古賀:
あらためて紹介することもないくらい有名な番組で恐縮なんですが、NHKのEテレに、「100分 de 名著」っていう、名著を解説してくれる番組がありますよね。識者の先生が出てきて、テーマの名著について、楽しみ方とか、どういうことを語ってるのかとかを丁寧に教えてくれる。
西村:
一回25分×4回でね。
古賀:
はい。で、これはそれのテキストです。基本的には番組を見ながら教材として読むのが本来なんですけど、これだけ読んでも十分面白くって。
番組の放送後もずっと売れ続けるテキストがあったり、読み物としても人気で。
石川:
へー。
古賀:
一般的なテキストの上位互換みたいな、サイズが変わってカバーがついて、いろいろ情報が補完された書籍版の「100分 de 名著ブックス」とか、「別冊100分 de 名著」ってのもあって、どれも面白いし、何よりありがたい。
石川:
売れてるんだ。
古賀:
すごく売れてるみたい。累計1000万部の発行を記録したって版元のサイトに書いてありました。
名著のコピーが秀逸すぎる
古賀:
でね、このテキストはもう、「名著を詳しく解説してくれる」というところだけでとにかく助かるのはお察しいただけると思うんですけど(笑)、私が特に好きなのは、ここと、ここが良すぎる。
古賀:
これ大岡昇平の『野火』ですけど、右上が「汝、殺すなかれ」。
西村:
左下が「生きることへの執着、その先にある闇と光。」
野火はなんとなく、この2つだけでも内容わかりますね。
古賀:
そうですね。『野火』は、レイテ島の戦いが舞台で、飢餓のあまりに戦場での食糧事情のタブーにふれるという内容ですな。
西村:
だから、「生きることへの執着」だし「闇と光」。
古賀:
まさに『野火』のことが書いてある。
これ他の本も全部、まず右上を見て「えっ!?」てなって、次に左下を見ると「そのとおりですね……」ってなるようにできてるんです。
ほかの例だと、「「会話」を守る」えっ!?ってなって、左下「終わりなき議論こそ哲学が向かうべき「希望」である」で、そのとおりですね、って(笑)(ローティ『偶然性・アイロニー連帯』)
「熱狂が「私」を蝕む」えっ!?「理性や良識が易々と消え去るのはなぜか?」そのとおりですね……。(ル・ボン『群集心理』)
西村:
うわ、まさにネットのSNSの感じだ!ってピンと来るわけだ。
古賀:
そうそう! 「その通りです、私も『なぜか?』って思ってました」みたいな気分になる。
ここ(右上と左下。以下「ここ」はすべてそれ)を読む、それだけでもはや詩みたいにして楽しめるんですよ。
「本当の優しさ」、「言葉の奥にある言葉」、「絶対性を滅ぼす」。しびれませんか!
石川:
いいですね。
古賀:
「熱狂が私を蝕む」……。もう私一生ここだけ読んでたいよ。
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西村:
おれ、この欄だけ一覧にまとめたくなってきちゃった。
古賀:
わー! ぜひお願いしたい……! テキストは絶版のもあるのかな、でも公式サイトに書影は残ってるものもあるので、この二か所だけ抜き出していけば……。
別冊もブックスもレイアウトは違うんですけど、このフレーズはどれも最高なんです。とにかくうまいんですよ。
西村:
ねえ。
與座:
この本の言いたいことを、キュッと縮めてる?
古賀:
そうそう。それも単に言いたいことを短くしてるんじゃなく、どこか目の座った感じが表れてるんですよね。これとか。
「世界文学の「最高峰」に挑む』『複雑な現実とどう向き合えばいいのか」(トーマス・マン『魔の山』)
「やってんな〜〜っ!」って思う(笑)。
一同:
(笑)
與座:
本からの引用じゃないんですね。
古賀:
あっ、どうだろう……。おそらくここ用に書き下ろしているんじゃないかな……。
今日持ってきた中で自慢は、朱喜哲さんのサイン本です。まさか「100分 de 名著」のテキストにサイン本があるとは……。飛びつきましたよね。
古賀:
惜しまれながら今年(2025年)の2月末で閉店した梅田の清風堂で見つけたんです。
與座:
これ私、放送見ました。面白かった。ネットでも話題になってましたよね。
読まないからこそありがたい
西村:
『金閣寺』ってどうやって読んでいいかあんまりわからないんだよな。
與座:
読んだことないな。
古賀:
そうそう。『金閣寺』はこれ読んだら本当に味わえた。
そうそう、西村さんとは動画でも取り上げたよね。
西村:
やった、やった。
古賀:
金閣寺がね、ぜんぜん燃えないんです。
燃えそう、燃えそう、って思うんだけど全然燃えない(笑)
西村:
最後やっと燃えますよね。
古賀:
一番最後で、やっとね。スタッフロールが出始めたあたりで(笑)
與座:
へー(笑)
西村:
その人の生い立ちみたいなとこから始まるから。
古賀:
あとさ、すごく重要なシーンで菓子パン食べるんだよね。でもその菓子パンが何なのか全然教えてくれないの。書いてない。
あんパンとメロンパンじゃ情景が全然変わってくるのに(笑)
石川:
テキストを読むと何パンかわかる?
古賀:
いや! さすがにそこまでは。
『金閣寺』回の講師は平野啓一郎さんで、テキストは独自の読みも普遍的な読まれ方もわかる。すごくわかりやすかったです。
石川:
楽しみ方としては、まずこのテキストを読んで、そのあと元の本は読むんですか?
古賀:
わっはっは。読まないっすね(笑)。『野火』とか『金閣寺』は本を読んだあと、もっと知りたくてテキストを買った順番だったんだけど、テキストから買って、元の本は読まないことのほうがお恥ずかしながら多い!
石川:
これ読んで、もう「わかった」って思うんだ。
西村:
新約聖書とかあるから。読まないですよ。
古賀:
特に哲学書とか……。だからこそありがたいんです。
西村:
ハイデガーの『存在と時間』とか、きっついですよ。読んでて意味わかんなくなるから。
古賀:
かわりにテキストでなんとかさせてもらう(笑)。
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あらためて「ここ」のよさ
西村:
確かにここはすごくいいっすね。
古賀:
ここにひかれて、とりあえずテキストばっかり買い集めてるみたいなところあるんですよね……実はテキストも読みきれてない。
毎月楽しみです。今月のここは、どんなかな〜って。
西村:
月1回?
じゃあ毎月楽しみがあるんだ。
與座:
基本はテレビ見てから買うんですか?
古賀:
テレビもそれほど見てないんですよ。とにかくテキストだけ好きっていう。テレビもでも観るとびっくりするほどおもしろいですよね。毎回新鮮に驚く。
西村:
テレビ見るといいですよ。
古賀:
とにかく、ここのファンっていうことを今日は言いたかったんです。大満足しました!
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