あれ?美味いぞ?
さあさあ、皆さん行き渡りましたね。それではどうぞ、召し上がれ。
そうでしょう、そうでしょう。鰹出汁と貝柱の戻し汁でじっくり煮込み、最後に蟹のあんかけをかけております。大根の素朴な旨味と海産物の滋味深い旨味、どちらも楽しめますよ。
さあさあ、なにしろビュッフェスタイルですからね。お替り自由です。トルーさん、次は何を選ぶんですか?お、大根の煮物ですね!
トルー「次はこの皿を!」
私「ほほ~。あなた、審美眼を備えてらっしゃる」
岡田さんは何を選びますか?おお、大根の煮物ですね!
口数の多い料理店
皆さんの幸せそうな顔を見ていると嬉しくなってきてしまい、ついつい饒舌になってしまいます。
コンセプトを覆しかねない、禁断の秘薬登場
お替りが止まらない皆さんを見ていたら、私は嬉しくなってしまいました。「1品しかないビュッフェ」というコンセプトから逸れるかもしれませんが、あるサプライズを投入することに。
柚子胡椒の投入により、皆さんの食欲はさらに増進。お替りのペースがどんどん早くなったのです。
デザートは別腹
しかし、一時間ほどで皆さんもさすがに満腹になった様子。箸が止まり、静かに遠くを見つめています。
では、最後はデザートで締めましょうね。これだけは別腹ですからね。
「近い将来、豊富な食材が簡単には揃わなくなるかもしれない。ビュッフェなんて形式は維持できるのかな?」。そんな思いでやってみた今回の企画だったのだが…。
店主が少し煩わしいのを除けば、「全然飽きない」「かなりの量食べられる」と参加者の方達の反応は意外なものだった。岡田さんに至っては「大根がフォアグラに見えてきた」とまで言い出す始末。一品だけ食べ続ける食事というのは、そんなに嫌なものではないらしい。
実はこの日、とある方達が我々の様子を見守っていたのだが、「明らかにおかしいことやってるのに、店主の言葉に乗って皆さんが幸せそうになっていくのが怖かった。洗脳ってこういう感じなのかな?と思った」という感想を頂いた。
確かに大根がクルクル回ってる状況に違和感を抱かなくなっていた我々は、おかしな精神状態に陥っていたのかもしれない。食の未来を考えるつもりが、思わぬ着地になってしまった。
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