馬券を買う
単勝は一着になる馬を予想する賭け方、複勝は選んだ馬が三着以内に入れば勝ちとなる賭け方。わかりやすいものだけにしたけれど、他にもいろいろな賭け方があって複雑なものほど勝った時の還元率がよいらしい。
競馬新聞はともかく、名前を出して個人で予想を掲載している人がたくさんいて驚いた。プレッシャーがすごそうだ。
ともかく、もう馬券は買ってしまったわけだから今さらあれこれ言っても仕方がない。我々は馬たちの勝負を見届けにコースへと向かった。
そしてレース開始!
ここでばんえい競馬の特徴をおさらいしておこう。
まず、なんといっても一番おもしろいのは馬たちが重たいソリを引いて競争することだ。
そして、もう一つの特徴というか、馬たちにとっての受難が、コースの途中に小さな「山」が設置されていることである。
よく、途中で投げ出さずに走り切ってくれるものだとばんばたちの従順さに感心する。しかしただ走るだけではなくて、こういう不確定要素があることがレースにいっそうの面白さを与えているのだ。
坂を駆け降りてくる馬に見惚れていたら、ここで予想していなかったことが起こった。
走り出したのだ。人間が!
人々は
「がんばってー!」
「行け!行け!」
などと口々に叫びながら馬と並走していた。
なんと自由で、爽快なのだろう。なにかと並走して叫んだことなど今までの人生でなかった気がする。軽くカルチャーショックを受けた。
二つ目の山に登る途中で、馬たちが電池が切れたみたいに突然立ち止まった。
過酷なばんえい競馬のレースではスタートからゴールまで全力疾走するのは難しいので、適当なタイミングで馬を休ませるのだそうである。
休憩が足りないと終盤でバテてしまうし、かといって止まっている時間が長過ぎても周りに遅れをとってしまう。そのへんのタイミングは馬がきめているのか騎手が決めているのかはわからないが、戦略的な行為なんである。
わかってはいても、止まった馬を見ていると「早く動いてー!」とじりじりさせられた。先のことなど考えないで、今は死ぬ気で足を動かして欲しいと思った。自分にはリーダーの資質はないなと思った。
次のレースまで1時間くらいある。
そこで、ばんばを間近に見にいくことにした。馬たちと接することができる触れ合いコーナー的なものが併設されているのである。