まとめ
本文で、子どもの感性と一致することが嬉しいと書いたが、それはもう子どもの気持ちは分からないということを前提としている。だから子どもに聞くしかない。それは子どもだったはずの自分としてはなんとなくさみしいのだけど、メーカーの人はそんなところはとっくに通過してこどもへの好奇心を持っているのだろうと思った。
取材協力:ピープル株式会社
『(1歳の好奇心)への好奇心展 ~本当によく遊ぶおもちゃの作り方~』
2025年10月19日(日)~26日(日)
※展覧会は終了しています
そうやって試作するなかで、人気が高かったものをもとに商品化を進めた。
と一口にいうのは簡単だが、実際にはそこからもスケッチと試作を何回も繰り返し、それはそれは大変だったそうだ。スケッチは掲載できないので完成品だけを紹介すると、こういうものができた。
![]()
商品になったものは3つある。左と真ん中と右だ。このうち右の、穴が9個ほど空いているやつでいうと、試作品はこんなふうだった。
![]()
土台の部分は育苗ポットだったそうだ。 穴がいっぱい空いていて、そこにいろんなものを差し込む。これがこどもに大人気だったようだ。
自分も試作品を触らせてもらったのだが、これが絶妙に楽しい。まず感触がいい。というか1歳児にとっては感触がほぼすべてなのかもしれない。いい感じの抵抗をともなってズズズとものが入っていく。出すのも、難しすぎない。
ところで、試作品の時点では穴が30個あってそれぞれの穴も小さめだが、商品化したものでは穴が9個に減っていてそれぞれも大きくなっている。
なぜ商品化するにあたって穴を大きくして減らす必要があったのか。
まず、全体のサイズは試作品と同じくらいでよいのだそうだ。これより小さいと軽くなりすぎて、差したものを抜くときに全体が持ち上がってしまう。かつ、大きすぎてもよくない。
問題は穴の大きさだ。試作品のままだと、差すものが細くなりすぎてしまい、玩具の安全基準を満たさないのだそうだ。つまり子どもの口に入ってしまう。だから穴を大きくしないといけない。
大きさや細さは年齢によって基準が違っていて、年齢が低いほど厳しくなっている。また、細さが大丈夫でも、長いと喉をついてしまうことがあるので、長さにも制限がある。
「単純にもう安全面で脱落していくものもすごくいっぱいあります。こどもは好きだけど、めっちゃ好きなんですけど、使えない。」と桑原さん。たとえばさっきこどもが好きだと紹介したイソジンのうがい薬は、玩具だとすると基準を満たさないそうだ。
今回の場合、穴を大きくして全体のサイズを保つためには、穴の数を少なくする必要がある。かといって 2x2 の4個では物足りないらしく、3x3がよかったとのこと。ものづくりよ・・という気持ちになる。
こうやって、こどもたちの好奇心について調べることで、ぶじに新商品ができた。今回はその過程と結果の展覧会だ。
正直なところ、ちゃんと新商品に結びついてよかったと思う。それに、こういうことができるのって豊かだなとも思う。新商品に結びつかないかもしれない、こういう調査や研究ができること、結果を展覧会として発表できること。うらやましい。
最後に、話を聞いていてぐっときたことを箇条書きで紹介したい。いろいろやってみた上での実感がこもっていて、とてもいいのだ。
・要は日用品がよくできているんですね、そもそも。
・必ずしもこれ自体で遊ぶわけじゃないですけど、持っていることが楽しいんです。
・カラカラ鳴るやつ、鳴りすぎても怒ってやめちゃうんですよ。
・発達とともにやらなくなったりします。そうやってたじゃん、今度はこっちが好きなんだね、みたいな。
・「何これ?」って感じなんですけど、めちゃくちゃ遊ぶんです。
本文で、子どもの感性と一致することが嬉しいと書いたが、それはもう子どもの気持ちは分からないということを前提としている。だから子どもに聞くしかない。それは子どもだったはずの自分としてはなんとなくさみしいのだけど、メーカーの人はそんなところはとっくに通過してこどもへの好奇心を持っているのだろうと思った。
取材協力:ピープル株式会社
『(1歳の好奇心)への好奇心展 ~本当によく遊ぶおもちゃの作り方~』
2025年10月19日(日)~26日(日)
※展覧会は終了しています
| <もどる | ▽デイリーポータルZトップへ | |
| ▲デイリーポータルZトップへ |