凄い。いやはや、凄い。想像以上に原生林。
まず、木の根がワシャワシャ生えてる。参拝者は、その根っこや岩にしがみついて、常に四つんばいで登ることとなる。手を使わずに登ることなんてできやしない。
そしてそれがずっと続く。一つ乗り越えても、再び崖のような斜面が目の前に立ちふさがる。
確かにこれはハイキングなどではない。「修行」という言葉がぴったりだ。むしろ、あえて厳しいルートを選んで道を作ったようにすら思える。
これ、ホント、結構やばいよ。場所によってはかなり危険な所もあるし。実際私も何度かひやっとする思いをした。特に高所が苦手な人とかは、やめておいた方が良いと思う。
いやはや、しんどい。既に足の指には血がにじんでいる。ふくらはぎもパンパンだ。ぬかるんだ泥にたびたび足を取られ、その度にアヒルのような声が出てしまう。
ひぃひぃ言いながらしばらく登山を続けていると、突如目の前に巨大な岩と足の長い建物が姿を現した。建物が見えたことで一瞬ここがゴールかとも思ったが、岩にぶら下がる一本の鎖を見て、そうではないことを悟る。
岩に備え付けられた鎖。これの意味するところは、やはり……
岩を登ったその先には、やはりまだ上へと続く道があった。この岩場はクサリ坂と呼ばれる難所だそうで、岩に建つ建物は文殊堂という江戸時代に建てられたお堂とのこと。
この文殊堂も、岩からせり出して宙に浮くように建てられているという点で面白い建築ではあるが、我々の目指す投入堂は残念ながらこれではない。先を急ごう。
さらにもう一度岩場を超え、文殊堂と似た作りの建物である地蔵堂を過ぎ、ようやく私は登山道ゴール近くへとたどり着いた。ここまで来たら、お目当ての投入堂まであと少し。