小さすぎる公園というものがある
以前に住んでいた家の近所であまりにも小さすぎる公園を見つけて以来、「小さすぎる公園」を探し歩いている。当サイトで過去2回記事にしているのでぜひ読んでほしい。
今回は特にエリアを決めず、ここ最近に見つけた公園をめぐった。前回の記事で、最後に訪れた豊島区のところで「訪れるべき小さすぎる公園はただ1つ」と書いたのだが、それは大きな間違いだった。
豊島区/東池袋の辻広場/日光広場
池袋から地下鉄有楽町線に乗り、ひとつ隣の東池袋駅で降りた。この駅の東側は、池袋サンシャインシティのすぐ外側ながら狭い路地と密集した家が立ち並ぶ、下町風情が色濃く残る地域である。
地域である、なんて知った風に書いたけど行って初めて知った。
このエリアには「辻広場」なる小さな公園が点在していて、その中に目を見張るほど小さな公園があるらしい。
最初に向かったのは「日光広場」。きっと陽光がぽかぽか当たる爽やかな公園なのだろう、と想像しながら路地を進む。
ここはストリートビューでも見られなかったので、最初は視界に入っても公園と気づかなかった。ふと看板に「日光広場」という文字を見つけた瞬間、意図せず「フフッ」と笑いが漏れてしまった。それほどインパクトのある小ささ。
これは間違いなく、過去2本の記事に出てきたいちばん小さい公園と肩を並べる存在だ!
日光広場の「日光」は有名な観光地名の日光だった。この小さすぎる公園は全体が日光国立公園をテーマにして作られているという。なぜ!
しかし、下町の小さな町工場で作られた微妙に似ていないネズミのキャラクター商品、というような物悲しさはそこにはなく、これはこれで良いのではないか...と妙に納得させられるポップさがある。
とにかくこの小さなスペースに、どこからそんなに持ってきたのか、と驚くほどのこだわりと熱意が詰まっている。看板によると、窪み部分のタイルは住民が工事に参加して造ったという。赤いタイルはもしかして中禅寺湖に映る紅葉の男体山だろうか。三猿ベンチの茶色い足はもしかして猿の足かも知れない。こんなに小さいのに情報が多すぎて謎が謎を呼ぶ。
しかし、日光観光のハイライトとも言える華厳の滝をモチーフにした噴水らしきものは朽ち果てていた。
のっけから今回のベストでは、という小さすぎる公園を見てしまい、もういいか、という考えも頭をよぎったけれど、この近くにはほかにも辻広場がいくつかあるので行ってみた。
豊島区/東池袋の辻広場/日傘広場
日光広場から歩いて2分。細い路地の角にある空き地に大きな傘が建っていた。ここが東池袋の辻広場のひとつ、「日傘広場」だ。
日傘広場は日光広場に比べるとだいぶ広く、ちょうど家1軒分の土地くらい。小さすぎる公園界ではかなり広大な部類である。日光広場と同じように地下には防火水槽があるみたいだけど、園内にあるのは真っ赤な日傘のオブジェとベンチがいくつか、それと放置自転車とバイクのみ。あと地面に大きなふくろうのタイルアート。ネーミングの元となっている(たぶん)オブジェは、日傘と言ってはいるもののスケルトンなので日除けにもならないけれど、真っ赤なカラーリングが印象的である。
しかし日傘のオブジェ、なぜ日光、というのと同じくらい疑問である。なぜ日傘。
豊島区/東池袋の辻広場/鎮守の森
次に向かったのは、同じブロックの中にある「鎮守の森」。広場という表記はなかった。
ほかの辻広場と同じく、ここも一角に防火水槽や防災機材置場があるけれど、それより目立つのは鳥居のような形の入口。そして鎮守の森という名前だけど、社のようなものは見当たらなかった。
園内には水の流れていないミニチュアの滝のような水路、そして植物が植えられた花壇など。狭くはないが、何かして遊ぶようなスペースはない。でもかわいらしい公園である。
豊島区/東池袋の辻広場/さんさん広場
続いては5分ほど歩き、「太陽広場」と書いて「さんさん広場」と読ませる公園へ。それが目に飛び込んできた瞬間、いったい何なのか分からなかった。
太陽広場には、巨大な半円の太陽のようなオブジェがあった。そのほかテーブルやベンチもカラフルな色に塗られ、賑やかな公園だった(誰もいないけど)。
辻広場はまだまだあるけれど、キリがないのでまったく別のエリアの小さすぎる公園へ。地下鉄を乗り継いで、向かった先は大江戸線の蔵前駅である。
台東区/蔵前/三筋児童遊園
蔵前駅から歩いて数分。マンションやオフィスビルが立ち並ぶ大通りを歩いていると、こんな光景に出くわした。
道路に面して建っているビルのエントランスかと思った場所が公園だった。ここは台東区の三筋児童遊園。よくマンションの敷地内に小さな公園があったりするけれど、なんと区立の児童遊園なのだ。これもかなりの出物である。成り立ちとか気にせず、と冒頭に書いたけれど、さすがにこれは気になる。近所で常連の子とかいるんだろうか。
台東区/合羽橋道具街脇ポケットパーク
次はその道を1kmほど北上。しばらく歩いて有名なニイミの巨大なコック像が見えてくると、合羽橋の道具街のアーケードに入る。アーケードをしばらく進んで、その中心地である合羽橋交差点に差しかかる直前に、目指す合羽橋道具街脇ポケットパークがある。
ポケットパークと言えば、街中にあるごく小さな土地に木を植えたりベンチを置いたりして、ほんのひと休みができるような小さな公園だと思うけれど、ここのポケットパークはまたそれとは一線を画していた。
ポケットパークの奥には金色に輝く河童の像が置かれていた。まさにこの商店街の守り神だ。しばらく眺めていたら、合羽橋に買い物に来た外国人観光客が何人も入ってきて写真を撮っていた。ある意味、日本で外国人観光客がもっとも多く訪れるポケットパークかも知れない。
彼らの会話を聞いていたら、英語で何言っているか分からないけれど、会話の端々に「Kappa」という単語が出てきた。彼らにはどう見えるのだろう。
河童橋から歩いて浅草に行き、バスに乗って東へ。隅田川を超えて本所吾妻橋駅に来た。ここが今日最後の「小さすぎる公園」のある目的地だ。
墨田区/しいのき児童遊園
本所吾妻橋駅前からはすぐ奥に東京スカイツリーが見える。
駅前から北のほうに2、3分歩くと目的の小さすぎる公園が現れる。墨田区立しいのき児童遊園だ。
しいのき児童遊園、これまで見てきた小さすぎる公園からすれば別段小さくない。広くはないけどまあ、なくはない大きさだろう。しかし僕がここで気になったのはこれだ。
「地震などの災害時にはここに集まって指定された場所に避難しましょう」と書かれている。ここには近隣の人がいったん集まってくるのだ。不謹慎だけど…、見たい…。この中に10家族くらいぎゅうぎゅうになって集まっているところを見てみたい…。
墨田区/横川一丁目こども広場
今回最後に向かったのは、本所吾妻橋駅から南に10分ちょっと歩いた場所にある公園。ちょうど錦糸町駅との中間地点くらいだ。
スカイツリーを背に歩いて行くと、目指す公園が現れた。看板は特になかったけど、事前調査によると横川一丁目こども広場というらしい。
ビルの谷間に、巨大な五右衛門風呂のような砂場とベンチが1つのみ。僕はこれを何と表現すれば良いのだろう。歓喜だろうか、それとも恐怖だろうか。そのどちらでもあり、どちらでもない気がする。こんな公園、想像したこともなかった。完全に価値観の外からやってきた小さすぎる公園。
これは、とんでもないものを見つけてしまった。もはや小さすぎるとか関係ない。僕はいま最高に興奮している。