「こだわり」のためだけにホテルに泊まった
今回、この企画のためだけに都内のビジネスホテルに泊まった。
筆者は横浜在住なのだが、ちょうどお台場で別件の取材の予定があったので、そのまま都内で一泊することにした。なるべく土地勘のないところがいいな、と、宿泊地を上野近辺にした。
せっかく泊まるからには、できる限り多くのこだわりをこなしたい。あれもこれも持っていきたい。一人で泊まるから、セルフタイマー撮影のために三脚もいるだろう。で、こうなった。
お台場で待ち合わせた編集さんが、僕の大荷物を見て、「これからどちらへ?」と問う。「上野に……」「明日、朝早いんですか?」「いえ特に……」。大きな「?」が見えた。無理もないと思う。
投稿では、ホテルの予約の段階から、こだわりをいくつかいただたいていた。「ホテルの公式HPから予約する」「ホテルに直接電話する」「観光協会経由で予約する」などあったのだけど、結局前日の夜に旅行サイトから予約してしまった。「直前割」というプランがあり、お安く泊まれたのだ。
そういえば「ホテルの空き室は、代理店に割り振られた部屋と、ホテルが直接管理している部屋にわかれている」という投稿もあった。「宿泊予定の日が満室」「目的のホテルが予算オーバー」なときは、予約の手段を複数比べてみるといい。図らずも身をもって実践してしまった。
充実した設備に出鼻をくじかれる
「到着したらベッドに飛び込みます」の実践である。「全裸になって一回転しながらベッドにダイブします」という声もあったが、僕のわがままボディをネットの海に漂わせるわけにはいかないのでご容赦願いたい。
さて、到着してまずやるのは、部屋の環境を快適に整えることである。
さぁ他にもいろいろやるぞ……と、腕まくりをしたのだが、思いのほかホテルの設備が充実しており、既に解決済みのことが多々あった。
投稿で最も人気が高かった「ドーミーイン」を選んだ結果、こだわりでカバーすべき欠点が既に埋められていたのだ。こだわりを実践できない……という残念さと、こうあるべきだよな……という嬉しい誤算のあいだで揺れる。
しかしこちらは準備万端である。やるべきことはやる。ビジネスホテル過激派と言われても構わない。
いつもの部屋着の着心地、家で使っている石鹸の香り、体を洗うナイロンタオルの感触。目を閉じるとそこは家だ。
「嗅覚」「触覚」を家に近づけるだけで、だいぶリラックスできる。脳を騙している感覚だ。
長い夜を過ごそう
一通り部屋の環境を整えたあとは、長い夜が待っている。ここをどう過ごすかである。
ちなみに筆者がビジネスホテルを利用する頻度は、月1回あるかないか、という程度。夜は手持ち無沙汰だし、物音で眠れなくても、泊まり明けに喉がガラガラでも「しょうがないか……」と諦めてしまう。耳栓やマスクでも持っていけばいいのに、全く教訓が活かされない。
そういえば昔、とあるビジネスホテルに泊まったら、夜中に「プーーーーー」というブザーみたいな音で夜中に何度も起こされたことがあった。屋外で鳴っているのか屋内で鳴っているのか全然わからないの。あの音なんだったんだろね。あれ、いま僕ひょっとして怖い話してますか。
もっと地方のホテルであれば「地元のスーパーで土地の食べ物を買う」 もできたのだけど仕方ない(すみません!)
周辺にはガード下の立ち飲み屋など誘惑がたくさんあったが、ここでホルモンなどをたしなんで酔っ払うと、この後のこだわりをこなせない。断腸の思いで、コンビニでお酒やおつまみを買って部屋に戻る。
さて、ホテルの部屋で残った仕事をする、という場合もあるだろう。そこで試したいのが「HDMIケーブルを持っていき、部屋のテレビとPCをつなぐ」だ。
HDMIケーブルが活躍するのは仕事だけではない。PCをホテルのWi-Fiにつなげば、Netflixで映画を見たり、TVerで見逃した番組を見たりもできる。スゴいぞHDMIケーブル。
なお、PCやスマホの充電には「3mの延長コード」もあると便利。枕元にコンセントがないホテルって以外とあるんですよね。
お酒を飲んで寝よう
さて、ビジネスホテルの夜のお楽しみのひとつはお酒である。チューハイやハイボールを飲む方にオススメなのが、ホテルに備え付けられた製氷機の有効活用。
製氷機の氷でキンキンのハイボールが飲める。「ステンレスのマグカップを持っていく」という方がいたが、このマグカップはドーミーインの洗面所にあったものである。ここでもドーミーインのポテンシャルにしてやられた。
楽しい。楽しいぞビジネスホテル。寝るのが惜しくなってきた。
魅惑の朝食バイキング
ぐっすり寝た。そしてすっきり起きた。ビジネスホテルのカーテンは分厚くて光を通さないものが多いので、ちょっとカーテンを開けて寝ると自然光が入ってきて目を覚ましやすい。
部屋に用意されているものを使いつつ、自分の好みに合うよう工夫する。生活をカスタマイズする醍醐味がある。
この勢いで朝食バイキングに行こう。
朝食バイキングの会場となった食堂、飛び交う言葉はほとんど外国語だった。上野公園にほど近い立地なので、観光に来た外国人の方々がよく利用されているよう。投稿には「ドーミーインの朝食はご当地のものが出る」とあったが、上野のドーミーインはおでんが「日本食」としてその役割を果たしているのかもしれない。
嬉しくなって2周してしまった。普段朝はこんなに食べないのに、なんでバイキングとなるといっぱい食べちゃうんでしょうね。
このあと11時のチェックアウトギリギリまでいて、打合せのために新橋に直接向かった。「どちらに行かれるんですか?」と聞かれて「上野に泊まってきまして……」と答えた。大きな「?」が見えた。
家っぽいけど家じゃないホテル
堪能した。こんなにビジネスホテルを堪能したことはなかった。工夫次第でここまで快適になるのだと驚いた。ネットに本来期待されていた「集合知」ってこれだと思った。
投稿いただいた数々のこだわりは、「ホテルという非日常のなかで、いかに家という日常に近づけるか」そして「いかに家に近づけつつ、家でできないことをやるか」という工夫なのだな、と感じた。今風にいうと「ハック」だ。
リゾートホテルのように非日常を100%楽しむやりかたもあれば、ビジネスホテルのように滞在をハックする楽しみ方もある。「家っぽいけど家じゃないホテル」って、ひょっとしたらウケるのかもしれない。