唐沢:
100%ORANGEさんっていう、めっちゃ人気の2人組イラストレーターさんの本です。新潮文庫のパンダいるじゃないですか。
安藤:
Yonda?のパンダだ。
唐沢:
それです!
そのイラストのほかに、絵本なんかもたくさん手がけてらっしゃるんですけど、この本はお2人の童心が溢れすぎてて、いろんな人が、それはもうベタボレしちゃうような本なんです。
石川:
童心が。
唐沢:
初めて知ったのが、新聞の書評なんです。 読売の日曜版の、いつも哲学書とかを紹介してるような。
安藤:
はいはい、あるある。
唐沢:
あんまり絵本とかはなくて、かための本が中心のコーナーなんですけど、ある日、この「ひとりごと絵本」が急に取り上げられてたんです。しかも「なんか可愛すぎる」「大人でこんなの描けるの信じられない」みたいな紹介のされ方をしてて。
私が中学生の時にその書評を見たんですけど、買って読んで衝撃を受けました。就職活動の時にエントリーシートの「好きな本」の項目に全部「ひとりごと絵本」って書いて……
安藤:
何がそんなにいいんですか。
唐沢:
絵と文のマッチとミスマッチがすごい好きで。
私が1番好きなのは、この「斜めにして持ち帰った斜めカレーを食べています」っていうの。
石川:
はいはいはいはい。
唐沢:
絵と文章でほんと取り留めもないことが描いてある。ほんと可愛くって。
佐伯:
カラーページもあるんですね。
唐沢:
そうなんです。
もうひとつ私が感銘を受けたのは、この
唐沢:
『部屋にコオロギが侵入していたので、ティッシュでふんわり包んで外に逃がした。僕はふんわり名人。』っていうのにすごい感銘を受けて、これを読んで以来、私もそのふんわり名人になりたい。
石川:
ははは。
唐沢:
子供向けの絵本だと「コオロギさん良かったね」とか「助けてあげたよ」なんですけど、これですよ。「僕はふんわり名人」という自分の名人芸を讃えているのがすごい。
石川:
コオロギ不在ですもんね。
唐沢:
家に虫が家に入ってきても、これを思い出して、ふんわり名人やってます。
あと、これも私すごい好きなんですけど
童心に溢れてるようで、大人が書いてるってわかるやつも好きで。
安藤:
ギャップがありますね。可愛い。
唐沢:
子供のふりして書いてるわけじゃなくて、大人がほんとに思ってることを書いてるんだって思って。
童心にあふれてはいるけど、大人に読んでもらいたいというか、子供だと良さがわからないんじゃないかっていう気はします。
石川:
確かに。
こうなりたい
安藤:
でもさ、ひとりごとって、誰かに言うわけじゃないじゃないですか。
唐沢:
そうです。
安藤:
押し付けてもないし、意見でもないんですよね。
石川:
言ってそこで消えていくものですもんね。
唐沢:
TwitterとかXがそうだっていわれてますけど、結局誰かに見てほしかったり、なんなら楽しませたいとか、面白いと思われたいみたいな、ちょっと入ってるじゃないですか。
安藤:
そうそうそうそう、Xのあるべき姿だよね、これは。
佐伯:
「つぶやき」ですよね。
安藤:
こういうツイートがしたいな。
唐沢:
ほんとにしたいんですけど、でもマネできないんですよ。うん、ほんと。
安藤:
なんで僕らはこういうつぶやきができなくなっちゃったんだろう。
石川:
「いいね」とかね、あるから。
安藤:
この人たちもさ、出版するからには人に読まれる想定で書いてるはずなのにね。こうなりたいな。
現実のはひとりごとは「暑い」とか
安藤:
Xがひとりごとじゃないとして、人のひとりごとってあんま聞かないよね。
うちは猫飼ってるから猫に話しかけちゃうけど、家族がいたら言わないです。
石川:
人前ではあんまり言わないですよね。
安藤:
そう。だからそれを見ちゃってる感じがしていい。
唐沢:
安藤さん、こんなかわいいことを猫に言ってるんですか?
安藤:
こんないいものじゃないね。「暑い」とか……。
石川:
「やべっ」とか
安藤:
そうそうそうそう。
石川:
そう思うとこの本に書いてあることって、口に出すひとりごとっていうより、「ふと思うけど、別に言いはしない」ことかもしれないですよね。
思ってすぐ消えていくものみたいな。
安藤:
そういう風になんないかな。Xが。
石川:
そしたらね、お金払って見ますね。
安藤:
見る。これだよね。うん。
装丁もよい
唐沢:
装丁もすごい凝ってるんです。ページがまず3色で、中もこう色がついてたり、銀色の顔料使ってたりとかして。
背中もこんな感じ。
石川:
すご。
佐伯:
紐がピンクと青でかわいい。
石川:
これ剥がれたわけじゃなくて、もともとこうなんですか?
唐沢:
そうです。
この本を3年に1回くらい読み返すんですが、やっぱ内容を忘れてるんですよ。
安藤:
何かためになるわけじゃないからね。
唐沢:
瞬時に忘れる。
安藤:
でもさ、本ってさ、知識だと「覚えといて誰かに言ってやろう」とかあるじゃん。
この本は「この文章よかったからちょっと覚えとこう」って。それないもん。
そこに逆に純粋な良さがある気がするな。
石川:
これを知ってしまったから、今日からXやる時に意識してしまいますね。ああいうことが書けてるかな、っていう。
安藤:
自分のためのものなんだぞ、って。
石川:
「絵を入れた方がいいかな?」
唐沢:
結局ウケを狙おうとしている(笑)
私は東京に引っ越してきてこの本を買い直しました。贈り物にもおすすめの本です。みなさんもぜひ。
絶版のようなので古書です
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