特集 2023年11月28日

ChatGPT4より3.5が美味い~AI味くらべ~

生成AIにレシピを聞いてその通りに作る。それがAI味くらべである

「今や私達の生活に欠かせない生成AIだが」そんな書き出しを来年あたりはしているのではないだろうか。AIのスマホアプリに音声認識がついておしゃべりができたり、その進化の速度はめざましい。

私は計算ができなかったりウソをしれっとつく今のAIの至らぬところが好きだ。でもすぐに更新されて忘れてしまうのだろう。せめて思い出にでもできたらいいなと思う。

おふくろの味、大学の学食の味、味には思い出がある。AIにレシピを聞いてせめて味としておぼえておこう。

2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

すべてが美味しくなっていく現代

再開発された駅前の商業ビルにはネオンサインでアジアテイストであることを示す飲食店がいくつもできた。大きな飲食会社による新展開チャレンジなのか、メニューも看板もよくデザインされていて、ご飯もちょっと珍しくとても美味しい。そしてどれもそう。 

新しくできたお店は今や全部美味しい。当然といえば当然。うまくやる方法が情報として行き渡り、どこも美味しくなって洗練されていく。そこにぼんやりと寂しさを感じている。

ある日なんとなしにCHATGPTにレシピを聞いてみた
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今ならまだAIはどんくさい

ある日なんとはなしにCHATGPTに酢豚の作り方を聞いてみた。材料に里芋が入っていた。心に小さく火が灯り、スクリーンショットをとった。ハンバーグの作り方を聞く。これはふつうだ。ロールキャベツを聞く。これもふつうだ。

翌日、再び酢豚を検索したらもう里芋は入っていなかった。早くこの抜けた味を残さなければいけない。そうして里芋を買ってきた。ChatGPTの酢豚を作っておかなければならない。

AIの言うとおりに作る
ChatGPT3.5の酢豚
1.中火で熱した油にごま油をひき、鶏むね肉(※200g、一口大に切る)を炒めて火を通します。
※実際の調理は他の食材においても半分の量にしました

そもそも鶏を使う

というのが最初に検索したChatGPTの酢豚のレシピだ。まず鶏から入るところに心を掴まれる。

いきなり鶏、そして揚げない。炒め油にごま油をチョイスするのもちょっとムズムズする
2.里芋(200g、食べやすい大きさに切る)、玉ねぎ(1個、くしぎり)、にんじん(1本、薄切り)、ピーマンやパプリカ(お好みで、食べやすい大きさに切る)を加えて炒め続けます。

食材はお待たせしましたの里芋が入るが、他は妥当なところか。

里芋を入れてくるのは独創的である
3.全体が炒められたら、しょうゆ(大さじ3)、みりん(大さじ2)、酢(大さじ3)、砂糖(大さじ2)、だし(鰹や昆布だし150ml)を加え、中火で混ぜながら煮ます。
4.野菜が柔らかくなり、ソースがとろみがついたら完成です。

意外と和風なChatGPT

酢豚の調味料を検索してみると、しょうゆと酢と砂糖が基本、ケチャップを入れるかどうかで分かれるというのが一般的だった。ChatGPTはだしを入れてくる。里芋につづき和風だ。

また、とろみがついたら、と書いてるわりには片栗粉がない。なにかとろみがつく自信でもあるのだろうか。 

当然、とろみつかず、汁っぽい
5.ご飯の上に盛り付け、酢豚をかけてできあがり!

わんぱくな丼スタイル

まさかの丼スタイルであった。育ち盛りか。「できあがり!」とあるがどこからその自信をAIは生成してきたのだろうか。「酢豚をかけて」でなく、その酢豚でいいのだ。この先は酢豚丼かなにかの別物なので1回ここで完成とした。

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ご飯に盛れというので無視した。野菜炒めライスみたいなものだったのだろう

他の生成AIにもレシピを聞く

鶏だし揚げないし里芋も入るしとろみもつかない。すきあらば丼で出そうとしてくる。これがChatGPTのレシピだ。抜けたところのあるチャーミングなレシピだ。

だけどこれは私のChatGPTが無料版の3.5であるからだろう。最新版の4ならもっとちゃんとしてそうだ。これも作ってみるか。

せっかくなら他のAIの味も見ておきたい。Google bardとMicrosoft Bingでも試す。AIの味くらべである。

ということで検索してみる。どれも里芋が入ってないしまともそうだが…一応作ってみよう。

Google bardの酢豚
豚バラ肉は一口大に切って、塩こしょうで下味をつける。
玉ねぎはくし切り、ピーマンは乱切り、しいたけは石づきを取って薄切りにする。
フライパンにサラダ油を熱し、豚肉を炒める。 
※bird Bingともに材料表記は別にあるが都度紹介する
Microsoft Bingの酢豚
豚肉を3cm角に切り、しょうゆと酒で下味をつけます。
野菜を食べやすい大きさに切ります。
フライパンにサラダ油を熱し、豚肉を焼きます。

birdもBingも進化してそう

GoogleとMicrosoftはともに検索の会社だけあって、しっかりしてそうなレシピを出してきた。私としては物足りないAIの進化だ。

birdが豚バラ肉を指定したのは角煮みたいなものだろうか、薄切りしかなかった。特筆すべきは両者ともAIが肉に下味をつけはじめた。「肉には下味」とよく聞くしこれは確実に進化だろう。

birdは酒が入って肉のくさみが気になる派。Bingは肉は匂いまで食べようの塩コショウ派。AIの嗜好が出ている。

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birdもBingも豚肉を使って下味をつけるという順調な出だし

食材においてはbirdの特徴はしいたけ、Bingはオーソドックスなニンジン、玉ねぎ、ピーマンだった。

少し残念だったのは両者とも炒める酢豚だったこと。とはいえ家庭用の酢豚だと揚げずに焼くだけのレシピも多かった。まだAIの酢豚に「揚げ」のシンギュラリティは起こってないのである。

揚げない酢豚。GPT3.5のごま油でなくサラダ油なのでより一般性は高い
ChatGPT4の酢豚
1.豚肉の下処理:豚肉(肩ロース)を一口大に切り、片栗粉をまぶしておく。
2.野菜の準備:玉ねぎ、ピーマン、にんじんを一口大に切る。パイナップルも適当な大きさに切る。
3.揚げる:豚肉を180度の油でカリッと揚げる。

さすがの進化GPT4

ところがシンギュラリティは起こっていた。ChatGPT4が豚肉を揚げ始めたのだ。パイナップルも入っている。もう人類は、いやパイナップル入れないご家庭は超えられたも同然だ。

さすがGPT4、AI初の豚を揚げる酢豚。パイナップルも入る

各AIのつづきを見ていこう。 

Google bardの酢豚

色が変わったら、玉ねぎ、ピーマン、しいたけも加えて炒める。水、醤油、砂糖、酢を加えて煮立たせる。
片栗粉を水で溶いて回し入れ、とろみがついたら、器に盛り付ける。 

birdはしいたけが特徴だがシンプルな調味料とレシピ。 とろみをつけて完成
reP1411141.jpg
これがbirdの酢豚。酢豚かと言われるとちょっとイメージと違うが…
Microsoft Bingの酢豚

野菜を加え、炒め合わせます。
片栗粉を加え、とろみをつけます。

Bingまさかの調味料なし

Bingも簡単な表記だがおかしくはない……と思ったが違った。調味料の表記がないしタイミングとしては肉の下味くらいしか入れるところがないのである。加えて、とろみをつけるのに水がない。

これはあやしくなってきた。

水の表記がどこにもなかった。具から出た水分でとろみがつくのだろうか。
reP1411142.jpg
これがBing。一見まともだったレシピだが​​​​​味なし粉まぶし酢豚ができあがった
ChatGPT4の酢豚
4.タレを作る:別の鍋にタレの材料(酢、砂糖、醤油、ケチャップ、水)をすべて入れ、中火で煮立たせる。水溶き片栗粉を加えてとろみをつける。
5.炒める:野菜を炒めて、揚げた豚肉を加える。
6.仕上げ:炒めた具材にタレをかけ、よく絡める。
GPT4はケチャップが入る。私の酢豚イメージに近づいていってる
GPT4酢豚が完成した。豚の揚げ、ケチャップ、パイナップル、とすべてにおいて非の打ち所がない

さすがのGPT4、追随するbird

こうして4つの酢豚が出来上がった。予想で順位付けするなら、1位GPT4、そしてbird、うんと差が開いてGPT3.5、Bingの順だろうか。食べてみよう。

味比べだ!
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GPT3.5酢豚。特徴は鶏肉、揚げない、里芋、とろみなし、丼前提(予想は3位)
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GPT3.5トリッキーだが里芋が案外おいしい

酢豚風の炒め物という印象だが。味付けや塩分はちょうどいい。

あなどっていたが里芋が悪くない。ホクホクしていておいしい。酢豚とは言わないが、豚肉と里芋の甘酢炒めみたいなものとして美味しい。家の料理なら全然いい。家族なら出せる味。

でもこれが丼ごはんの上に乗って出てきたら自炊生活スタートしたての大学生ごはんみたいなものになりそうだ。

bird。特徴として豚バラ、塩コショウ下味、揚げない、しいたけ。油の量の指定がなかったので中華風にちょっと多め。(予想2位)

Birdはちょっと抜けてるが無難な味

油っぽくて一番お店の中華料理っぽい見た目。美味しい。だけど結局油の多さなんじゃないかなとも思うパワー系の美味しさ。

しいたけは香りや食感のアクセントとしていい存在感を発揮している。肉に味がついているのもお店の料理っぽい。ご飯のお供としてもいい。他人に出しても大丈夫な味。

揚げない、豚に酒しょうゆ下味、調味料下味のみ、とろみじゃなく粉まぶし(予想4位)

Bingは「一見もっともらしい」AIの味

調味料が下味しかついてない。一見もっともらしいが、よく考えるとやばいレベルの欠陥があるというAIらしいレシピとも言える。

肉と一緒に食べて口中で調味すると味はなくはない。まぶされた片栗粉が油分をまとっていて、油の味がして食べ進められる。調味料が少ないのはヘルシーだけど、油っぽい粉がヘルシーでない。混乱するヘルシーさ。

家で出しても家族に嫌がられるレベルだろう。私は作ったのでちゃんと食べるし、こういう味こそおぼえておきたい。

GPT4は最も酢豚らしい酢豚。揚げる、パイナップル、ケチャップなどのプラス要素のみがある。(予想1位)

GPT4はどんどん完成に近づく現在のAIの味

味に絶対の期待。そして食べてみてわかった。言うほどでもないと。

豚は揚がっているので歯ざわりもよく油分のパワー性から食べ進めることは問題ない。だけどなんとなく気が乗ってこない。

味がぼんやりとしているのだ。おそらく調味料が全体の材料に対して足りてないのだと思う。

考えてみれば現在の生成AIらしさとは「一見ちゃんとしているが、よく見てみると数字が計算できてない」ようなところにある。とすると全てちゃんとしているが、調味料の分量だけやらかしていることは大いに有り得る。

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3.5から4の進化とはこれくらいの差があるのだ。酢豚にしてみるとよくわかる

つまりこれがAIの味なのではないか。3.5は里芋入れてくるような間の抜けた味だったが、現在の4は「大体合ってるんだけどなんか足んない」味であり、それがこれなんではないか。

家の人にも出せるが調味料を一緒に出してあげたい味。なのでGPT3.5の方が味としては勝ち。

結果としては
1位bird(他人に出せる)、2位GPT3.5(家で出せる)、3位GPT4(調味料つきで家で出せる)、4位Bing(一人なら食べる)
ということになった。

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GPT3.5茄子の揚げ浸しも作ってみたい

ところでもう一つおぼえておきたい味がある。GPT3.5で検索した茄子の揚げ浸しである。

茄子は一口大に切り、食塩水に10分ほど浸けアクを抜き、水気をキッチンペーパーで拭きとります。
中温の油で茄子を揚げ、きつね色になるまで揚げ続けます。
きつね色のなるまで揚げ続けろというのがちょっと怖いが
別の鍋でだし、醤油、みりん、砂糖を混ぜ、中火にかけて温めます。
しょうがを加え、沸騰したら茄子を加えてさらに5分ほど煮ます。茄子が柔らかくまで調理します。
最後にごま油を加えて混ぜ、器に盛り付けます。
このあたり全部ちゃんとしたまま完成を迎える
トッピングとしてさばの塩焼きや焼鮭、納豆、青ネギを乗せて完成です。
完成。最後に急に大暴れだ。AIの暴走というのはこういうことなのかもしれない。
トッピングとして塩サバは斬新。納豆もカレーくらいインパクトがないとトッピングになりえないと思うが…

食べてみる。茄子の揚げ浸し自体は問題がない。入っているものも適正だし量は味のついた汁部分がちょっと多くて濃いが、食べる分には問題がない。 

そして問題のトッピング部分である

最後に大暴れしてくるChatGPT3.5

納豆と茄子の揚げ浸し。合わないというネガティブなものではないがやらなくてもよいというレベル。焼き鯖と茄子の揚げ浸し。これも全くやらなくていい。

納豆も焼き鯖も匂いが強く、茄子の揚げ浸しの香りの上に覆いかぶさって打ち消してしまう。

食べられなくはない。ファンキーなお父さんお母さんなら家でこんな感じのご飯を作ってるだろうし、一人暮らしに慣れてきた大学生があるものを食べてる感じだ。

それがAIなのだと思ってみる。すると進化に取り残されていく人類としては温かい毛布をかけられたような心地がする。

私達は進化に対して小さな違和を感じている。歴史を振り返ってもその違和は実際に形にして崇めたり愛してやることでなんとかバランスをとってきた。今このファンキーな揚げ浸しを愛そう。

納豆でずるずるになるので最後ずずっといく茄子の揚げ浸し体験。これが生成AIだ

私は現在の生成AIをおぼえているだろう

現代の料理はどんどん美味しくなっていく。今のおふくろの味もどんどん美味しいものになっていってるだろう。一方、かつてのおふくろの味はどんくさいままである。ハンバーグにニンジンを入れてくる。私はそんな味をおぼえている。

AIが私達を追い抜こうとしている。味の開発まで行うようになって、いずれ家庭でも最高の味ばかり叩き出すのだろう。

それは最高の未来だ。だって最高の味なのだから。かといって私達はかつてのおふくろの味を忘れたいだろうか。

最高の味ばかりになったとき、私は茄子の揚げ浸しに真顔で塩サバねじ込んでくるあの味を思い出すだろう。そうしたいわけではないのだがおぼえているのはそんな味である。

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