ちょっと聞いてよ 2022年12月6日

肉屋から生まれたレシピ、長崎・真弓精肉店の「揚げサンド」のザクザク感はもはや脅威

数年前、「秘密のケンミンショー」をきっかけに知った長崎県佐世保市の北部世知原町にある真弓精肉店の「揚げサンド」。

甘いマヨネーズのポテトサラダとハムを挟んだサンドイッチを豪快に揚げた一品だ。地元の人にとってはソウルフード的な存在で、盆正月にはこれがドドンと食卓に並ぶらしい。

ジャンル的には“揚げパン”なのかもしれないが、わたしは“真弓精肉店の揚げサンド”だなとおもうほどに、その個性はバッキバキに際立っている。

それぐらい、食感が脅威だった。やはり揚げたてはすごかったのだ。

1986年生まれ佐世保在住ライター。おもに地元の文化や歴史、老舗や人物などについての取材撮影執筆、紙媒体のお手伝いなど。演劇するのも観るのも好き。猫とトムヤンクンも好きです。

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お茶の里の小さな精肉店へ

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佐世保市世知原町はお茶の産地としても知られる。

佐世保市の中心地から車を走らせ30分。世知原町に到着した。

ゲートボール大会で賑わう運動公園に車を停め「真弓精肉店」まで歩く。

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車では入れない細い路地にある。地元民から長年愛されている精肉店だ。
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お肉はもちろん、お惣菜も販売している。

実は、来店前に揚げたてを買いたいと電話していた。

ちょうどフライヤーの火を消したばかりのタイミングということで、ちょっと申し訳なさを感じつつ、カウンターから声を掛けると、ちょうどわたしが注文した分を揚げているところだった。

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このときの火加減や時間が大いにポイント(もちろん企業秘密)で、冒頭で示した“食感”の要となるそうだ。
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やっぱり揚げたてを食べたい

お店の方のお話によると、やはり揚げたてが一番とのこと。

その場でパッケージを開けてしまいたい気持ちをおさえつつ、運動公園へと戻った。

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揚げサンド片手に小走りする女。

「真弓肉屋のおじちゃん 揚げサンド」と書かれた、ほほえましいラベルを眺めながら小走りで公園へ向かう。

この「特製揚げサンド」だが、ラベルに書かれているおじちゃんがずっと前に働いていた精肉店で習得したレシピとのことだ(その後、真弓精肉店へ)。

かれこれ40年以上にわたって作られているという。

全国TVで有名になって以来、さまざまなお店でおなじような甘いマヨネーズの揚げサンドが登場したというから、まさに草分け的な存在なのだろう。オリジナルのラベルが、そのブランド力を物語っている。

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住宅も並ぶ大通り沿いには、この地域に棲息する動物たちの彫刻が点々と立っている。これは「ホンドタヌキ(イヌ科)」で、国見山の山中より里近くに多く、夜間道路沿いでよく見掛けるそうだ。4月ごろから5月ごろにかけての夜は、子ダヌキの「ウンギャー」という声を聞くことがあるそうだ。

公園に着いた。白熱するゲートボール大会を横目に、川沿いへゆく。寒いけれど、これから揚げたてを食べるワクワク感の方が勝っている。

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川のせせらぎと鳥のさえずり、シニアたちの掛け声を聴きながら
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いただきます!

ザクザク感が立体的すぎる

「これ、ザクザク感がすっご~い!」ってよく言うじゃないですか。

でも、ほんとここまで、衣1つ1つが立ってる揚げパンって他にはないとおもうんですよ。と、心の中でひとりごちてしまった。

それだけ「真弓精肉店の揚げサンド」のザクザク感はすごい。衣のパンに敬意を評して、1つ1つにザクという名を与えたいほどだ。とにかく立体的なのだ。

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豪快な“ザクだまり”に「ヒュウ!」と声が出る。クランチをまぶしたチョコアイスの、一番端っこを食べるときの満足感に似ている。

続いて迎えてくれるのは、甘いマヨネーズのポテトサラダ。そして縁が赤いハムだ。これを懐かしいと思うのはわたしだけだろうか。「ハム 赤い」で検索すると、ハムスターの体調不良を心配する飼い主さんのブログが出てきた。

サラダはほんとうに甘くてしっとり。ザクザクパンとのコントラストがすさまじくて強烈なインパクトを残してくれるのだ。

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スマホカメラのレンズに脂がついてしまったのだろうか、夢の中のような画像になってしまった。

カレーパンのような油の多さも感じられないのも不思議だ。さっき、お店の方から「揚げ方は企業秘密」と言われたが、精肉店ならではの技術なのかもしれない。

なお、作りたての味に戻すには、オーブントースターでじっくり3~5分がおすすめらしい。

2個食べたところで、エンジンがかかった。揚げサンドのザクザク感とエネルギーにすっかり後押しされたわたしは、そのまま温泉へと向かい、うどんを食べて帰っていった。とても満足した。

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温泉のお食事処できつねうどんを食べる。元気が出る「揚げサンド」の味とテクスチャ―に、旅情も刺激されました。残りの2個は晩御飯のおかずになりました。
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