遠くにいる血縁、くらいの感覚
室蘭市と上越市、姉妹都市とはいえ互いの市民生活にそれが浸透しているという実感はなかった。
でもどちらの都市に対してもよそ者である僕から見ると、町に流れる雰囲気にどこか似たところがあるように思えたのも事実だ。
自分の町の姉妹都市にもいつか行ってみたいなと思いました。
「姉妹都市」という関係。
よく聞く言葉だけれど、考えてみるとちょっとおかしい。なんだ姉妹って。そこに住んでいる人たちは「あの都市、姉妹なんだよなー」と感じることとかあるんだろうか。
実際に姉妹都市として交流のある二つの市を訪れ、その姉妹っぷりを探してみました。
※2011年2月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
「姉妹都市」という言葉がある。一般的には都市同市の自然環境が似ていたり、住民同士の交流があったりするのが姉妹都市の条件なのだとか。
僕が生まれた愛知県の大府市というところはオーストラリアに姉妹都市を持っていて、年に何度か物産展みたいなことをやっていた。
でも生活していて「実はいま姉がオーストラリアにいまして」みたいな実感はまったくなかった。オーストラリア側でもたぶん似たようなテンションだったんじゃないか。
今回、たまたま訪れた新潟県上越市と北海道室蘭市が姉妹都市であることを知った。姉妹都市の関係を暴くチャンスである。この二つの都市がどのくらい姉妹なのか、比べてみようと思う。
まずは市役所から見てみよう。
室蘭市役所の4階建てに対し、上越市役所は5階建てだ。
階数だけで見ると上越が姉ということになるかと思う。しかし建物自体の貫禄で判断すると室蘭市役所の方がだんぜん姉っぽい。
歴史をひもとくと、1922年に市制施行した室蘭市に比べ、上越市が誕生したのは1971年である。室蘭が50年も年上なのだ。そんな姉妹いない。むしろ親子、いや孫くらいの年の差ではないか。
そんな年の差姉妹の特産品を見比べる。
臼と酒。どちらもなんとなくめでたい感じがするのも姉妹たる所以であろう。
これは観光局の展示にあったものなのだけれど、室蘭市は臼だけでなく、カレーラーメンや豚肉の焼きとりなんかも有名なわけだが、これら全部でかかっても上越市の酒には勝てないような気もする。
外に出るとどちらも寒い、という共通点は言わずもがなである。
室蘭市と上越市、今回2月の同じ時期に訪れた感想からすると、どちらも信じられないくらい寒かった。
雪の量は圧倒的に上越市の方が多いのだけれど、室蘭のハードでエッジの効いた寒さには北海道の底力を見せつけられた気がする。
室蘭市出身の編集部工藤さんいわく、室蘭は風が強いこともあってそんなに積雪量は多くないのだとか。おおらかに積もる妹上越を尻目に、並外れた低温で雪をも凍らす姉室蘭、という感じか。
商業施設はどうか。
紳士服=マスカットという唐突さにも妹上越市の茶目っ気を感じる。正直なところ、緑色の看板を遠くから見てスーパーだと思ってやってきたらスーツを売っていたのだけれど。
室蘭市の個性は自動販売機にも色濃く発揮されていた。
シトロンは北海道でよく飲まれている炭酸飲料。これについても室蘭出身の工藤さんに聞いたところ、こっちではシトロンよりナポリンである、と言われた。ごめんどっちも知らない。
ここで注目したいのは、室蘭市の自動販売機がほとんど「冷た~い」であることだ。対して上越では半分がホット。姉室蘭のどん欲な寒さ欲がかいま見える。
上越市は僕の妻の実家があるので、義父に室蘭が姉妹都市であることを知っているかどうか聞いてみたところ。
「そういえばそんな話をきいたことがある」
いたって平温の反応だった。まあそうだろう。僕だって実家の町がオーストラリアの都市と姉妹都市だって知ってるか、って聞かれたらたぶん同じような答えしかできない。
日常の中で何かの拍子にふと思い出すことはあっても、常にいっしょにいるわけではないのだ。それが姉妹都市。
この関係性、思わず自分の姉のことを思い出してしまいました。
室蘭市と上越市、姉妹都市とはいえ互いの市民生活にそれが浸透しているという実感はなかった。
でもどちらの都市に対してもよそ者である僕から見ると、町に流れる雰囲気にどこか似たところがあるように思えたのも事実だ。
自分の町の姉妹都市にもいつか行ってみたいなと思いました。
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