特集 2020年4月21日

家の調味料お湯で割って全部飲む大作戦

外に出られない今、おれたちがやるべきことは家の調味料をお湯で割ってぜんぶ飲んでいくことだ!

もうずっと家にいる。だがこれをピンチととらえるかチャンスととらえるかは私たち次第だ。

見たことない世界は家にある。そう、今こそ家の調味料をお湯で割ってぜんぶ飲んでいくチャンスだ。マインドを変えろ! お母さんの目をかいくぐって、台所の醤油を飲むんだ!

2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

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家にいてとにかくふだんしないことをするチャンスだ。まず流しでかっこつけよう

ある日光る醤油があった

少し前に大阪の実家からいろいろ食料が送られてきた。その中になぜか醤油があってなんとなくなめてみた。うまい気がした。だがふだん料理をしないのでおいしさに確信がない。

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ある日ひときわ光る醤油がある

 お湯で割って飲めば?

醤油のおいしさを確かめる方法とはなんだろう。そんなことをFacebookに書いてみると調理人の知り合いからは「そのまま煮物で使うと差が出る」という有益なアドバイスをもらった。そして調理人でもなんでもない友人からは「お湯で割って飲めば?」というまちがったアドバイスをもらった。

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すまない、これはライトで照らしていたから光っていたのだ

そんなことをしてもいいのか!?

醤油をお湯で割って飲む!? そんなことをしていいのか! ここで私は許されたような気になった。

家でチャーハンを作るときに油をだくだくにしたところ中華料理屋っぽくなったことがあった。店のだから、という理由で私たちはあれだけの油を食べることを許されてるような気分になってるのだ。

そうだ、今は緊急事態だからしょうがない。お湯で醤油を割ってもしょうがない日々がやってきた。醤油をお湯で割ってくれるお店には行けないのだ。だったら家で醤油をお湯で割って飲んでもいいはずだ!

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醤油をお湯で割って飲む。曲がりくねって言えばこれは外食の味だ!

これが台所アドベンチャーだ

今また醤油をお湯で割って飲んでみる。子供のころならばまちがいなくお母さんに怒られるか嫌がられるかするやつである。大人になった今でもその抵抗感だけがしっかりと残っている。

いけない、私はいけないことをしている…しかし、そこを乗り越えたアドベンチャーの先にあるのはなんとうまいスープだったのだ。なんてこった、和尚さんの水あめだ!

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これが妙にスープとしてうまかった。点数として80点とつけさせてもらう

丸島有機醤油 80点

醤油をお湯で割るとうまい。意外とそのままで飲める。うまみや酸味を感じる。出汁って感じ。出汁入ってないのに。それほどうまみがないところが食通っぽくていい。

お湯が多すぎると水っぽくなるので分量としてはぎりぎりのところがある。そう大っぴらに飲めないので、酒を飲んだあとなど「ラーメンよりはまし」という言い訳を作ってから飲むといいと思われる。

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さあタガは外れた! 妻に黙って今こそ家の調味料を根こそぎ飲んでいくチャンスだ!
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常備されてたふつうの醤油。空気に触れないボトルとして話題になったがキッコーマンのよく見るタイプのやつ
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台所で全部完結するのが重要だと思って流しを簡易的なスタジオにした。これも台所アドベンチャーのひとつだ

ふつうのしょうゆ(キッコーマン) 75点

今度はふつうの醤油も割って飲んでみた。なるほど、これでもうまい。醤油はお湯で割るとうまいのか。でも「豆!」みたいな存在感がちょっと薄いので5点減らして75点。

竹岡式ラーメンという醤油をお湯で割ったようなスープのラーメンを食べたことがあるが、あれも地元の醤油がおいしいから成立してるそうだ。元となる醤油の差はありそうだ。

味でいうなら磯辺餅だ。餅の要素はどこにもないのにそう思う。醤油の味を味わうときってそれくらいしかないのかもしれない。

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さあいよいよ調味料の海へ漕ぎ出していく。ドレッシングはどうだろう
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すっぺえ…

青じそドレッシング 55点

いよいよ醤油から離れて調味料を攻めていく。手始めに青じそドレッシング。すすす、すっぺえ! おまえはこんなに酸っぱかったのか! つい口調が少年マンガみたいになるのは台所を冒険している証だろう。

すっぱいので醤油ほどスープっぽくは飲めない。意外と駄菓子っぽい味というか、わかった、これ酢昆布だ!

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見たことない調味料が家にはあるものだ。

味付けごま香油 ごま油×塩ごけにんにく 50点

家の台所にはよくわからない調味料があるものだ。これはドレッシングなのか、それともたれなのか、割って飲んでみると……はい、ラーメンラーメン! なんで冷蔵庫にラーメンあるんだ! といってもラーメンスープのうすくて油っぽいやつだ。出前一丁を薄めて上澄みだけ飲んでるような感じ

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これラーメンだ、ラーメン
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優勝候補でしょう、ポン酢。これはドン・キホーテのやつ

まろやかぽん酢 70点

ポン酢ファンなのでこれは優勝候補。お湯で割って飲んでみると醤油は超えなかったがやはりそこそこうまい。ドレッシングのようにすっぱいのだが飲める。あ、これダシのせいだ。減塩食でもダシを効かすというし、塩分少なくてもうまみがあるから飲めるんだ。調味料を飲みまくると減塩についての理解が深まってしまった。

でも総括するとやっぱり鍋感。鍋のエッセンスがここにある。日常的に飲むかというと微妙なところだ。ちょっと鍋のつゆ飲むか、と毎日はならない。

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めんつゆ、これは大本命かと思いきや…なんだこの甘さは!

めんつゆ 60点

お湯で割ってうまい調味料? めんつゆなんてあれうどんだしそのままできるんじゃないの? と思ってお湯でわると甘い! こんなに甘かったっけ!? うまい、けど甘い。こんな甘くていいのかな。ケーキかな。いや、ケーキではないかな。あれだ、釜揚げうどんでうすまったつゆだ!

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実はふだんから飲んでいるものがあった。味噌のお湯割りである

秋田みそ 90点

実は調味料をお湯でわったものを日常的に飲んでいる。味噌のお湯割りだ。ご飯前に腹がすいてどうしようもないときや、冬の寒いときに飲んでいる。

改めて飲むとうまい。「だしなんかひかんでええんです」と土井先生が言ってくる。台所の冒険では肩に小さめの土井善晴先生を乗せてパートナーにする、そんな気分で進めている。

ここに関しては冗談でなくまじのやつだ。この調味料お湯割り分野でただ一人いた先人なのだ。これを大将に据えなくてどうする。

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比較すると秋田味噌の方が味噌の味が強い。味噌にも差がある

糀みそ 75点

悪くない、んだけど味噌っぽさが少なくて甘い。味噌汁ではあるけどちょっと甘い。糀と書いてあるから甘酒的な甘みだろうか?

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これはほぼおすまし。だが少し何か物足りないものを感じる

白だし 65点

これがなんだかわからないが卵焼きを作るときに入れるやつ、白だし。薄めるとおすましになるはず。もちろん大本命。

しかし飲んでみるとちょっと塩気が強い。出汁のうまみはあるのだがそれでもなんか飲み物として物足りない。意外だ。おすましであるはずなのに、なぜだ。うまいんだけど、うまいんだけどなにかが、、、アドベンチャーに出たはずが、私は今、わがままな子猫ちゃんでいる。

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みりんを割って飲むとただのうまい酒だ

本みりん 80点

これは番外編。冒険の途中の泉ともいえるが実態はもろに酒である。お米のホットカクテルだ。甘みは麦芽糖や甘酒みたいな甘さ。酒屋がロックダウンしたら2秒後に本みりんをおれは飲む。

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初の粉末、味の素。うちのお父さん家で味の素飲んでるねん。こんな事態になったらどうしようか

 味の素 45点

味の素を溶いたお湯。うむ。飲めた。思ったよりスープだった。塩分もうまみもそこそこのとこまでくる。しかし舌が根本の方から先の方まで全体的にバビビビビと山椒食べたときくらい変化する。そして今までで一番水の匂いが目立つ。無臭なんだろう。それにしても先鋭的な粉だ、さすが化学。

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うわー、味の素だけ飲んでみるとビリビリきてめちゃくちゃ不思議な汁だ。
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ソース。昔、デパートの食堂ではごはんにかけていいとあったそうだがお湯で割って飲んだら怒られたかな

中濃ソース 65点

おお、思ったよりスープだ。あと辛い。唐辛子的な辛さ。ソースって辛いのか。ふむふむ、ソースは辛い、と。それにしてもなんて頭の悪い探検家だ。トータルでいうとほどほどの甘さに酸味があってうまい。

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さあ未知の領域、酢である。ためしにまだ味がありそうなすし酢

 すし酢 60点

すし酢。意外と検討。すっぱいけど甘さもあったりなんか酢なりにできることやってきましたよという背伸び感があって悪くない。いや、これはえらそう。酢に対して上から目線をとってしまった。しかし酢くらいは…ああ!

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穀物酢とかはむりだろうけど、黒酢って「飲む」って書いてあったりするしな…

黒酢 30点

すっぺえ。黒酢ドリンクとかあるから多少飲めるかと思ったが文句なくすっぺえ。冒険譚にロマンス入ってきたのだが初恋から恋抜いた感じ。そうするとただの初、ただの初心者。酢ははずそう、塩っけもないし…。

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顔ゆがむくらいすっぺえ。後ろには「きれいを保とう」という娘の標語が書いてある。もちろん大ちらかりっぱなしだ
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油方面どうなのかなと思って家にあったもので一番イメージのよかった高そうなオリーブオイルにした

 オリーブオイル 10点

はい。もう油はやらなくていい。そもそも分離している。体には良いだろう。薬として。

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豆板醤、意外とスープっぽさあったが、か、かーらい!!

豆板醤 40点

辛いスープだった。味噌汁のようなうまさもあるけど、か、かーらい。日本人の舌を超える辛さ。四川省の土井善晴先生なら「これでええんです」と言ったろうか…

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ときには負けるとわかっていても戦わないといけないときがある。それが調味料お湯アドベンチャーだ

 マヨネーズ 20点

温かく薄いマヨネーズ。お母さんに「だからやめときって言ったやろ」と言われてるような記憶が今よみがえった。塩分をそれなりにとろうとするとかなり原液に近くなる、これはただのマヨラーだ。

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オイスターソース。旨味を加えたいときに使うらしいからいけそうだが…

 オイスターソース 70

冒険は海へと。うまい。これはうまいぞ。塩分濃度がちょうどいい。うまみがある。うまみのある汁が出来上がった。しかし磯臭さが個人的にちょっと苦手。これが牡蠣の味か。海育ちの方、積極的に飲んでいこう。

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付き合った人のお家に初めて行ったとき、焼き肉のたれをお湯で割ったものを出されたらどう思うだろう。そこを乗り越えるのが愛というものではないか

 焼肉のたれ 60点

炒めものにも使えたり意外と調味料界隈で存在感のある焼肉のたれだが……甘めえ! なにこれこんなに甘いの!?そして過剰な旨味がラーメンっぽくも感じる。なんだ、わかった、これはたれだ! そのままだ! だけど、たれ湯だこれ! なんかもう全然わからなくなってきた、疲れるんだよ、調味料飲むの!

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よくわからない調味料を飲むのが調味料お湯アドベンチャーの醍醐味である。これは比内地鶏とりガラスープらしい。ド直球だ

とりガラスープ 70

家にあったとりガラスープのもと。あー、うーめー。うまみがのび~~~る。うまみがずーっと口の中をたゆたう。ピリピリする化学調味料も入ってるようだ。でもふだんはこれに醤油や塩で味を整えたものを飲んでる気がする。何か物足りない

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ウスターソースは中濃と比べて辛味がなくていいんだけどすーっぱい! 55点
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秋田の義母からいろいろなものが送られてくるので全体的に秋田調味料が多かったんですが、これは横綱、しょっつる。ハタハタと塩だけで作られた魚醤です

 しょっつる 85点

魚くさいし調味料として苦手だったのだがお湯でわるとこれがすごかった。魚のスープだ。くさみがちょうどよく、うまみも突き抜けてるし塩分も適正範囲内。これはうまいな。しょっつるは薄めて飲んでいい

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そしてキングオブ調味料といえば納豆のたれ。めんつゆはダメだったがはたして…!?

納豆のたれ 75点

あ、これもめんつゆみたいに甘いんだけどうまいな。めんつゆより飲みやすい。しょうゆより出汁感もある。これはかなりうまいな。まいったな、おれ納豆のタレ今後「飲む」っていう選択肢が入ってくるのか

そして調味料お湯割り甲子園に移行する

我が家のキングオブお湯割り調味料は秋田みそ。ほぼ同点としてしょっつる。だがこれはすべて台所内での冒険である。そして家庭の数だけ台所がある。

この日、仕事のついでに知り合いの渕上さん家にお邪魔することになった。ついでにお湯で割っておいしいだろうなと思う調味料を縁側に出してくれないかとお願いした。

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魚醤しこの露、魚醤しょっつる、そして硫黄臭のする塩、ブラックソルトだそうだ。家の数だけ調味料がある…!! 魚醤が高得点なのをよくわかってるな。
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マグマの高熱で作られた塩だそうだが
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くさい塩だ! これはおいしいというものでもない。家の数だけ調味料があるな…
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「友達が米で作った醤油もあったわ」と出してくれた。この人ももう調味料お湯アドベンチャーに乗り出しているのである。米の醤油はうまかった。85点くらいあげたい。その後息子さんがマネしたようだ。申し訳ない。

調味料を飲みまくるとめちゃくちゃ疲れます

なぜか疲労感があった。家で調味料を飲みまくったあと、ぐったりして小一時間寝た。塩分を摂りすぎると腎臓にダメージがあるそうだがもっと精神的なぐったりさを感じる。

それはいけないことをしている疲労感なのではないか。あそこは重力が1.5倍くらいになっていたのではないか。外出を自粛する今、家の中でできるアドベンチャーはまだある。小宇宙は内に広がっているの。きっと私たちは洗濯機を風呂にして肩まで浸かったあたりで思うはずだ。「早く居酒屋に行きたいな」と。

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