辞書から消えた言葉が載ってる本
んちゅ:タイトルのとおりで、三省堂国語辞典から消えた言葉が載っている辞典です。ちょうど1,000語入ってるんですって。
何版までは載ってて、何版で消えたかというデータまでわかるようになってます。
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石井:(表紙を見て)「MD」も消えたんだ。
んちゅ:そう。「MD」という言葉自体はあるじゃないですか。でも、三省堂が何らかの理由で掲載をやめた。
載ってた言葉が消える理由は色々あるんですけれど、単に使われなくなったから消すという単純な話ではなくて。
もの自体が下火になったとか需要が減ったとか、あと編集方針が変わってそれにそぐわないから消されたとか。別の見出しに吸収されたというパターンもあります。
石井:独立の項目じゃなくなったと。
んちゅ:そうです。ある語の用例として載っていたものが独立することがあるんですけど、その逆も然りで別の項目の用例に吸収された、というのもあるらしくて。もうとにかくたくさん載っています。
石井:あ、「ホームビデオ」もなくなってるじゃん。
聞いたことのない言葉もある
んちゅ:これ、そもそも知らない言葉も多くて。
「そんな言葉があったんだ」ってなるんです。
石井:そっちなんですね。なくなったことを懐かしむんじゃなくて、「そんなのあったんだ」という。
んちゅ:そうなんですよ。たとえば「ドン・キホーテ」が載っているんですけど。比喩としての項目なんですよ。
石井:「無茶な戦いをする人」みたいな。
んちゅ:そうです。正義感が強い性格の人という。「かぐや姫」もあって、これもお話自体じゃなくて、「長い間、子供がいない夫婦に生まれた初めての、しかも女の子」という、めっちゃ限定的な比喩として。でもどっちもなくなった。
これは方針が変わったパターンで、元々(物語そのものではなく)「比喩的な用法だけを扱う」という方針はあったらしいんですけど、それも扱わなくなった。
石井:上のメーターはどの版に載っていたかを表しているんですか?
んちゅ:そうですそうです。「ここからこの版の間に載っていた」と。
これは「小言(こごと)」という意味の「カス」。使わないですよね。
石井:知らないな。
んちゅ:知らない。でも、けっこう長い期間載っていた。
石川:今「カス」を引くと、悪口の「カス」はあるんでしょうね。
んちゅ:あるんだと思います。この俗語の用法がなくなったということですね。
私は実は国語辞典が好きなので、よく色んな版を比べてみるんです。版を比べて初めてなくなっていることに気づくんですけど、それを比べなくても、この本があればわかるっていう。
石井:これ、出版社はどこなんですか?
んちゅ:三省堂から出てるオフィシャルな本です。
石川:オフィシャルということは、掲載をやめた理由も公式見解がわかるんですね。推測じゃなくて。
んちゅ:そうです。ちゃんと「こういう方針が変わったからなくなったんだよ」というのが。
石井:沖縄に「天使のはね」ってせんべいがあって、それを作る工程で省いた端っこの方を詰めて売っているじゃないですか(※)。そういう感じですよね。
※商品名「みすてないで」。過去記事で紹介しています。
石川:ははは
次々と気になる言葉を見つけてしまう一同
石井:「ヒコポンデリー」っていうのもあったんだ。……なんだろう?
んちゅ:『「ヒポコンデリー」のあやまり』って書いてありますね。
「これは誤りである」ということだけを伝えるだけの項目。
石井:言い間違える人がいっぱいいたから載ってたっていうことか。
んちゅ:病気不安症、心気症です。医療系の言葉でした。
「必敗」もあるんですけど、これは「必勝」の項目に吸収された。
石井:わざわざ1項目を設けることはないと。
んちゅ:「必勝」の方が圧倒的に使うんで。
言葉としては存在するけれど、「これの対義語ですよ」という扱いに吸収されていなくなった。
「ペレストロイカ」は歴史を動かしたけれど、編集の方針で消えた。
石川:リアルタイムじゃなくなったから。
んちゅ:あと、これ知らなかったんですけど、「血液銀行」。
石井:この間、『ゲゲゲの鬼太郎』の映画が血液銀行の話でした。
んちゅ:自分の血を預けておいて、手術を受ける時に提供してもらうという。その制度自体が薄れて、これも消えました。
かっこいいのもありますよ。「また」という項目に、「またという日」。「またいつか会える日」「またという日があるぜ」。
伊藤:かっこいい。なんで消されたんですか。
石井:ハッとしちゃったんじゃないですか。編集の人が「なんでこれあったんだ」って(笑)
挿絵もいい
んちゅ:挿絵もいいんです。これは「三十面下げる(さんじゅうづらさげる)」。
石井:「30にもなって……」みたいな言葉ですね。
んちゅ:「三十面下げる」「四十面下げる」「五十面下げる」の項目が同時に消えているらしくて。
30才から50才の間は「面下げる」と言われることがあるんだなと。
石川:国語辞典にも載ってそうなタッチの絵だけど、この本のための描き下ろしの挿絵なんですね。
んちゅ:そうですね。
「サンドイッチマン」も絵がついてる。
石井:表記が変わったんですね。かつて「サンドウイッチマン」だったのが「サンドイッチマン」に。
んちゅ:一時期消えてたのが、表記が変わって復活したんです。いまでも見かけるから、という理由で。
伊藤:2007年、お笑いコンビが優勝、というサブテキストがしれっと入っていますね。
んちゅ:赤外線はあるけれど、「赤外線通信」がなくなっている。
石川:ほんの一瞬しか載ってなかったんだ。
んちゅ:「赤外線」という項目の中に「赤外線通信」という用例が一瞬載って、一瞬で消えた。
石井:これ超かっこよくないですか。「税メン」。税務署の役人だって。
今言ったら流行らないですかね。
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パッと適当に開いて楽しめる本
石井:消えた語が全部載ってるわけではない?
んちゅ:完全に全部ではないですね。
時代性がある語や語釈が興味深い語をピックアップしているんだと思います。きりがないですから。
石井:もっと細かい理由で、小さい言葉が消されていたりするはずですしね。
伊藤:全記録があったりするのかしら。三省堂は持ってるでしょうけど。
石川:データベースで管理しているんでしょうね。
石井:昔は紙のカードに書いてあってね。それを打ち込む人がいたりして。
んちゅ
見坊(けんぼう)カードですね。用例採取をして。
伊藤:それが流出したら大変なことです。
石井:忘れちゃいけないものが「けんぼう(健忘)カード」って、なんか嫌な名前(笑)
んちゅ:ははは。見坊(けんぼう)さんのカードです。
石井:「卵麺(らんめん)」。卵入りのそうめんですって。
伊藤:そんなのあったんだ。
んちゅ:「ラーメンと言わずにらんめんとお呼びください」のコピーで登場したらしいです。エースコックから。
「ラーメン」と間違いやすいから消えたのかな。
石井:「リーブ」って恋人って意味なんだ。喫茶店によくありますよね、「リーブ」。
「チェッコ」は結構長い期間載ってたんだ。
んちゅ:はい、「チェッコ」で、これは「チェコ」を参照するようにしていたんですけど、それが「チェコ」の項目に統合された。
こういう感じで、ずっと見ちゃう系の本です。
んちゅ:やっぱり古い版のが載っている最初の方が、マジで知らないことが多いですね。
石井:わからないのが多いですよね。
んちゅ:新しい版に近づくにつれて、聞いたことはある言葉になります。
「スッチー」系もありますし。「エログロ」もなくなっているんだ。へえ。みたいな。
面白いですよ。
石井:いわゆる「トイレ本」というか、パッと開いてそのページを3分くらい読む、というので全然楽しめる本ですよね。
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