歩き終えて食べたおにぎりが最高過ぎた
歩き終えて食べたコンビニおにぎりが本っっっ当に美味しかった。米粒一粒一粒が体にしみわたる。
「健康のために一駅手前で降りて歩きましょう」
首都、東京のメディアからは時折そんな言説が流れてくる。
しかし、この一駅というのは大都市圏の基準だ。地方では「そんな無茶な!」と思ってしまう。だが、あえて地方で一駅手前で降りて歩いてみた。
在京メディアは定期的に健康のために一駅手前で降りることをお勧めしてくるが、都心だと1キロ前後くらいの一駅は、地方都市だと5キロくらいはザラで、長くなると10キロやもっと遠い場所もある。
地方在住の僕は、健康のために一駅手前で降りると聞いて「世の中の人は結構ストイックなんだな」と何の疑いもなく信じていた。
他にもそんな人がいないか、「デイリーポータルZをはげます会」やサイト関係者にもエピソードを募ったところ、
高校生の時に回ってきたNON-NOに「ダイエットには1駅歩こう♪」って書いてあるの見て「す…すごい…横浜〜戸塚間、山だし電車でも10分だから、それ毎日やったら痩せるよね…」と過酷なアイアンマンレース的なことを友達と想像していました。
表参道と外苑前の間的なこと言ってたんだな…と大学生で気づきました。
ようこさん
高校時代、女性誌に載ってた「1駅歩いてダイエット☆」みたいなのを、群馬在住なのに真に受けて実践したところ、駅から駅まで1時間くらいかかりました。
さらに、最寄り駅から家までも結構な距離があったため、トータル2時間近くかかったと記憶しています。
くたびれて、道の途中にあるシャトレーゼででっかいシュークリーム買ってしまったせいか、全く痩せもしませんでした。
上京して、1駅区間の狭さに衝撃を受け、「あのダイエットは群馬仕様ではなかったんだ!」と、ハッとなった次第です。
ネッシーあやこさん(東武伊勢崎線の、新伊勢崎駅から剛志駅(無人駅)の間です。 )
という声が集まり、都会と地方との一駅の違いによる戸惑いや勘違いが集まった。
都会で急行が止まる駅の間隔が田舎のだいたいの駅の間隔くらいじゃなかろうか。
考えてみると僕も含め地方に住んでいると車移動が多くなりがちで、大都市圏の人と比べて運動不足になりやすい。
一駅の間隔は少し離れているが健康のために一駅手前で降りて歩いてみることにした。
北海道などに行けばもっとエグい一駅がありそうだが、近場で一駅手前で降りようと思う。
この三石~上郡間は電車に乗っていても12分くらいは掛かる。事実、山陽本線で最も一駅の距離が長く、多くの青春18きっぷ旅行者がここで寝落ちする。
地方都市では岡山駅などの中心駅こそ栄えているが3~4駅ほど行けば急速に田園風景になる。この角度が急だ。
三石駅は岡山県の東の端の駅で、あと一駅行けば兵庫県となる。一駅手前で降りて歩くと県境を越えることになる。
三石駅で降りたのは僕一人だった。たぶんこの記事を読んでいる人の99.9パーセントが一生降りない駅だと思う。
狙った訳じゃないが、何時間かかったか計算がしやすい。
ちゃんと歩いて上郡駅までたどり着けるか不安でいっぱいだ。
なんとなく予想していたが、駅前と言えコンビニみたいな贅沢な施設は望むべくもない。
後日調べてみると一番近いコンビニは三石駅から6キロ先だ。
距離的には東京駅の最寄りのコンビニが新宿にある、あるいは梅田駅の最寄りのコンビニが新今宮にある感じ。
先が思いやられる。
獣道を歩かないといけないのかと心配してたがちゃんと舗装されている道になってよかった。
ご覧の通り全く人に会わない。車も通っていない。
つまり急に体調が悪くなっても助けを求める事が難しいという事である。
地方で一駅歩くのはそんなリスクもはらんでいる。
余談だが、刑事ドラマなどでよくアリバイを確認するくだりがある。ドラマの都合上ほとんどの場合でアリバイがあるが、地方に住んでいる人のアリバイだと結構難しい気がする。
地方ののどかな場所に住んでいると外を歩いても基本的に人には会わない。
刑事ドラマを見て「ふつうそんなにアリバイある?」と思っていたがあれは都会基準だった。
なお、家族の証言は犯人をかばって嘘をついている可能性があるのでアリバイにはならないらしい。
地方で一駅歩くのは駅と駅の間隔以上の難しさがある。
それは線路沿いが通れないことだ。
道路が線路から外れていく。
はげます会のコメントでも”地方で一駅歩く”場合は線路沿いが歩けないというコメントをたくさん頂いた。
電車ではわずか3分の距離なのにまっすぐ道がなく,途中丘と谷を2つくらい超える必要があります.とどめは最短距離で行こうとすると崖みないなところを獣道で登らないといけないという...ざっくり1時間くらいかかります.
小ライス,大盛りで.さん(総武線 津田沼 - 幕張本郷間)
高校時代に通学に使っていた路線で、一駅間の直線距離は3km程ですが、川を渡るのに橋が近くに無く、迂回して12km程になる駅があります。
中学の時にその近くの神宮まで自転車で行かされましたが1時間以上かかりました。車でも20分以上かかります。
すぅさん (JR鹿島線 香取駅 - 十二橋駅)
駅の間隔自体は10km程度とそんなに遠くはないのですが、線路と並行する道路がないため迂回するには40km以上ある上に、冬場は駅までの道路が除雪されず徒歩で行くこと自体も行くことが不可能となります。
チャーリー浜岡GPさん(仙山線 奥新川 - 面白山高原)
電車通学をしていた高校時代にうっかり駅を降り過ごしてしまい、田舎なので戻る電車の本数も少なく、電車なら4分程度だし歩けるかなとタカを括って歩いて帰ることにしました。
線路沿いの道があると思っていたのにそんなものはなく、当時GoogleMapなどは使っていなかったため勘を頼りに歩き始めたものの、散々迷って半泣きになりながら3時間くらいかけて帰った気がします。今GoogleMap見たら徒歩の所要時間は1時間10分でした。
71さん(長崎本線 佐賀 - 伊賀屋間)
地方で一駅歩くと、山や谷が阻み駅の間隔以上に歩かなければならい。
ちゃんとした歩道という感じではないが、歩くスペースが確保されている。
しばらく歩いていると、
自転車と歩行者は左の道へ曲がれという事だろうか。矢印が指し示す道へ進む。
ちょっと不安になってくる。自転車歩行者専用道ってこんなに登山だろうか。
先ほどの看板は「自転車歩行者専用道」とあった。つまり自動車は通ってはいけない。
しかし、元の道が「自動車専用道」ではない以上、歩行者もまっすぐ進むことができるのではないだろうか。
こちらの方が道が平坦だし歩きやすい。
なんだか嫌な予感がする。
歩けそうなスペースがあるように見えるが、大型のトラックがトンネルの壁ギリギリ一杯になってすごいスピードでトンネルに吸い込まれていく。
トンネルを歩いて通るのは迷惑だし、なにより危険だ。やはりさっきの登山が正解だったようだ。いそいそと戻る。
とんだ無駄足を踏んでしまった。
徒歩での移動では道を間違えると引き返すのも時間がかかるが、表示が分かりにくかったりする。
内燃機関を持つ自動車のほうが平坦な道を通って、歩行者が険しい道を歩くというのは不公平な気もするがそもそも地方で歩く人が少なく、待遇が悪くなることもしばしばだ。
この辺は船坂峠といって、かつては追い剥ぎがでていたらしい。なんだか追い剥ぎがいても不思議ではないくらい鬱蒼としているが、その分涼しく、吹き抜ける風が体の表面から熱を奪っていく。
正面には「縣界」と彫られ、岡山県と兵庫県の境界を示している。
左側には「岡山縣和氣郡三石町」とある。
県の字が旧字になっていることからも古いものだ。
徒歩か自転車でしか来ることはできないので、なんだか歩いてきたご褒美のような気がした。
三石駅からここまでおよそ1時間。まだまだ元気だ。
自然に取り込まれつつある自動車を見つける。
普通に生活していると当たり前で気にも留めないが、一駅歩いている途中では線路を見つけるだけで嬉しくなってくる。
歩いていないと気付かないような、何かのアニメの聖地の様に雰囲気が良い場所を見つける。
歩くと一つ一つの景色をゆっくりと楽しむことができる。
地方の色んな場所の一駅を歩くっていうのも良いかもしれない。
素朴な風景にも人々の営みが感じられる。
地方で一駅歩くと、都会と比べちゃんと歩道が整備されていない場所が結構ある。
はげます会のコメントでもそもそも歩くのが危険だという意見もあった。
出発から2時間ほどして、僕にもそれがやってきた。
そっちに行かないでという願いも虚しく、幹線道路を歩く羽目に。
この幹線道路は大型のトラックなんかもバンバンに通る。
上の写真ではまだ歩くスペースがあるがこの後どんどん歩くスペースが狭くなり、肩をかすめる様に車が通って行く。
生きた心地がしないし写真を撮る余裕もないほどだ。
その後、脇道に逸れてなるべく交通量の少ない道を歩くことに。
歩き始めてから2時間半。昼頃になり太陽がほぼ真上に来ると、街路樹が植えられ綺麗に整備された道が始まる。
ここまで主に通ってきた道は、生活に密着した曲がりくねった道路だったのに対し、ここからはほとんど真っ直ぐな道路だ。
歩道もちゃんと整備されているし見晴らしも良くとても歩きやすい。ありがたいなと思っていた。
この綺麗な道路は歩きやすいのだが…歩けども歩けども景色にあまり変化がない。
正直ここまで歩いてきた道は結構景色が楽しめていた。急な上り坂だろうとそこまで苦にもならなかった。
しかしこの綺麗に整備された道は景色に変化がなく、意外につらい。気が紛れるものが無いし、進んでいる実感がないのだ。
元から痛かったのかも知れないが、痛みがより気になってくる。
他の人が見れば単なるY字路かもしれないが、景色に変化があると思うと、ホッとした気持ちと達成感が込み上げた。
地方で一駅手前で降りると、ずーっと同じような景色が続くことがある。
歩き始めてからおよそ3時間、明らかにここまでとは雰囲気が変わり住宅が密集してきた。
駅が、近い。
その角を曲がれば駅があるんじゃないかと期待し、期待が裏切られるを繰り返す。
しかし駅への期待感は足は自然と前へ前へと進める。
人間が頑張るためには希望が必要だ。
すでに足がかなり痛いが最後の力を振り絞る。
今まで訪れたどんな駅より神々しい。
駅の入口までのわずかな距離すら長く感じる。
ついに一駅手前で降りて健康のために一駅間を歩ききった。
歩いた距離はスマートフォンの記録によると12キロ。新宿駅からデイリーポータル編集部がある二子玉川駅くらいに相当する。
撮影しながらだったのと道を間違えたりもしたのでちょっとペースは遅いが、かかった時間は約3時間半だった。
しかしよく考えると電車って素晴らしい。あれだけの距離をたったの12分で行ってしまうのだから。明治時代に初めて鉄道に乗った人もこんな風に感動したに違いない。
通勤の時に一駅手前で降りて歩くのはさすがに厳しいんじゃないかと思うが、休みの日にゆっくりと散策しながら歩くのは気持ちいい。ぜひぜひ安全に気を配りながら挑戦してみてほしい。
歩き終えて食べたコンビニおにぎりが本っっっ当に美味しかった。米粒一粒一粒が体にしみわたる。
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