「おとっつぁん」なら分かるが「おとっつぁ」だと神秘的
改めて、マリトッツォだが、これはもう、テノール歌手のジョン・健・ヌッツォ氏登場以来の新鮮な語感だった。
ジョン・健・ヌッツォ氏はイタリア系アメリカ人を父に持つという。マリトッツォ同様、ヌッツォ姓もイタリアにゆかりがありそうだ。イタリア語の新鮮な味わいに私達は魅了されるのかもしれない。
こうした発音には日本語話者にとっては「おとっつぁん」の前例がある。
「と」のあとに促音(っ)がきて、そのあと「つぁ」のような息を押し出す音が続くのには慣れていたはずなのだが、おとっつぁんが最後の「ん」で着地するのに対しマリトッツォは「ツォ」で言いっぱなしなのがどこか人を不安にさせる。
「おとっつぁん」なら分かるが、「おとっつぁ」だと神秘的、そういうことだと思う。
語感重視でイタリアのお菓子を買ってきた。
「カネストレッリ」と「バチディダーマ」
まず見つけたのは「カネストレッリ」と「バチディダーマ」。
輸入食材の店でカタカナで値札に書いてあり二度見した。目の覚めるほどの「誰」と「誰」? である。


外国語を未履修だからこそ感じられる新鮮さ、未履修でよかった! なんてことはほとんどないが、せめて語感に新鮮さが感じられうれしいというのはある。
この青い箱、メーカーの「グロンドーナ」はジェノヴァのお菓子メーカーだそうだ。
パッケージに200周年的なことが書いてある。1820年といえばバリバリ江戸時代である。ガチ老舗だ。

花の形のバター味のクッキー「カネストレッリ」
まず「カネストレッリ」。
花の形のバター味のクッキーで、商標などではなく一般名称らしい。つまりマリトッツォ同様、唐突に日本でイットクッキーとしてもてはやされる可能性がなくもない。
レッリの言いづらさが心地よい。舌が上顎でかつてなくベロベロする。今のうちに慣れておこう。


しっとりとは無縁の、いわゆる「口の中の水分全部もっていく」系のクッキー。ちゃんと甘い。
……。おいし~~っ。すなおに、ただおいしい。
「バチディダーマ」=「貴婦人のキス」
いっぽうの「バチディダーマ」は、お店のポップに「『貴婦人のキス』と呼ばれるお菓子です」と書いてあった。
急なネーミングセンスだが、食べるときに口をすぼめるくらい小さい=すぼめたときの口がキスのときの口っぽい、ということらしい。

こちらも伝統的なお菓子としての一般名称。バターとヘーゼルナッツを練り込んだクッキーにチョコレートをサンドしたものだそうだ。
「バチディダーマ」、一読してすぐにお菓子の名前だとは絶対にわからない語感だ。むしろめちゃくちゃなスピードで飛んで来る鋳物くらい固く強くおそろしいイメージがわく。
逆にイタリア語を母語とする、日本語を知らない方に「おはぎ」と言ったら何を連想するだろう。「みたらしだんご」あたりも奇異に感じてもらえるかもしれない。

こちらもホロホロした、積極的に粉を感じさせる食感。あ、粉っておいしいんだなと思わされる。チョコレートの分、生地の甘みは引き算してあって、重くない味だった。
名前の新鮮さが楽しいし、おいしい。これはと気を良くし、さらに2種類チョコレート菓子を仕入れてきた。
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