読んだよ 2024年5月15日

童心が溢れすぎている「ひとりごと絵本」

デイリーポータルZのライター、関係者が愛読している本を語ります。

今回はライターの唐沢さん。レコメンドは「ひとりごと絵本」(リトル・モア)

聞き手は安藤、佐伯、石川です。

では唐沢さん、お願いします。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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唐沢:
100%ORANGEさんっていう、めっちゃ人気の2人組イラストレーターさんの本です。新潮文庫のパンダいるじゃないですか。

安藤:
Yonda?のパンダだ。

唐沢:
それです!
そのイラストのほかに、絵本なんかもたくさん手がけてらっしゃるんですけど、この本はお2人の童心が溢れすぎてて、いろんな人が、それはもうベタボレしちゃうような本なんです。

石川:
童心が。

唐沢:
初めて知ったのが、新聞の書評なんです。 読売の日曜版の、いつも哲学書とかを紹介してるような。

安藤:
はいはい、あるある。

唐沢:
あんまり絵本とかはなくて、かための本が中心のコーナーなんですけど、ある日、この「ひとりごと絵本」が急に取り上げられてたんです。しかも「なんか可愛すぎる」「大人でこんなの描けるの信じられない」みたいな紹介のされ方をしてて。
私が中学生の時にその書評を見たんですけど、買って読んで衝撃を受けました。就職活動の時にエントリーシートの「好きな本」の項目に全部「ひとりごと絵本」って書いて……

安藤:
何がそんなにいいんですか。

唐沢:
絵と文のマッチとミスマッチがすごい好きで。
私が1番好きなのは、この「斜めにして持ち帰った斜めカレーを食べています」っていうの。

DSC01776.JPG
「斜めカレー」の話題と、ハートまみれの服がナイスマッチ
「ひとりごと絵本」100%ORANGE (著) リトル・モア より引用。(以下、引用は全て同書)

石川:
はいはいはいはい。

唐沢:
絵と文章でほんと取り留めもないことが描いてある。ほんと可愛くって。

佐伯:
カラーページもあるんですね。

唐沢:
そうなんです。
もうひとつ私が感銘を受けたのは、この

DSC01779.JPG
「ふんわり名人」の絵はこれしかあり得ないほどのウルトラマッチ。

唐沢:
『部屋にコオロギが侵入していたので、ティッシュでふんわり包んで外に逃がした。僕はふんわり名人。』っていうのにすごい感銘を受けて、これを読んで以来、私もそのふんわり名人になりたい。

石川:
ははは。

唐沢:
子供向けの絵本だと「コオロギさん良かったね」とか「助けてあげたよ」なんですけど、これですよ。「僕はふんわり名人」という自分の名人芸を讃えているのがすごい。

石川:
コオロギ不在ですもんね。

唐沢:
家に虫が家に入ってきても、これを思い出して、ふんわり名人やってます。

あと、これも私すごい好きなんですけど

童心満点のイラストで伝える「胸毛が濃くなってきている。」のミスマッチ

童心に溢れてるようで、大人が書いてるってわかるやつも好きで。

安藤:
ギャップがありますね。可愛い。

唐沢:
子供のふりして書いてるわけじゃなくて、大人がほんとに思ってることを書いてるんだって思って。

童心にあふれてはいるけど、大人に読んでもらいたいというか、子供だと良さがわからないんじゃないかっていう気はします。

石川:
確かに。

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こうなりたい

安藤:
でもさ、ひとりごとって、誰かに言うわけじゃないじゃないですか。

唐沢:
そうです。

安藤:
押し付けてもないし、意見でもないんですよね。

石川:
言ってそこで消えていくものですもんね。

唐沢:
TwitterとかXがそうだっていわれてますけど、結局誰かに見てほしかったり、なんなら楽しませたいとか、面白いと思われたいみたいな、ちょっと入ってるじゃないですか。

安藤:
そうそうそうそう、Xのあるべき姿だよね、これは。

佐伯:
「つぶやき」ですよね。

安藤:
 こういうツイートがしたいな。

唐沢:
ほんとにしたいんですけど、でもマネできないんですよ。うん、ほんと。

安藤:
なんで僕らはこういうつぶやきができなくなっちゃったんだろう。

石川:
「いいね」とかね、あるから。

安藤:
この人たちもさ、出版するからには人に読まれる想定で書いてるはずなのにね。こうなりたいな。

 

 

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現実のはひとりごとは「暑い」とか

安藤:
Xがひとりごとじゃないとして、人のひとりごとってあんま聞かないよね。
うちは猫飼ってるから猫に話しかけちゃうけど、家族がいたら言わないです。

石川:
人前ではあんまり言わないですよね。

安藤:
そう。だからそれを見ちゃってる感じがしていい。

唐沢:
安藤さん、こんなかわいいことを猫に言ってるんですか?

安藤:
こんないいものじゃないね。「暑い」とか……。

石川:
「やべっ」とか

安藤:
そうそうそうそう。

石川:
そう思うとこの本に書いてあることって、口に出すひとりごとっていうより、「ふと思うけど、別に言いはしない」ことかもしれないですよね。
思ってすぐ消えていくものみたいな。

安藤:
そういう風になんないかな。Xが。

石川:
そしたらね、お金払って見ますね。

安藤:
見る。これだよね。うん。

 

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装丁もよい

唐沢:
装丁もすごい凝ってるんです。ページがまず3色で、中もこう色がついてたり、銀色の顔料使ってたりとかして。

背中もこんな感じ。

三色!!

石川:
すご。

佐伯:
紐がピンクと青でかわいい。

石川:
これ剥がれたわけじゃなくて、もともとこうなんですか?

唐沢:
そうです。
この本を3年に1回くらい読み返すんですが、やっぱ内容を忘れてるんですよ。

安藤:
何かためになるわけじゃないからね。

唐沢:
瞬時に忘れる。

安藤:
でもさ、本ってさ、知識だと「覚えといて誰かに言ってやろう」とかあるじゃん。
この本は「この文章よかったからちょっと覚えとこう」って。それないもん。

そこに逆に純粋な良さがある気がするな。

石川:
これを知ってしまったから、今日からXやる時に意識してしまいますね。ああいうことが書けてるかな、っていう。

安藤:
自分のためのものなんだぞ、って。

石川:
「絵を入れた方がいいかな?」

唐沢:
結局ウケを狙おうとしている(笑)

私は東京に引っ越してきてこの本を買い直しました。贈り物にもおすすめの本です。みなさんもぜひ。

絶版のようなので古書です

ひとりごと絵本

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