まったく新しい試み。それが「弁当将棋」
ナオ:
先日、知り合いが学生時代の思い出話を聞かせてくれまして、それが、とにかくお金がなかったから、友達とふたりで1個の幕の内弁当を買って食べていたという話だったんです。
パリ:
それはなかなか大変そう。
ナオ:
浮いたお金でレコードとか本を買っていたっていう。それで幕の内弁当をふたりで食べていて、どっちがどのおかずを取るかっていうのでよくケンカしていたと。
パリ:
それは絶対揉めますよね!
ナオ:
ね。で、その話を聞いていて、パリッコさんとあえてひとつのお弁当を買って、ふたりで順番に食べたいものを取っていきながら飲んだら楽しいかもと思ったんです。
パリ:
そういうきっかけがあったんですね。
ナオ:
それで今回は、私が東京へ行くタイミングで、デパ地下でお弁当を買い、公園で「弁当将棋」をしてみようと。
パリ:
久々にデパ地下を見ていて思ったんですが、デパ地下って楽しすぎますね。
ナオ:
普通に食べたいものが色々あって、誘惑に負けそうでした。
パリ:
実際にあれこれ見てみたところ、弁当将棋をするならば、四角い箱に仕切りの入ったようなお弁当がいいっていう話になったんですよね。
ナオ:
そうそう。マス目が多ければ多いほど本当の将棋みたいだし。探してみると、ほぼ正方形で、9マスに分かれて惣菜がいろいろ入ったお弁当がけっこうあった。
パリ:
どれにしようか迷うほどでした。最終的に、サラダとか前菜っぽいのがたくさん入ったものと、もう少しガツンとボリュームのあるやつと、2種類を選びました。
ナオ:
お弁当を確保して、それをつまみに飲む用のお酒も用意して近くの公園に移動し、いよいよ弁当将棋開局!
第一局「総菜&サラダの弁当」
ナオ:
まずはおしゃれな惣菜とサラダのお弁当ですね。
パリ:
一局目にちょうど良さそうです。それでは、
ナオ:
そしてもちろん、乾杯!
パリ:
乾杯!
ナオ:
じゃあ、先手後手を決めましょう。って、将棋だとどうやって決めるのかな?
パリ:
今調べてみたら「振り駒」っていう方法があるみたいですが、要するに運次第のようなので、まぁじゃんけんでいいんじゃないすかね。
ナオ:
ですね。
パリ:
おっ。ナオさんの勝ち。どうします? お弁当はふたつで、それぞれ9品ずつだから、一曲目は先手が5品で後手が4品。二局目は先手後手が入れ替わって、最終的に9品ずつ食べられる、という形になるかと思いますが。もちろんここで後手を選んでもいいわけで。
ナオ:
あー、いや、先手でいきますわ。勢いで。じゃあこの真ん中でいこうかな。うん。いや、ちょっと待ってちょっと待って。えー!? このサーモンの下のスパゲティみたいなのもうまそうだな!
パリ:
はは。騒がしいな!
ナオ:
決めました。
※取り分けには専用の取り箸を使用しています
ナオ:
うおー、もうこれで決まった感あるよ! これ、ローストビーフの下にもなんかあるよ。あるよー!
パリ:
確かにメインが取られた感じはある。よし、次僕ですね。ナオさんの今の感じから読んで、たぶん早めには取られない気がするんだけど、もし取られたら悔しいなっていうのはあるんですよ。それとメイン系の生ハムで迷ってる……いや、いこう。これ!
ナオ:
あ、キッシュみたいなやつ。
パリ:
こいつばかりは死守したかったんです。ただ、ここで生ハムいかれたら悔しいんだよな〜。
ナオ:
あ、言ってしまいましたね。悔しがらせたいっていう理由だけで生ハムいこうかな。
パリ:
はは。ひどい!
ナオ:
いやでも、パリッコさんと僕は好みがけっこうハッキリわかれるんですよね。だから、たぶんぶつからないかも。僕はこの、きのこのやついきます。
パリ:
いやいや、それぶつかってる! めちゃくちゃ美味しそうだもん!
ナオ:
あ、そうですかー! いやー! 申し訳ない。
パリ:
マジかー。きのこめっちゃうまそうだなぁ。いきたかったなー! まぁでも、そしたら生ハムですわ。
ナオ:
私はね、ここで、これいくね。マッシュポテトにエビがのってるのかな? これいきますよ。
パリ:
なんか、ボリューム感あるの取られてるな……。ただしここで、幸運なことにサーモンが取れる! パスタもついてくるし!
ナオ:
あー! それもうらやましいんだよなー! パリッコさんのもいい感じだなー!
ナオ:
こうなると、うーん、イカですかねー!
パリ:
イカかー! イカ持ってかれたか! じゃあ、このジュレの乗ったやついこうかな! 実はなんだかよくわからないから、あまり取ろうとは思ってなかったんです。だけど、ピクルスはちょっと量が多いように見えて。
ナオ:
え! 僕はピクルス欲しい派なんですよ。じゃあ最後にもらって。
ナオ:
あれ? この試合、僕の勝ちですよね?
パリ:
ははは。いやいや、おれ負けてない! むしろ色味では勝ってますよ! つーかこれ、勝敗どうやって決めるんだろう。まぁ、見た目はちょっとナオさんに分があることは認めるけど……。
終局〜実食タイム
ナオ:
じゃあ、食べてみましょうか!
パリ:
いただきます! このジュレどういう味なんだろう……あ、ちょっと酸っぱい系だ。トマトも甘酸っぱいのにそこに酸っぱいジュレ? と思いきや、ありだわ。爽やかで。
ナオ:
あ、必ずしも取った順から食べるわけではないんですね。じゃあ私も……あ、ピクルスうまい!
パリ:
なによりです。
ナオ:
潤沢にあるピクルスを残しておいて、ローストビーフいってみようかな。あ! 美味しいなー! しかもこれ、下に玉ねぎ炒めたのが敷いてある。得した!
パリ:
はは。どっちかって言うと、普段の僕が食べそうなものがナオさんのほうに行った感じあるんだよな〜。不思議。
ナオ:
これ、いつもだったらどのおかずも半分ずつで分けたりするじゃないですか。それができないのが、勝負の世界ですよね。
パリ:
感想が共有できない。
ナオ:
こんなにうまいのになー! っていう。でも、そんなに悔しくはないですね。
パリ:
そっちのも食べたかった気持ちはあるけど、こっちにもうまいものがあるし。
ナオ:
でもさすがに、このきのこはどうですか?
パリ:
それはさすがに悔しい。
ナオ:
あ、これ、いちばんうまい!
パリ:
ははは。いやいや、キッシュうまい! うまー! これがいちばんうまいやつだ。
ナオ:
キッシュうらやましいんだよなー! いや、でもこのマッシュポテトも美味しいなー! エビももちろんだけど、マッシュポテト自体が美味しい。
パリ:
というか、どれ食べても美味しいですね。かなり満足です。
ナオ:
第一局、引き分けですかね。
パリ:
ですね。でもちょっと、キノコがうらやましかった。
ナオ:
あれは美味しかった。キッシュがうらやましかったな。
パリ:
キッシュあげたかったなー。
ナオ:
勝負の世界は残酷ですね
第二局「松華堂弁当」
パリ:
こんなにおかず盛りだくさんなのに、めちゃくちゃお手頃な弁当ですね!
ナオ:
それこそ、ひとりだと持て余すくらいの。こっちはもう、ひとつ判断ミスると取り返しつかなそうですよね。
パリ:
うんうん。真剣勝負度が上がった。うまく事を運べば相当満足できるし、逆にごはんものばっかり食べることにもなりかねない。
ナオ:
そして今回はパリッコさんからなんだった。
パリ:
そうか! やった。
パリ:
う〜ん、難しいなこれ。超欲しいマスが2つあるんですよ。それを両方取れたら完璧。そのためにはえ〜と……。よし、ちょっと賭けに出ますわ!
ナオ:
ははは! うお〜、許せねぇよこれは。もう辞めたいくらいですもん。
パリ:
はは。やっぱこのマスは取り合いですよね。
ナオ:
いやでもまだ負けてない! どっちかな……あそこいっても、うまくいけばあそこもいけるかもしれないし……。じゃあ私は、「からあげ」のマスいきます。ひじきも欲しいし。
パリ:
よしっ!
ナオ:
え?
パリ:
いや実は、僕がいちばん食べたかったのが「鶏の照り焼き」だったんですよ。自分の2手目まで残ってくれる可能性にかけて、最初にセンターいったという。
ナオ:
なるほどね……策士ですね。いやでも、いいいい。私はこっちのほうが食べたかったし。「ハンバーグ」。
パリ:
ははは。そりゃこうなるよな〜。
ナオ:
パリッコさんが1つ多いんだから、ヘタするとごはんが3つという可能性もあるわけだ。
パリ:
いやでも、次が僕で、その次がナオさんで……あ、僕が煮物を取ればあとはごはん勝負になるわけだ。むしろナオさんにヒントをもらいましたよ。
ナオ:
しまった!
パリ:
よ〜しよしよし。いい流れだぞ。
ナオ:
ここからごはん勝負に突入ですね。
パリ:
あの、ずっと気になってたんですけど、ゆかりごはんの上にかかってるこれ、なんですかね……?
ナオ:
はは。ビビッドな黄緑色の。
パリ:
駄菓子とかでした見たことない色……。
ナオ:
ちょっとこわさありますね。じゃあ、私は「おこわ」いきます。
パリ:
はは! だよね。となれば僕は、「赤飯」いきますよ。
ナオ:
まぁね。
パリ:
うわ、これもう見えた。きっとあれがこっちに押しつけられるよ!
ナオ:
はは。ここは当然「いなり寿司」もらいます。
パリ:
やっぱり! 謎の黄緑色がこっちに!
ナオ:
いや、予想以上にいいぞこれ。もう、道ゆく人に「どっちが食べたいですか?」って聞いて回りたいもん。
パリ:
いや、さすがにこっちでしょう! ナオさんの、まとまりはあるけど、センターになにか1品足りない感じがするもん。
ナオ:
はは。確かに。パリッコさんに取られた鮭があればなー。鮭だけどうにかなりませんかね?
パリ:
無理です。
終局〜実食タイム
ナオ:
うま! お弁当の冷えたからあげ、好きなんだよな〜。そこにハンバーグのソースをつけるのもいいな。
パリ:
僕のもいいつまみ弁ですよ。あれ? ナオさん見て! 自分で取ってコロッケだと思ってたもの、意外にもハムカツ! これは嬉しい。
ナオ:
おこわ、うまいわー。また、いなり寿司っていうのも、ふだん意外と食べないじゃないですか? こうやってひとつだけつまむの、すごくいいです。
パリ:
わかる。3個くらいパックで売ってることが多いですもんね。あ、そういえば黄緑色のなにかがのったゆかりごはん、食べてみるか。
ナオ:
どうです?
パリ:
……カリカリしてる。梅、なのかな? いやこれ、うまいですよ! さっき押しつけられたなんて言っちゃったけど、この皿のなかでここにしか「酸味」がないから、いいアクセント。鶏の照り焼きの甘辛い味と合うな〜。
ナオ:
失礼ながら、照り焼きはあんまりいらなかったので、パリッコさんのもとに届いてよかった。
パリ:
まじですか! 照り焼き取られたらどうしようかと、正直気が気じゃなかった。
ナオ:
読みが当たったというわけですね。だって、私の番まで残っていたら、まずは必ず鮭のマスいってましたもん。
パリ:
でしょ? するとガラッと局面が変わってたんだろうな。
ナオ:
たとえば、先手後手が逆で、私が最初に鮭いってたとしたら?
パリ:
もちろん照り焼きですよ。
ナオ:
じゃあ、ハンバーグ。
パリ:
そしたら、からあげ。
ナオ:
煮物。
パリ:
おこわゲット!
ナオ:
赤飯!
パリ:
結果的に美味しかったけど、黄緑色がこわかったから、いなり寿司でしょうね。
ナオ:
で、私がゆかりごはん、と。
パリ:
ぜんっぜん変わりますね!
ナオ:
というふうに、対局をあとからふり返る楽しさもあるという。
パリ:
はは。飲み食いしながらだらだらね。確かに楽しいなこれは。
ナオ:
最終的に大満足ですよ。パリッコさんはどうでした?
パリ:
いやもう、これ以上求めるものがないくらいです。うまかったな〜。
ナオ:
一片の悔いもない食事でしたよ。
パリ:
うん。「食いすぎた〜……」みたいな過不足もなくね。
ナオ:
けっきょく、好みに違いがあるから、割とそれぞれが好きなものを取れてるんですよね。なんかもう、我々これから、常にひとつの弁当を分けて食べればいいんじゃないですかね。
パリ:
はは! ふたりとも、もうだいぶ食が細いから、普通の弁当ひとつずつがちょっと多かったりするじゃないですか。でも、前菜弁当と普通の弁当ひとつずつだと、量的にもちょうどいい。
ナオ:
そして、弁当将棋をやるならば、きっちりとマス目に分かれているものを選ぶのがポイントかもしれませんね。それぞれのマスが独立した世界になってるから。
パリ:
ね。またいろんなマス弁当でやりましょう!