男性モデルを使う
少年誌や青年誌のグラビアは"性"を表現しすぎだと思うんですよ(※この記事で使ってる「性」は一般的な意味でなく、異性愛の男性の性衝動が目的とするもの、くらいの意味です)。
と、担当編集の安藤さんに相談したところ「よくわかんないですけど、いいですよ」とモデルを引き受けてくれた。表現したいのが性じゃなくなったとき、グラビアアイドルは中年の男性でもよくなった。
性でないグラビアを撮ろう
さあ撮るぞ、となったところで悩む。グラビアってそもそもなんなんだろう。
グラビアのそもそもは印刷方法の1つだそうだ。雑誌の写真ページをこのグラビア印刷で行っていたので写真ページ自体のことをグラビアと呼ぶようになったとか(現在はグラビア印刷でもないらしい)。なるほど。
だけどそれだと範囲が広いのでこの記事では少年マンガ誌や青年誌において女性が出てくる写真ページのことに限定しておこう。
少年誌や青年誌のグラビアではどんなことをやっているのだろうか。カメラをかまえて気づいたが、まず被写体にポーズをとってもらわないといけない。
隠喩っぽいものがグラビアだ
いくつか撮ってみて気づいたのは何かを表現しているものがグラビアっぽいということである。
たとえばさっきの「泊まりに来た彼女が寝転がってニコニコ何かを訴えかけているような」写真はかなりグラビアっぽい。
少年誌のグラビアで何かを意味するのは「彼女」であることが多い。それが青年誌になり表現が露骨になると現れてくるが、大きな意味では「性」を表現していると言えるだろう。
小道具は表現の手助けになる
他にも小道具が出てくるとそれは何かを表していることが多い。
犬のぬいぐるみと見つめ合っていれば「彼女がワンちゃんに無邪気に話しかけていてかわいいなあ~」であったりするだろう。
小道具が彼女とか性と全く関係のないものを表現しているとどうなるのだろうか。
とある良いものをグラビアで表現してみる
グラビアで性以外を表現するにおいては、なんの感情もないものを表現してもピンと来ないことがわかってきた。
それでは「良いこと」を表現してはどうだろうか? こちらは持ち込んだ小道具を使って撮ったものだ。何を表現しているかはいったん伏せておこう。
読者の欲望といえばお正月だ
訴えかけるものがあったろうか。やはり"性"は男性の読者が求めているものである。同様に求めているものは何か?と考えて、今回表現したものは「お正月」である。
あれだけ待ち遠しく、また終わることを望まなかったお正月だ。グラビアで表現するにふさわしいものではないだろうか?
「ぼくたち男の子はお正月が大好き」そんなコピーが見えてきた。
正月グラビアの威力
どうだろうか。これが性から解放されたグラビアたちである。
被写体の安藤さんも今やグラビアモデルと言っていいだろう。ああ、お餅がうまそうだよ、安藤昌教くん、いや、安藤昌教クンだ!(グラビアでの表記イメージ)
プラケースをパカパカさせている人を撮っているときに気を抜くと(…これはなんだっけな?)とならなくもない。しかしそこは突き刺さっているはずと信じるしかない。グラビアで大事なのは作り手と読者の信頼関係だ。
欲望から離れたグラビア
なんておめでたいんだろう。よく伸びるお餅。パカパカする獅子舞。青少年が求めているものがここにある。
グラビアでお正月を表現させるのはよいとして、他にはどんな方向性があるのだろうか。たとえばであるが世間ではマスクや検温などアルコール対策が流行っているがあれを表現したグラビアはどうだろう?
お正月以外の「良いもの」はどうか
やはりグラビアは「求められているもの」を表現しなければならないことがよくわかった。
検温や消毒など、しなければいけない作業はグラビア向きではない。いいものである必要がある。たとえばこんなグラビアである。
卒業証書授与は感染対策よりかはグラビアらしく見えないだろうか。
他にも行事ではなくてちょっとした日常風景のうれしいことはどうだろうか。何においてみんながもれなくうれしいかと考えたが「あいつ、お前のこと褒めてたぜ」ではないだろうか。
過激なグラビアに挑む
わかってきた。グラビアは人の欲望を表現しているのだ。とすると、ああ、そうだ、仕方ないものだ。人の欲望は肥大化して過激化するのだ。
私達は読者のみなさまのより過激なグラビアを求める声を感じ取った。グラビアは作りて側もヒートアップするものなのだろう。
私も安藤さんも子供がいる。食わせていかなければならない。求められるならやるしかない。それが商売というものだ。過激なグラビアをやろう。これだ!
欲望を写真で表現している
グラビアはよくへんなことになっている。水でびしゃびしゃになっていたり、不自然な器具で筋トレをしていたり。これがマンガとどう関係あるのだと文句を言いながらも毎回見ている。きっちり見ている。そりゃマンガは関係ないだろう。あれは私達の欲望をのぞき見ていたのだ。
撮る側になってその気持ちが少しわかった。読者が喜んでくれるにちがいない。だからもっと! もっと躍動して! とカメラマンとしてがんばった。モデルも獅子舞を必死に待った。あれはかつての自分に届けるためにやっていたのかもしれない。
これで世の中の男性たちが性から解放されお正月に向かえば私達の試みは成功だ。グラビアアイドルが獅子舞を持ち始めるかどうかはみなさまの反応にかかっている。