家に帰ってこの日のことを子供に話したら「良いな~!」と羨ましがられたので、後日やってあげた。
何故やるか?
しかし当然、「何故そんなことをやる必要があるのか?」という疑問が湧く。「わんこそばを食べたことがないので、代替案として」「最近太ってきたので、小分けにすればカップヌードル1個だけで満腹感を味わえるはず」。もっともらしいが、どれも本音ではない。
しかし1つだけ確かなことがある。もし明日地球が滅亡するとしても、「何ひとつやり残したことなかったね!」と言い合える人類でありたいと私は思うのだ。ならば、カップヌードルをわんこそば形式で食べたことはまだないから、やってみる。それで良いじゃないか。
林編集長に相談すると、「やりましょう」の一言。さすが、人類のやり残しを20年以上塗りつぶしてきたスペシャリスト。理解が早い。
最善のオペレーション
本番当日。事前に入念なイメージトレーニングを積み重ねて臨んだので、準備はスムーズに済んだ。挑戦してみたい方は、以下の手順を参考にして欲しい。
①カップヌードルにお湯を注ぐ
②3分経ったら麺だけボールに移す
③麺を試食や試飲用の小さいプラカップに入れていく
④スープと具を注いでいく
⑤準備完了!
開始早々、大きな壁(葱)が立ちはだかる
それでは早速、やってみよう。
開始直後、1杯目で早くも気付いた。カップヌードル特有のちぢれ麺が、すんなりと入っていかないのだ。これは「カパッ!」と喉を大きく開けなきゃ苦戦するぞ。しかしその気付きが、早々に悲劇を呼び込んだ。
普通に飯を食べてるだけでもむせてしまう、40過ぎの私がやるような挑戦じゃなかった。やばい。吐き出しそう。
だが年を重ねるのは悪いことばかりじゃない。困難な状況に陥っても、落ち着いて対処法を考えられる冷静さだって身についてる。そうだ!
これ、本当にノーマルサイズ?
だが、喉に貼りついた葱は剥がれない。給仕役の林さん、撮影してくれてるべつやくさんの前で、吐くわけにはいかない。喉の奥に麺を矢継ぎ早に送り込むことで、むせるのを無理矢理抑え込む。
あと少しで完食だろうか?既にお腹が膨れてきた。
実は今回、2個、あるいはBIGサイズを買おうか迷った。大食いの私にとって普通サイズのカップヌードルなんてオヤツ程度でしかない。わんこそば形式ならばどんどん食べ続けなければならないので、足らなくなっては困る。でも1個にしといて本当に良かった。食べ方を変えるだけで、こんなにきつくなるなんて。
「次は海老入りですよ!」
林さんが「ボーナスタイム到来!」とばかりに励ましてくれるのだが、海老とか謎肉の固まり感が今は全然嬉しくない。正直、もうやめたい。箸を、置いてしまおうか…
突然、走馬灯が
食べるとは、生きること
…いや、食うぞ。私はずっと、何かを一生懸命に食べながら生きてきたんだ。
脳内にロッキーのテーマが流れ、私の目に再び光が灯る。相変わらず喉奥の葱の影に怯えながらも、なんとかペースを掴んだ。
最後の一杯をかっ込んだちょうどその時、キッチンスタジオにUber Eatsの配達員さんが訪ねてきた。林さんが出ていき「我々はここを借りてるだけで、配達とかはお願いしてないんですけど…」と対応している。どうやら配達先を間違えたようだ。
なんか、スッと終了してしまった。帰りの小田急線でちょっと咳き込んだら、あの喉奥の葱が取れた。(やった!)と嬉しくなった直後、(やった!、じゃねーよ)とも思った。