布団から出るぞ
Web記事や動画には、山手線一周や100kmハイクなど普通なら電車や車で移動する距離をあえて歩く企画がたくさんある。
私が街歩きをするようになったきっかけもそのひとつ。熱海から新宿を目指す企画だった。
過酷な企画はチャレンジそのものに注目しがちだ。
しかしやってみると、実は魅力的な要素もあることがわかってきた。ひとつの趣味として楽しむ人が増えるといいなと、歩き旅初心者ながら思っている。
「布団から一歩も出たくない」でGoogle検索をかけたら、約 5,240,000 件ものページが出てきた。
多くの人が「布団から一歩も出たくない」とわめいている。私もそのひとりである。
しかし「あんよがじょうず」と褒められて得意げになったり、歩みを進めるたび喜びを噛み締めた日々が我々にもあったはずだ。
そんな歩くことの楽しさや嬉しさを、街から街へ35kmから100kmほど歩いたら思い出したので、その魅力を説明したい。
本やアニメの影響で冒険に憧れた子供時代を過ごした人も多いだろう。
幼い頃の私は、日常と非日常がシームレスにつながっている物語が好きで「ふしぎの国のアリス」や「となりのトトロ」に憧れていたし、ファンタジーの世界への訪問を夢見ていた。
それが街なかを歩くことで、子供の頃には叶わなかった物語のワンシーンのような体験ができるのだ。
幼い頃はファンタジーの世界への訪問を夢見ていたし、なんなら今も世界のどこかに”入り口”がある可能性を捨てきれていない。
懐中電灯やヘッドライトで道を照らして歩くこと自体が非日常。
低糖質ダイエットを実行していても、長距離を歩く際には解禁だ。好きなものを好きなだけ食べる。
歩いているあいだ常にカロリーを消費するため、エネルギー源として炭水化物も必須。普段より多めに食べないとエネルギー切れになってしまうらしい。
安全に歩ききるためである。体のために食べまくろう。
普通の旅行なら食べ過ぎを心配するが、そんな必要はない。最高。
観光地を通るルートを組めば、ご当地グルメの食べ歩きができるぞ。
歩きながらの暗記は効率がよい。そう気づいたのは、コメディユニットを組んでいる友人と山手線沿いを歩いたとき。
この日は歩きながら、コントのセリフ合わせを行っていた。
歩いていると、常に周囲が変化する。あらゆる場所やタイミングでかけ合いを行うため、コント内容が日常動作のように脳に染み込んだのだ。
そういえば、なにかを覚えるときには体を動かしながら行うと記憶しやすいと、受験勉強漫画「ドラゴン桜」に書いてあった気がする。
大塚駅から東京駅までの距離で、うろ覚えの状態から何も考えずとも演じられるようにまでなれた。
自宅やカラオケなど特定の場所でとどまって暗記した場合、場所を変えるとセリフが抜けてしまったり、頭を切り替えるまでに時間がかかっていたので大発見である。
常に歩いているためスマホを開くタイミングがほとんどない上に、屋外という一定の緊張感がある。
サボる隙がないため、考え事をしたいときもいい。運動にもなり一石二鳥。
未経験でも始められる点もいい。
運動不足でも、「体育」の授業の成績が「1」か「2」だったとしても、そこそこ健康な人なら誰でもできる。
学生の頃の私は、走れば即バテるほど体力が無く、仮病を使って休むほど体育の授業が嫌いだった。もちろん成績もよくなかった。
ただ昔から交通費をケチるために、一時間かかる距離でも歩く傾向があった。
他に便利な移動手段があっても徒歩を選ぶ。これに共感してくれる人には特におすすめしたい。きっと楽しむ素質がある。
街なかなら、だいたいの道が舗装されていて歩きやすいし、寄り道をしても、遭難することはほぼない。
必要な装備はスポーツ・アウトドア製品を売っている場所なら揃っているから、やる気になれば装備を調達したその足で出発することも可能。
途中休憩は道中の飲食店でできるし、コンビニで飲み物や携帯食も買える。
電車や車が通っている場所ならば、体調や気分次第で途中で帰ったり、ルートを変更できるのもポイントだ。
一度長距離を歩ききると、それよりも短い距離はすべて楽観視できるようになった。
たとえば新宿駅から西新宿駅(約850m)のような、やや離れたところへの徒歩移動。平気である。
さらにこれが新宿駅から品川駅(約8.5km)でも。急に10倍になったけれど、大丈夫。
10kmはちょっとした散歩だし、20kmもちょっとした散歩だと思える。とはいっても日常で10km、20kmの距離を歩く機会はほぼない。あくまで気分的な話である。
「歩ける距離」だと分かっていると、終電を逃したときのような交通機関を使用できないとき、精神的な負担は少なく済むのだ。
Web記事や動画には、山手線一周や100kmハイクなど普通なら電車や車で移動する距離をあえて歩く企画がたくさんある。
私が街歩きをするようになったきっかけもそのひとつ。熱海から新宿を目指す企画だった。
過酷な企画はチャレンジそのものに注目しがちだ。
しかしやってみると、実は魅力的な要素もあることがわかってきた。ひとつの趣味として楽しむ人が増えるといいなと、歩き旅初心者ながら思っている。
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