意外とすごい5分の力
ある日の夜中のことだった。例によって一人でお酒を飲みながらインターネットをしていた。
するとだんだん暗い気分になってきた。なんというか、閉塞感?みたいなものが襲ってくるのであった。やることなすこと全てが否定されているような、そんな気持ちである。
肺に吸い込まれる空気が、どろどろと重く感じられた。
どうすればいいのか分からなくなって、とりあえずぷるぷると震えて携帯電話のモノマネをしてみたが、何も解決しない(当然だ)。これはまずいと思った僕は一目散に走りだした。
なぜと言われてもわからないが、なんとなく走りだした。
5分後、僕は紳士服のAOKIの前に立っていた。家からおよそ1kmの場所である。ほぼ意識のないまま1kmワープした気分だ。
「寝坊した!」と、慌てて家を出て、気がついたら起床後10分で電車に乗っていた…という経験がある方は多いと思う。アレに近い。
5分前まで椅子に座ってインターネットをしていた。そこから考えると、AOKIの前で息を切らせている今の自分の存在はおかしい。
距離にしたら1kmだが、ストーリーの分岐として考えたらだいぶ遠くに来た気がする。
もしかしたら、今AOKIの前で疲れている僕とは別に、家にはインターネットを続けている方の僕が残っているかもしれない。そんなパラレルワールドが頭に浮かぶ。
5分で世界が変わる!というのはこういうことではないのだろうか。
閉塞感に苛まれていた僕だったが、どの瞬間からでも5分あればでできることは結構ある。その範囲というのは意外と大きいのではないか、という考えに至った。