読んだよ 2025年11月19日

まるで本当に見てきたような江戸さんぽ本「江戸アルキ帖」、東京の東側に住んでる人にはたまらない

デイリーポータルZのライター、関係者が愛読している本を語ります。

今回はライターの與座さん。レコメンドは「江戸アルキ帖(杉浦 日向子・著、新潮文庫)」

聞き手は古賀、西村、石川です。

では與座さん、お願いします。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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與座:
著者は杉浦日向子さん。書かれてる本がどれもとてもおもしろくて…江戸時代の研究や漫画で有名な方で合ってますよね?

古賀:
うん。最近またちょっと話題になってません?

西村:
いまほら、大河ドラマ(べらぼう)が江戸の話だから。

與座:
そうなんだ。見なきゃ。

西村:
あれ、面白いっすよ。「顔のいい両津勘吉」って感じで。こち亀感があって、めっちゃ面白いです。

石川:
ははは。

與座:
この本は、著者の杉浦日向子さんがとにかく江戸が好きで、その杉浦さんがほんとに江戸を歩いたように絵日記を書いた、という本です。

設定も練られていて、はじめは現代から始まるんです。抜粋しますね。

マリコは海に凝っている。サトコは買ったばかりの新車に夢中だから、私も急に何か始めたくなったので、毎週日曜、江戸に行くことにした……って始まる。

古賀:
入りがすごい。

與座:
江戸に入るためには免許がいるっていう設定なんです。
江戸免許はすっかりペーパートラベラーだったから、短期講習を受けて免許取り直して、江戸に来ました。初日なので日本橋にしました……と江戸に到着した様子が書かれています。

以降は、見たことをひとつの町ごとに書いてある。

DSC01775.JPG
8~9ページより引用

古賀:
1本はすごく短いんだね。

與座:
そう。だから私は疲れたときとか、1日に1ページ、適当にバッて開いて読んでます。

古賀:
いいね。毎回現代から行くの?

與座:
最初だけです。たまーに帰って免許を更新して、江戸に夜までいられるようになったりする展開もあります。

古賀:
へー、おもしろい!

石川:
いつの本ですか?

古賀:
昭和60年代に雑誌で連載してたって書いてあるね。

西村:
フォントが丸ゴシックで、80年代っぽいなーと思ってました。
当時流行ったんですよ。

與座:
そうなんですか。読みやすくていいですよ。

DSC01741.JPG

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東京の右側に住んでる人にはたまらない

與座:
私、いま浅草周辺に住んでるんですけど、バリバリその辺りの様子が出てくるんですよ。

古賀:
なるほどねー。

與座:
杉浦さんは江戸の知識がすごいから、ほんとに散歩してるみたいに江戸のことを語れるっていうすごさがあるんです。

前々から湯舟を見たいと思ってたから、水上銭湯に来ました、とか。

西村:
水上銭湯なんてあったんだ。

與座:
ですよね!私も、あったんだ~、と思って。他にも「木場を歩いていると子どもが網を持って目の前を通り過ぎる」「千住辺りでホラ貝の音が聞こえた」とか、本当に見てきたんじゃないか!?と思うぐらい細かく書かれているんです。

古賀:
物知りすぎて、街を歩いてると江戸が見えてくるような感覚があるのかもしれないね。

與座:
読んでてすごい不思議なんです。詳しく調べて書いたっていうよりは、なんか本当にもうブログを読んでいるかのような気分で。

西村:
これ、絵もご本人なんですね。

與座:
うん、そうなんです。

古賀:
見えてるんだよね。江戸が。

與座:
吾妻橋とか浅草のアサヒビール周辺のあたりは昔から栄えてたから、本の中でも露店がいっぱいあって茶碗とかいろんなものが売ってて、でも防災のために火を使うのはダメなんだよね!とか住んでるかのように書いてある。

簡単に読めるのに江戸のことも詳しくなれて、すごく素敵な本なんです。

古賀:
お得なんだ。

與座:
今住んでるところとか、最近いったところとかのページを見るのもすごいおもしろい。
スカイツリーがある押上も、草がぼうぼう生えてて家が少しあるだけで静かな様子が描かれていたり…。

西村:
江東区、墨田区辺りに住んでる人は、かなり刺さるんじゃないですか、この本。

與座:
あと品川とか。
潮干狩りやってんだ~、みたいな。

西村:
ちょうど駅の辺りまで海が入ってたんですよね。

與座:
たまに新宿とかも出てくるんですけど、何もなかったりとか。

西村:
郊外ですもんね。当時は。

與座:
知識として知ってたことも、旅した記録として読むと「うぉー本当に何もなかったのか…」とよりわかりやすく理解できました。
1日1ページ読むだけでも相当満足感あります。

西村:
すぐ読めますね。1エピソードは。
これはいい本ですね。

古賀:
いい。すごくいい。
カラーなのもさ、ちょっとありがたいよね。

石川:
目次見ると日記が200ちょっとあって、日ごとに場所が違うから、200いくつかの街を巡ってるってこと?

與座:
そうです!時代も少し幅があるように思いました。

古賀:
どこをどう通っていったかまで書いてあったりするから、落語とか好きな人もたまんないかもしれないね。

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本所吾妻橋の周辺をなめてた

與座:
わたしいま浅草周辺に住んでて、本所吾妻橋あたりをちょっとなめてたんですけど(笑)

西村:
なめてたって何(笑)

與座:
かっこいい名前の割にさっぱりしてるな…と(笑)
浅草と押上の間にあるでかい道路エリア、くらいに思ってたんですけど、これ見ると本所吾妻橋が超栄えてて。

霞が関の回とかも面白いです。お屋敷があって、昔もこんな感じか~って。

DSC01787.JPG
166ページより引用

西村:
霞が関って、外務省と財務省の間の坂あるじゃないですか。あそこ、潮見坂っていうんですよね。
昔はほんとにあそこから海見えてたんだって。
そうやって交差点名とかからも、昔の様子を想像できるのって、いいっすよね。

與座:
確かに。当時の名前が残ってるから面白いっていうのはありますね。

西村:
これ行くといいっすよね。読んでからその場所に。

與座:
行くとおもしろいですよ。

古賀:
いやーいい本だ。

西村:
右側に住んでる我々にとってはたまんないですね。右側勢は読まないと。

與座:
いやほんと吾妻橋があんな栄えてたとは。

西村:
まだ言ってる(笑)

江戸アルキ帖 (新潮文庫)

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