デジタルリマスター 2022年3月27日

知らない町でいつもどおり(デジタルリマスター)

郡山の思い出

2年前、東北を旅行した。新幹線で郡山を通り過ぎたとき、郡山かー、とぼんやり思った。降りたこともないし、たぶんこれから降りることもない(気がする)。郡山出身の人も身近にいないし、これといった名物も思いつかない。縁がない。

でも、郡山にも僕みたいなやつがいるだろう。休みの日にコンビニ、本屋、ファーストフードをぐるぐる回ってて、郊外のアパートに住んで、畳の部屋に似合わない流線型のラジカセでCD を聞いている。

そんな生活もおもしろそうだ。見知らぬ町でいつもどおりだらだらしてみよう。それが旅の趣旨です。微妙な旅ですいません。(そして郡山に住む人、気を悪くしないでください。他意はないです)

2003年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:英語教材を売る人のまねをするつもりだった

> 個人サイト webやぎの目

上野まで

上野までの京浜東北線、となりの女性が語呂合わせの暗記本を読んでいた。ちらちら覗くと内容がへんだ。
「言語領域の優先順位は」
「麻酔の作用は」
看護か薬学だろうか。しかし憶えかたは大化の改新ムシゴロシみたいなものだった。僕が入院して看護婦さんが点滴準備するときに「えーと、ムシゴロシ…」
とか言っていたらすこし怖い。いや、それがきっかけで仲良くなれるだろうか。

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語呂合わせで麻酔の作用を憶えていた人

猫みたいにうどんを食べる人

上野でいきなりおなかすいたのでうどん屋に入る。となりの男性が「もふっ、ふも、ふう」と声を出しながら食べていた。
実家で飼っていた猫も刺身をあげると声を出しながら食べていた。
うどんがおいしいのだろうか。
僕がちらっと見たら声を出すのをやめてしまった。悪いことをした。

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声が出るぐらいのうどん。上野にて。

東北線に乗る。朝の時間のせいかごはんを食べている人が多い。おにぎりを食べながらペットボトルのお茶を飲んでいる。ごはんを食べ終わるといっせいに携帯を取り出して画面を見ていた。

野木から乗ってきた女の子がまた字語呂合わせの受験勉強の本を読んでいる。今度は古文だ。

あっしが悪い(あっし=わるい))
あてだっせ、身分が高いのは(あて=身分が高い)
朝、むっつりすけべに(不明)

受験勉強なんてなんの役にも立たない、なんて言うけど、この憶え方は役に立つことを放棄しているようだ。だって、むっつりすけべだもん。10代の女子がわざわざ電車のなかでおぼえるようなことではないと思う。むっつりすけべ(すこし嬉しい)。

宇都宮、テンション高い駅弁売り

宇都宮、駅弁売りがホームを歩いていた。
「お客様は神様です!」
大きな声をだして車内に片足を入れる。でもそれ以上は入らない。
販売員のあいだで車内に入らないという取り決めがあるんだろう。片足だけ、というのはあの人のマイルールのような気がする。テンションが高いわりには車内の反応はにぶかった。

黒磯で郡山行きに乗り換え。
ボタンを押さないとドアがひらかない電車になった。取り付かれたようにボタンを押しているこどもいがいた。

少年よ、ボタンは乳首のメタファーだぜ。

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ドアの開閉ボタンにとりつかれた彼(右)。

田んぼなど平らだった車窓がでこぼこの山にの景色になってきた。

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もうすぐ郡山です。

 

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自転車でまわります

郡山の駅前にあったものは、スターバックス、タワーレコード、無印良品、そして駅前でゆずの歌をうたう二人組。ヨドバシカメラもあった。

移動してきた実感をなくすような均一な景色。まったくいつもといっしょだ。ここまでいつも通りだとは思わなかった。

自転車ももってきたので、郡山に来たということを意識せずいつもの休日の行動をクリアしてゆきたい。

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街を歩く人もかわりません。

その1 ミスド

まずは駅前のミスタードーナツに入る。休みといえばここだ。

地元きどりなので次回有効のサービス券もちゃんともらう。ただ、いつも行っているミスドよりもきれいで店員が親切だったのがうらやましかった。

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まずはドーナツ屋でひといき。

その2 立ち読み

ブックオフがあったので立ち読み。まんがが充実している。いいな、この店。うちの近所にもあればいいのに。

そとに自転車をとめてまんがを立ち読みしている男が270km離れたところから来たとは思わないだろう。
わははは。ひとり鼻息荒く立ち読みする。

ミスドもブックオフも大きくてきれい。いい街だ。

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読んでいるのは「ストッパー毒島」

その3 コンビニ

小腹がすいたのでコンビニでおにぎりを買う。せっかくなのでコンビニの前でしゃがんで食べる。

これはかなり地元度高いだろう。もう郡山とったり!みたいな気分だ(郡山市民のみなさんごめんなさい)。

そのついでにたまたま通りかかった中学生に写真を撮ってもらう。
「看板入れてね!ああ、まだまだ!おれがおにぎりかじったら撮って!」
お願いしておいてうるさいやつだと思われただろう。すまない。

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若者きどりで。

しかしこっちのコンビニは車で来る人が多いのでしゃがんでると車に轢かれそうになる。

同じことをする人は注意されたい。

その4 おかいもの

休みの日といえば友だちと誘いあってジーンズメイトで買い物と決まっている。

駅ビルにあった古着屋で帽子を試してみる。

もしかして僕に合うサイズの帽子があるような気がしたのだ(僕は頭がでかいので市販の帽子が入らない)。
しかし、というか、やはりというべきか、この町にも僕に入る帽子はなかった。

そんなところでもここは特別な場所じゃないということを認識した。

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小さいにもほどがある。すこしむっとする。

CDショップがあったので、なんとなく視聴。いちばん聴きたかったCD の視聴機が壊れていた。こういうところまでいつもどおりだ。

もう気分は郡山市民ですよ。

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あれ?うごかない。

 

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住宅街をだらだら走ってみる

すっかりどこから見ても郡山市民だが、せっかく自転車もあるのですこし離れたところにも行ってみたい。

さっきミスドでネットにつないで調べていたらこんなページを見つけた。

希望ヶ丘商店街

なぜか写真に惹かれた。見覚えのあるリアルな光景(もちろん行ったことはない)。ここに行こう。いや、ここに帰る気すらしてきた。

ここにいけばなんかある。むかし読んだSFにそんなシーンがあった気がするけどドラえもんだったかもしれない。

自転車で走ると住宅街に入った。どこにでもあるような見覚えのある町並み。中学校のときの友達とか出てきそうな家が並んでいる。ここは中村んちとか勝手に決めながら走る。

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右が中村んち、左は佐々木んち(妄想)

コンドームの自動販売機があった。むかしここで買ったっけなあ、と思ってみると意外にしっくりきて自分で信じそうになった。

へんなテンションのまま、商店街を目指します。

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思い出の自販機(妄想)

自転車で走っていて気になったもの

途中、漢字の語呂合わせの飲食店をいくつか見かけた。

こういうものって、どこにもないようで どこにでもある。どこの家でもかならず親戚にひとり、お調子者のおじさんがいるように、一定の割合で存在する。

いよいよ自分の近所にいるみたいな気分に。

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ひだりはたぶんジンライムだと思います。

ヨーカドーもあった。と思ったら同系列の違う店だった。看板の色が違うのだ(ヨーカドーは上が青だがここは緑)。 

友達の家にあそびにいったらテレビのリモコンの形が違った、というぐらい人んち感を感じる。

郡山にすこし距離を感じた一瞬である。

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人んち感あふれる看板

街角に芸術作品がおいてあった。この行為自体は本当にどこの町でもやっていて見慣れた光景だが、郡山のはすごかった。

タイトルは「歩き出す街」

かわいい。

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街じゃなくてハトだろうという作品。

さて、もうすぐ目的の商店街です。

目的地到着

自転車を20分ぐらいこぐと目的の希望ヶ丘商店街についた。目的の、と言っても来ることが目的だったので、とくにやることがない。

お盆のせいかクリーニング店、スーパーと精肉店ぐらいしかあいてなかった。

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ワイシャツのクリーニングがやすい。

着いたところで特に劇的なことはなかった。石が光ってたりもしてなかった。と思ったら、
「その自転車、おりたたみだね」
と見知らぬおじさんに言われた。

だが、「ええ」と返事をしたときにおじさんはもう通り過ぎていた。現実は地味でつまらない。

カメラを花壇のでっぱりに置いて自分の写真を撮った。花壇には蟻がたくさんいた。

日が暮れてきた。家にかえってテレビでも見るか。

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日が暮れてきた。

逃亡者気分って感じー

見知らぬ町でもまったくいつもどおりの生活ができてしまった。身分を偽って生活してるみたいで楽しかった。混んだファミレスに入って名前を告げるとき、別の名前を言うのの延長にある楽しさかもしれない。権田原です。

普通の旅行のように同行者のことを気にすることも、風呂の時間を聞くことも、宿のごはんにカニが出たらどうしようとか心配することもなく(僕はカニアレルギーです)、自由だ。

これ、大人のプチ家出かもな。と思いつつ、また各駅停車で帰ってきました。

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吉野家でばんごはん

 

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