はじめに
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ライターの地元のうまいものを紹介してもらいます。今回は地主恵亮さんから、地元のイチ推しの食べ物の紹介です。
地主恵亮
マンションの一階で作ったビールがスッパうまい!
東京都狛江市
秋の風が吹いた。温度計を見ると夏と変わりない数字を表示しているけれど、太陽に夏のような力はなく、風は秋の匂いを伴っている。秋の虫も鳴いている。夏は終わったのだ。秋が来たのだ。
僕が住む東京都狛江市はとても小さい。どれくらい小さいかと言えば市としては日本で二番目に小さい。よく言えばコンパクトで大抵の場所は歩いて行くことができる。平坦だから自転車だって走りやすいと思うけれど、僕は歩いている。
狛江駅から10分ほど歩いたところに「和泉ブルワリー」というクラフトビールの醸造所がある。マンションの一階にあって、外からでも窓越しにタンクが見える。
夏の日のビールは美味しい。熱を持った体に冷たいビールを流し込む。実に幸せなことだ。ただ秋だってビールは美味しい。もっと言えば、春も美味しいし、冬も美味しい。ビールに時期はなく年中美味しいのだ。秋のビールはこれから寒くなる世界へ体を慣らしてくれるような心地よい冷たさを教えてくれる。
和泉ブルワリーの扉を開ける。カウンターがあって、奥にはタンクが見える。大きな黒板がレジの上にあり、そこには10ほどのビールの名前が書いてある。すべてここで作られたビールだ。スタンダードは「3A Farm house Ale」。飲んでみると柔らかな味わいでありながらキレがある。
正直な話をすればどれも美味しい。たとえば9番の「Slam Dong」は黒いビールで、アルコール度数は10%を超える。なかなか市販のビールでは見ることのできない逸品だ。ほどよい酸味があり、アルコール度数は高いけれどむしろ感じない。体に馴染んでいく。誰かが狛江のストロングゼロとは言っていたけど。
初めてこのお店に行くとすれば僕は4番のビールも飲んで欲しいと思う。「come back」と名付けられたビールだ。このビールの最大の特徴は酸味だ。レモンサワーよりすっぱいですよ、と言われた。クラフトビールには酸味があるものも多い。先の黒いビールもそうだ。ただこの「come back」はそんな酸味どころではないのだ。レモンサワーよりすっぱいのだから。
飲んでみると確かに酸っぱいけれど、その酸味は心地よい。ビールの持つ美味しさをそのままに酸味が付加されている。夏の疲れが酸味に溶けていき、寒くなるこれからの季節へ旅立つための気前のいいチップのようなものが含まれている気がする。
日によってラインナップは変わるけれど、この日は黒板にないビールまであった。もちろん全て味は異なる。クラフトビールが好きな私としてはとてもいいお店だ。お店の雰囲気もよい。入りやすいし、出やすい。何よりビールが美味しいのだ。僕の家からも近い。狛江は小さいからどこだって近いのだけれど。
東京都狛江市和泉本町1-12-1 豊栄狛江マンション101
終わって解説です
レモンサワーよりすっぱいと言われた「come back」は、一度飲んでみたいです。マンションの一階に急にクラフトビールの醸造所があるというところも、みどころです。
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