった」「薄くなってしまった」というように、お客様を困らせてしまう可能性があります。
そのため、皿数というのはすごく大事であり、簡単には変えられません。
原料の変更などにより、グラム数が変更になったりはしている。でも、グラム数が減っても「一箱でできる皿数」は変わらないようにしているという。
とはいえ変えていることもある
とはいえ、味や見た目はちょっとずつ変わっているという。我々消費者が、違和感を感じないよう、細かくチェックしつつ。そのなかでも一番変わったものは何かというと……
バーモントカレーをご愛顧いただいているお客様に、違和感はないか、食べ続けていただけるかどうかを何度も確認させていただきながら、丁寧に改良を進めているので、変化に気がついている方は多くないと思います。
少しずつ少しずつ変化して、結果的に、昔と比べて変わったという感じです。
とはいえ、すごく久しぶりに食べて「色が変わった!」と気がつく人もいるんだとか。それはそれですごい。
レトルトの種類もすごい
さて、次はレトルトである。今や店に行くと「本棚ができているぞ……!」状態なこともあるレトルトカレー売り場。種類の多さに目を見張るばかりなんだが、そんななか、ハウスのレトルトカレーも実はめちゃくちゃ種類が豊富なのだ。
わたしはホームページをみた時に爆発しそうになった。
全25ブランド、アイテム数は計63。ハウス食品のレトルトカレーで一番の売れ筋「咖喱屋カレー」だけですでに12種類もあるという。
お客様のニーズに応えていこうとしたら、種類がどんどん増えていった、というのが正直なところかもしれません。
カレーと一口にいってもさまざまです。大まかにいうとまず辛さが、甘辛・中辛・辛口とある。欧風カレーなのか、インド風カレーなのかというような、味の違いもあります。そして具材。量目。値段についても、安く抑えたいという人もいれば、高くても美味しい方が良いという人もいます。あと、形態も。箱に入ったものが主流ですけど、最近では、4パック入りなど、袋に複数入っているものもありますし……
朝専用のカレーもある
たとえばこのような商品もある。
通常動物油脂を使うところを、常温でも固まりにくい植物油脂に変え、スパイス感も抑えています。朝は、どうしても香りを強く感じやすいですし、においがつくのを嫌と感じる人もいるので、おさえめにしています。
宇宙のカレー
さらにである。宇宙向けのカレーも作られている。スーパーには売っておらず、通信販売もしくは博物館で手に入れられるカレーである。
いえ。これは宇宙に限った話ではないんです。電子レンジで加熱できる具材とそうでない具材があるんですよ。パッケージから出して、ラップをして加熱しても、破裂する食材ってありまして。たとえばマッシュルームやじゃがいもは特別な加工をしないと破裂しやすいです。
カレーマルシェも、以前は電子レンジNGだったんですが、2015年から破裂しない仕様になりました。
レトルトの立ち位置が変わりつつある
そんなレトルトカレー、近年変化がおきているそうだ。
たとえば2015年。名前からすでに高級感雰囲気ただようレトルトカレーが誕生している。
料理人の監修が入ることも少なくない。たとえば「スープカレー」も、人気店「札幌らっきょ」が監修している。
一方、具が一切入っていないレトルトカレーもある。
今後も、増えそうだぞ
……とカレーが随分とたくさん種類があるぞというのはよくわかったのだが、今後はどうなっていくんだろう。
何度か新しい形にチャレンジしてはいるんですが、「ルウでカレーを作るものだ」という認識は非常に強いものであられますし、私どもも、ルウで作るカレーがジャパニーズカレーの王道であると思っているところもあります。
カレーの価値を拡げるチャレンジを続けながら、王道のカレーをさらに追及していく。「進化」と「深化」。この両輪でカレーの魅力を、今後もご家庭に届け続けていきたいと思っています。
なんと力強いことか。
やばいぞこれは。カレーの未来がますます楽しみになってしまった。
公式ページのレシピもすごいことになっている
ところで。本文に入れきれなかったのだが、ここで公式ホームページのカレーレシピについても触れておきたい。ぜひ一度見てほしい。気合がすごいのだ。
スパイスで作るレシピものっている。ルウとスパイス、両方を使って作るレシピもだ。
「スパイスを使用したカレーも、気軽にスパイスを使いこなしていただければと思い、掲載しています。カレーを作る上で大事な要素は「香り」と「辛味」と「色」。当社のレシピでは「クミン(主に香り)」「レッドペパー(唐辛子・主に辛味)」「ターメリック(ウコン・主に色づけ)」の3種類のスパイスからカレーが作れるようにしています」(レシピ担当者)
おすすめを聞いてみたところ「今年のイチオシはリメイクカレー」だそうだ。
網羅性おそるべし。あらためて。カレー愛好者の一人として、ずいぶんと恵まれた状況に生まれ落ちているんだなぁときゃあきゃあせざるをえないだろう。
問題は、わたしには胃袋がひとつしかないこと。これに尽きるんじゃないだろうか。