特集 2023年3月1日

ラピュタ化してない。リアル明治な横須賀・千代ヶ崎砲台跡

見学のハイライト、生々しい弾薬庫から砲座跡へ

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ガイドツアーの後半は、実際に大砲が置かれていた砲座跡へ

暗く細い交通路を抜けると、まず弾薬庫につく。ひんやりとした内部。一気に雰囲気が変わる。

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28㎝榴弾という巨大な砲弾が置かれていた弾薬庫
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ここから上に運びあげていたんだな~
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引火防止のため、弾薬庫の外に小窓をあけてガラス越しにランプが置かれている

これだけそのまま残っていると、弾薬を取り扱う日本兵の緊張感みたいなものまで漂ってくる気がする。胃がキリキリしそう…

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階段を上ると、ついに砲座だ
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弾薬庫からの穴。217kgあるという砲弾を揚げるのだ。超緊張しそう…!
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砲座は3つあり、それぞれ見渡せるつくりになっている
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階段を上ると急に視界がひらける

暗い道を通ってきた分、開放感がすごい。清々しさすら感じてしまう。

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ここに2機の28cm榴弾砲が置かれていた
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休憩所にあったミニチュア
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空が青い…けど海は見えない

ここから遠く、海の上の戦艦を狙うのだ。最大射程距離は7.8km。

全然見えないじゃん…と思うも、実はこの上に観測所があり、そこで距離や方角を計算して砲座に伝えるそうだ。

当時はまだ飛行機がない時代。

敵船から見えないように砲座を隠しながら、狙い打つという戦略だった。

ただし命中率はあまり高くなく、幸運にもこの砲台が実戦に使われることもなかったそうだ。

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この細長い伝声管を使って連絡を取り合うそうだ。気持ちいいほどアナログ…!
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ガイドツアーのあとは、砲座を上からみることができる
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通ってきた塁道も顔をのぞかせている
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牧歌的ともいえる広々とした空間が広がる

実は見学した第一砲座以外の第二・第三砲座はつい最近まで埋められており、上部は自衛隊のテニスコートになっていたそうだ。

だからこんなに芝生がきれいなんだな。

他にも観測所が撤去されていたり、土塁が改変されていたりと、すべてがそのまま残っているわけではないようだ。

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遠くに防衛大学校の時計台がみえる
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反対側には東京湾、そして房総半島がみえる。向こう側にも多くの砲台が築かれた

実戦には使われることのなかった千代ヶ崎砲台。

その竣工以前、この山の上には平根山台場という江戸時代の砲台があったそうだ。

1811年に作られたという平根山台場は、実は日本史の暗記項目のひとつ、モリソン号事件の現場なのだ。

日本人漂流民を乗せたアメリカ船モリソン号を、1837年に幕府が異国船打払令によって砲撃した事件。その砲撃が行われたのがこの山の上だそう。

言葉の響きだけで覚えていた単語がふとした瞬間に実体験に結びついて、ゾクゾクっと身震いした。


ラピュタ感から得られるものもあるけれど

古い建物が緑に覆われるとなんだかイイ感じに見えてしまうものだ。

一方、千代ヶ崎砲台はリアルだからこそさまざまな感情を掻き立てられて面白かった。

ここを見た後なら、他の砲台跡もよりリアルに想像できるかもしれない。

楽しみがまた増えた。

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時代は変わって現代、千代ヶ崎の下の砂浜ではおそらく米兵の家族だろう、白人の親子が海水浴をしていた

 

 
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