15:30-人家もまばら。いよいよ山らしくなってきた
さて、そうこうしているうちにいつの間にか住宅の数は少なくなり、 村山古道はいよいよ登山道という感じになってきた。
道沿いには古い道しるべや野仏が点在し、 また周囲の畑には富士山の火山弾で作られた昔ながらの石垣が見られ、 この道が歴史ある古道だということを教えてくれる。
この辺りの集落は、なんとも独特な風情が漂っていた。
火伏せの神だという、「バンヤ」と呼ばれるワラで編まれた家型の小さな社があったり、 ちょっとグロテスクすぎて写真を載せられないが、 カラスの剥製をぶら下げて、鳥避けにしている畑があったり。
なんだか、この地域で粗相してしまったら、 剥製のカラスと同じ運命をたどりそうな気が…… そんなバカなことをと思いつつも、 日が傾いてきたこともあり、歩く足は妙に早くなっていった。
そうして薄暗い林道を越えると、横沢と呼ばれる集落に出た。
17:00-村山浅間神社に到着
ひとけの無い道をさらに歩くこと十数分、 そうしてたどり着いたのが、かつて富士山信仰の一大拠点であった村山浅間神社である。 標高は約500m。
この村山浅間神社は、田子の浦から富士山山頂までの村山古道において、 ちょうど中間ぐらいの位置にある。つまり、道のりはまだ半分。 日はもうかなり傾いており、夜が訪れるのも時間の問題だ。 今日はこの村山で寝ることにしよう。
……とは言っても、村山に個人で利用できる宿泊施設は何も無い。 しょうがないので、村山浅間神社の外れの草むらにテントを張らせてもらうことにした。
木々に囲まれていて道路からは見えず、かつ人目にも付きにくい。 そんな場所を選んだつもりだったが、テントを張ったその直後、 犬の散歩をしていたおじさんにあっさり見つかってしまった。
慌てて「ここにテント張るのは問題ですかね?」と聞いたところ、 「いや、別にいいんじゃないか?」という返事。 よかった。どうやら追い出されずには済みそうだ。
このおじさんとは少しばかり話をし、 村山古道や村山浅間神社について色々な話を聞かせていただいた。 それらは次のようなものである。
・ 今年は曇りばかりで村山からも富士山があまり見えない。
・ ここから上には家が無く、店もキャンプ場も無い。
・ 村山浅間神社は神社庁に属してしない。
・ 村山集落の人々が管理している珍しい神社だ。
・ 明日、村山浅間神社で閉山式が行われる。
おじさんはひとしきり話をした後、満足そうに去っていった。 私もまたテントにもぐりこみ、夕食を取って酒を飲み、 酔っ払いながら眠りに落ちた。