申請力があればのぼれる!
今回の取材は一般にも開放された見学コースをなぞったもの。
もしおらも千葉の最高峰にのぼりてえだがや! という方がいらしたら基地の詳細ページをご覧いただきたい。
ちなみにこれまで最高齢で92歳の方が登頂されたそうだ。足腰もすごいし申請力もすごい!
取材協力:航空自衛隊 峯岡山分屯基地
日々ぼんやり暮らしている。
高い山といえば「……富士山とか…?」くらいの雑な意識で人生をやってきた。
しかし各都道府県にはそれぞれに一番高い山があり、それを誇りとしている地元の方も多いことだろう。
今回、千葉を愛する方々から「千葉で一番高い山に登りませんか」とお誘いをいただいた。
俺たちの自慢の山を見せてあげましょう、ということだろう……と思ったが、彼らも未登頂なのだという。
この千葉の最高峰、「全都道府県の最高峰で一番低い」にもかかわらず「一番登頂難易度の高い山」だそうなのだ。
冒頭の
「全都道府県の最高峰で一番低い山」
というのは千葉県の愛宕山のこと。
標高408メートル。47都道府県の最高峰のなかでこれは断トツで低い。
そして
「一番登頂難易度が高い」
これはどういうことなのかというと、この愛宕山の山頂一帯が航空自衛隊の敷地内なのだ。
当然カジュアルに立ち入れる場所ではなく、登頂には事前の見学申し込みなどが必要だ。
ガチの高い山、例えば富士山に登頂! ともなるとトレーニングや季節選びなどそれはもう大変なことだとは思うが、いわゆる一般的な「高い山」に登るのとは別のむつかしさがあることから
「一番登頂難易度が高い」
と噂されるそうだ。
さて、今回はご説明の通り千葉が地元ウェブメディア「ちいき新聞web」の編集部のみなさんに縁あって取材にお誘いいただいた。
もともとは千葉でモンスターレベルの発行部数を誇るフリーペーパー「ちいき新聞」がもとになっているウェブサイトで、みなさん千葉近郊の取材経験がハンパない。
車で向かう途中も、車窓のあちこちを指して「あそこは以前取材にいったんですが……」とよどみない案内を聞かせてくれた。
とにかく千葉力が高いのだ。
そんな千葉の猛者のみなさんにとっても愛宕山は今回がはじめてだそう。それくらいレアな山なのだ。
さて、目的の航空自衛隊峯岡山分屯基地は南房総市にある。
安藤「チーバくんでいうとどのあたりですかね」
古賀「横っ腹の下くらいの場所……ですかね……」
千葉は地点をチーバくんの体の部位で言い表すことができる。県としての強みがでかい。
ちなみにちゃんとした地図で愛宕山はこちらです
地図を見るとわかるのだが基地うんぬんの前にそもそも公共交通機関ではかなりリーチしにくい場所にある。
ちいき新聞山田さんの出してくれた車で千葉を走り抜けまくった。
近づくにつれ山に分け入り車はぐんぐん登っていく。これはもうすでに山に登っているのだなと思った。
なにも考えずに来てしまい、あとからそりゃそうだ! と思ったのだが、峯岡山分屯基地はレーダーサイト、つまりレーダーでの監視が任務としてある。
ということは基地自体がそもそも高い場所にあるのだ。
入口で申請しておいた名前と身分証明書の照会を行ったあと、車のなかで待っていてくださいといわれる。
時間が厳かだ。
千葉といえば海水浴や潮干狩りなど海遊びの人気スポットをそれはもう多く擁するわけだが、一番高い山に登ろうとするとこうも厳粛なのか。
しばらくして、1等空曹で案内役の佐久間進一さんがやってきた。よ、よろしくおねがいします!
挨拶をすませるとすぐに山頂へ向かう。一般の見学同様、取材の時間も1時間と決まっている。
事務棟や体育館(訓練や武道の大会で使うのだそうだ)の奥に愛宕山の登山口はあった。
……さてはこれ……裏山だな!? という風情だ。
「ドラえもん」ではのび太の通う学校の裏山がよく出てくる。実際にあったらこんな感じの入り口なのではないか。実際基地の施設の裏にある。
基地だし千葉で一番高い山なんだけど、裏山。イメージの渋滞がすごい。
曇ってはいるが気候の良い日でウグイスがよく鳴いている。
石段をのぼった先にはもともと基地になる以前から祀られていた愛宕神社があった。
境内の土地はいまも愛宕神社の土地だそうで、定期的に氏子の方が手入れをしているそう。
源頼朝が平家から逃げ鴨川で再起を祈願した際に祀られた神社だという。由緒~!
そして、その後ほんのひととき山を登ってもういきなり登頂した。
所要時間は10分だった。やっぱりこれ、裏山だ!
記念カードには年度切り替えである4月からの通し番号がふられている。
ちいき新聞チームはキリ番(150番)をもらった山口さんを山田さんと扇原さんがずっとうらやんでいた。思いが強い……!
それにしても思った以上にカジュアルな登頂だ。
全都道府県随一の難易度の高さ、だが低い、というその言葉のその通りさ加減を実感しまくった。
その後、山頂からほんのすこし下るものの、開けていて見晴らしが良いという広場にも案内していただいた。
かつて施設があった関係で開けているのだそう。
なんと、横浜が見えた。三浦半島も。
ぼんやりとだが富士山や、スカイツリーも見える。
冬の晴れた日はもっとくっきり見えるのだそうだ。
知っているものが遠くから見えると無条件でありがたい。
安藤や私は「高い山=感激」「いい景色=感激」くらいの脊髄反射ですっかり興奮していたが、ちいき新聞勢の感慨はそれ以上のようだった。
山田さんが山口さんと扇原さんに言った
「いま私たち千葉の一番高いところにいるんだよお……」
という興奮を私は聞き逃さなかった。どれほどの千葉愛か。
地元を好きな人たちと一緒に千葉で一番高い山に登ったのだ。こんな光栄な日はない。
追えて車で基地を後にし、ふと時計をみたらぴったり事前に申請していた取材終了予定時間だった。おおお……。
今回の取材は一般にも開放された見学コースをなぞったもの。
もしおらも千葉の最高峰にのぼりてえだがや! という方がいらしたら基地の詳細ページをご覧いただきたい。
ちなみにこれまで最高齢で92歳の方が登頂されたそうだ。足腰もすごいし申請力もすごい!
取材協力:航空自衛隊 峯岡山分屯基地
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