特集 2022年11月21日

美容室の跡地にマジックで書かれた店名…ちょっとだけ謎のお店、古物商万徳屋さんとは

ある日のこと。車に乗って信号待ちをしていた時である。何気なく美容室の建物に目を向けたところ、なんだかおかしい。

ぎっしりと埋まっているのだ。玄関が、外壁の一部が、ブチ抜かれて、商品で埋め尽くされているのだ。

外から確認できるだけでも、本、洋服、楽器やキッチン用品や家電。中には段ボールや箱に入っていて姿が見えないものもある。

HARDOFFをバックヤードごと二度シェイクしたかのような、ジャンルを越えた物の集合体だった。

信号待ちの短い時間で必死に情報を探すと、壁に古物商 万徳屋(まんとくや)の屋号が手書きされているのを発見した。どうも、リサイクルショップのようだ。

1986年生まれ佐世保在住ライター。おもに地元の文化や歴史、老舗や人物などについての取材撮影執筆、紙媒体のお手伝いなど。演劇するのも観るのも好き。猫とトムヤンクンも好きです。

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「美容室いちまる」を居抜いた古物のお店

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市街地へと続く、長崎県佐世保市潮見町の国道35号線沿いにあらわる

こちらがそのお店。外観は、ほとんど開放されつつも商品でぎっしりと埋まっている。

まわりにはかつて商店街の名残でシャッターが閉まった建物が多く見受けられるが、ここだけは圧倒的にぎやかさだ。

「美容室いちまる」と文字看板は残っているが、そのお役目は終えているみたい。

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しっかりと美容室の屋号は残っている

 ここで書いておきたいのは、このお店は、この見た目でありながら最近オープンしたお店、ということだ。

これまで通りがかったときには見たことがなかった。突然あらわれ、イキナリこの年季。どういうことなんだろう。

そしてなによりおもしろいのは店の屋号だ。マジックペンのようなもので手書きされているのがとても潔い。

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壁板一枚に一文字ずつ、店主の直筆だ。よ~く見ると、茶色のシャッターの枠にもうっすら文字が。

見たときわたしは「ロックだな!」と興奮し、スマホで写真を撮った。喜びを分かち合いたくて、すぐさま夫に報告した。

そして帰宅後「こんど絶対いくんだもんね!」と息巻いていたのだが、結局勇気が出ずなかなか足を運べなかったのだ。

なぜならわたしは、古物商といえばアンティークしかない、と超単純に捉えており、冷やかしへの風当たりが強いのではと恐れていたからだ。

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その後、店の前を通るも入る勇気が出ず店の前で記念写真を撮ったりした。慰安旅行のワンシーンのようである(2021年冬に撮影)

けれど、何度か店の前を通っては眺めているうちに、店主にお話を聞きたい気持ちの方が大きくなっていった。

怒られたらしょうがない。ええい、ままよ!

「こんにちは……」

ドキドキしながら声を絞りだす。「はい、いらっしゃい」と、店から入ってすぐ右手側から聴こえてきた。

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写真ではわかりにくいが、ちゃんと道はある。

人一人がやっと通れる隙間をカニ歩きで進む。すると、小さなライトに照らされた人一人分のスペースがぽっかり空いていた。

店内にはテレビ番組の音声がけたたましく流れている。

商品だろうか、洋服やバッグに囲まれ、椅子にゆったりと腰掛けていたのが店主・有薗隆徳さんだった。

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店主の有薗隆徳(ありぞの たかのり)さん。85歳

――少し、見てもいいですか。郷土史に興味があって、よければお話を聞かせてくれませんか。

緊張する声をふり絞り、やや声を張って呼びかける。

これまで勇気がなかったくせに、まるで偶然通りかかってフラッと入ったかのような言い方である。

はいはい、いいですよ。どうぞ。

テレビのボリュームを少し下げ、隆徳さんは穏やかな表情で応えてくれた。わたしは小さくガッツポーズをした。

小物、洋服、服飾、家電、本やCDなどが所狭しと並ぶ

店から溢れんばかりの商品たちは、ジャンルを飛び越えて所狭しと並ぶ。というより積まれているといった方がいいかもしれない。

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歩道の上に、台を設置して商品を陳列。訪れたこの日はまだ夏だったので扇風機が何種類か。琴やミシン、ぬいぐるみが一堂に会する。背後には商品の壁が。

古本やCD、DVDに懐かしのVHS。洋服やバッグ、小物。コンテナや段ボールに入っていて姿が見えないものもある。

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CD、DVDにお皿、そして段ボール。ジャンルを越えて、いま1つに。
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絵画もちらほら
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スクールバッグにも使えそう!

――商品数すごいですね。最近オープンされたようですが、どうやってここまで集めたのでしょうか。

1から仕入れたんですよ。

――えぇっ!1から!?

そうです。美容室いちまるの看板が残っとったでしょ。美容室だったココを一旦空っぽにして、12月下旬ぐらいから商品を仕入れ始めて。今はこんな感じ。

――えっ、オープンからまだ9ヶ月ということですか。そんな短期間でこの年季が入った状態に……!

オープンしたときにはだいたい今と同じぐらいの状態よ。いや、もっと商品の数は少なかったか。一度の仕入れが多いから、商品も一気に溜まって。そんなにポンポン売れるものでもないからね、これからは増えていく一方でしょう。

まぁ立ち話も何だから、と、隆徳さんに在庫の入った段ボールの上に座るよう促された。

ちらっと中を覗いてみると大量の使い捨てライターが入っていた。これもきっと商品なのだろう。

そうしているあいだに、ちょっと気づいたことがある。万徳屋という屋号の古物商店は、もうずっと前からあるじゃないか。

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この水色の建物がずっと以前からある「万徳屋」。コメダが建とうがマンションが建とうが、昭和をそのまま切り取ったかのような外観を保っているのだ。わたしは長らくこのお店のファン(やはり入る勇気はなかった)なのだが、今回の取材でようやくお邪魔することができた(以下含め店主の許可を得て撮影)
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仮にここを「本店」と呼ばせていただくが、取り扱う商品はわたしのイメージ通りの骨董品的なテイストが多い。あとはバスケットゴールや船のエンジン、ときには車など​​​​​大物も並ぶのだ。ある日、大太鼓が四本足の立派な台に乗って店頭に鎮座していたこともあった

 

ひょっとして、このお店、分店とか、そういうことじゃないか。

思い切ってうかがってみた。

――もしかして、こちらのお店って、ずっと前からある「万徳屋」さんと関係がありますか。

あぁ、いま弟がしてるところね。

やっぱりそうだった!

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月に3度、どっさり仕入れる

さらにお伺いしたところ、こちらは「万徳屋」の本店から暖簾分け(?)して誕生し、主に日用雑貨や服飾を取り扱っているそうだ。

車や船舶、機械類など大型のものを扱う本店と、少し違うジャンルのものを仕入れているとのこと。

商品の数については、もはや仕入れたご本人も把握できていない。長崎市で月に3度行われる古物商のマーケットに、弟さん家族と軽トラに乗り込み向かうらしい。

経営はそれぞれ独立しているが、屋号は同じで、仕入れも一緒。なので、だいたいお互いのお店のようすは把握しているらしい。

数週間前、本店の店頭に大太鼓が並んでいるのを見て興奮したことを話した。

――本店の入口に大太鼓があって。大きさのスケールが他と違い過ぎて興奮したんですけれども、あれって売れたんですかね。

うん、売れたみたいよ。

――もともと注文が入ってたものなんですか?

いや、売れるかなって仕入れた。直感みたいなもので。カセットテープやCD、本なんかは、基本セットで売ってあるものをごっそり買うし、売れるだろうという気持ちで仕入れてるけど、コレ売れたら面白いな、どんな人が買うんだろう、という楽しみも半々ぐらい。

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セット購入がオトク!なVHS。ドキッとするタイトルも

――確かに、ざっと見渡す限り、お宝探しのような要素もありますね。

うん、楽しかよ。普通に買いに来るよ。お年寄りが世間話がてら来ることが多いけど、中には若い子もね。カセットやレコードとか、物珍しさに買っていく。

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わたしにとっての物珍しさといえばコレ。カセットテープのカラオケ機器。動作確認済みで音が綺麗だそう。「8トラ」もいけるんよと言われ、帰ってから調べた。希望販売価格は10,000円とのことだが、5,000円でもオッケーらしい。気持ち次第。

どこにあるのかだいたい分かるけど、待っててほしい時もある

若い子も来るのか!とびっくりしてしまった。わたしの思う“若い子”よりうんと年上の方かもしれないが。

しかし、隆徳さんとお話ししていたとき、30代の男性が慣れた様子で来店し、ケースに入った日本人形を物色していた。

どうも常連客のようで、楽しく談笑していた。接客の邪魔をしては悪いとじっとしていたが、迫りくる物量にややそわそわしていた。

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日用品メインだが、お宝の気配もチラリ

 

――失礼ですが、商品の場所って把握されてますか?

だいたいは分かるけどね。けどこないだ、「グラインダーがほしい」ってお客さん来られた時、「あると思うけど、ちょっと探すから見つかったら連絡するね」ってお伝えしたことがあるよ。

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洋服の奥に草刈り機の刃が見えた。価格は15,000円で、ひょっとしたらこの店で一番高いものかも、とのこと

――この物量ですもんね。「全然構いませんよ、急がなくて良いですから」って、わたしがお客さんなら言っちゃうなぁ。

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生まれも育ちも商売人

万徳屋の創業自体は50年以上になるという。

前身は隆徳さんのご両親が経営していた有薗文明堂。万年筆専門店で、両親とお手伝いさん数人で切り盛りしていたそうだ。

松月堂(させぼ四ヶ町商店街にある、創業明治38年の老舗和菓子屋)の隣でやってました。昭和21年頃までだったと思う。その後は第二次世界大戦が始まって、僕が小学2年生の頃、大野に疎開してね。けど両親は看板を畳まずに、学校の正門の前に台を置いて、学生さん相手に商売していたよ。

そして戦後、新たに始めた商売が古道具屋だったという。

僕の名前が「隆徳」なんだけど、そこから一文字取って父が「万徳屋」と屋号をつけました。縁起の良い字面でもあったのでね。戦後すぐは古道具屋をやっているお店は少なかったと思う。物が少ない時代だったから、仕入れれば何だって売れたそうですよ。

――隆徳さんはずっとお店のお手伝いを?

いえ、20歳の頃だったかな。知り合いのつてで大阪に働きに出ました。手芸用品の卸売業というか、ボタン屋さんで2年。そのあと独立して、ボタンや糸、針、とにかく洋裁道具全般ですね、それをバイクに積んで売って回る商売をしよったです。

――商売人の血が流れておりますね!

20年頑張りました。はじめはバイクに重たい商品を積んで走っていたのが、お給料で車を買って。お得意先も沢山増えて、200件はあったかな。

――おひとりで200件開拓ですか。すごい!

もちろん前職や人からのご縁もあったけど。対面販売はやっぱり楽しいんですよね。

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シニアに人気のキャリーバッグ(3,000円)。「椅子にもなるとよ!」と魅力をPR
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海外旅行にもぴったりキャリーケース(5,000円)。しっかり丈夫で綺麗

両親から受け継いだ商売人気質を存分に生かし、隆徳さんは昼夜問わず働いたという。当時の娯楽について尋ねると「仕事一筋」と笑顔で返ってきた。

兄弟家族で万徳屋を継ぐ

洋裁店に勤めていた女性と結婚し、大阪での暮らしも落ち着いてきた昭和52年。40歳の時だった。父親の他界をきっかけに、残された母親と弟を支える形で佐世保へ帰ってきた。

弟はずっと前から両親の手伝いをしてましたから、僕たちもそれに加わる形で。まだまだ物がない時代だったから、仕入れた分はどんどん売れた。

――仕入れ先はどこになるんですか?

いまと違って、当時は一般家庭やお店から直接買い取ることが多かった。引越や移転閉店のタイミングで、一軒分まるごと購入してた。あとは公売ね。国税局や税務署が差し押さえた財産を入札して買う。

――一軒分とは、かなりのボリュームだったでしょう。

そうですね。査定は僕と妻の二人でやってましたから。朝から晩まで大変でしたよ。お店(現在の本店)の2階から4階は住まいだったんだけど、帰ってきてから2年ほどはそこで子育てをしながら住み込みで働いてました。

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本店の2階部分。三段松の透かしブロック塀を使った外壁と窓枠がカッコイイ。戦後、商売をするにあたっての気合というかポリシーのようなものを感じる。当時は家族の住まいとして利用。現在も同様のようである
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商売繁盛を願う招き猫と七福神の布袋さんが空を眺めている

弟さんを主軸に置きながらの家族商売。区画整理でまちの風景はすっかり様変わりしたが、世代を越えて訪れる常連客などの人足は途絶えることはなかった。

そんななか、ともに家計を支えてきた夫人が62歳で亡くなった。すい臓がんだった。次いで、お子さんの一人を30代の若さで失う。

二人とも癌だった。早すぎだよって。もう、何と言葉にしていいかわからない。ちなみに僕は、いま前立腺がんなんですよ。ゆったりと病院に通ってますがね。なにせ甘いものが食べられないので辛い。

隆徳さんがくしゃっと笑う。早すぎる家族の死を乗り越えられたのかはわたしには分からないが、その表情に刻まれた皺には、本当にいろいろなものが詰まっているのだろうなと思う。

その後、紆余曲折あり、本店を弟さんに譲ったという。

――ひょっとして喧嘩したんですか。

いや、もともと弟がずっと万徳屋を手伝っていたからね。それに、何でも売れていた昔と違って、お客さんの流れもガラリと変わった。引き時かなぁと思った。

隆徳さんは別の仕事に就き、20年続け退職。その後、ふと思い立ち、娘さんと二人で、車で日本を一周することにした。

沖縄からスタートし、約一年半かけて北海道までの47都道府県ドライブ旅を愉しんだ。

旅行はもともと好きでしたから。国内外よく行ってましたよ。日本一周は、やってよかった。娘ともたくさん話せた。長距離だったけど、車が好きだから苦ではなかった。コロナ禍の前で良かったですよ。人生やり切った気持ちでしたね。

と、言い終えてまたふいに一言。

あ、佐渡は遠すぎて行けなかったんだ。まだやり切ってない!

――来年の目標ができましたね。

本当ね。佐渡、行かんばね。

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そんな娘さんからプレゼントしてもらった電動自転車は、乗るためにまだ練習中とのことで商品と一緒にひっそり眠っている

一年半の旅のあと、隆徳さんの頭をよぎったのは「やっぱり古物商をしたい!」という思いだった。そこで、たまたま閉店したばかりの美容院が万徳屋本店近くにあるという情報をゲットし、購入に至った。

そのとき彼は84歳。業者を雇わず自分1人で内装をつぶし、弟家族と仕入れに赴き、商品で店内を満たし、マジックペンで外の壁に「古物商万徳屋」の文字を書いた。

――あの手書き文字は、ロックだなと思いました。

そう(笑)?業者に頼むほどでもないと思ったから、外観の「美容室いちまる」の文字看板はそのままにしたよ。ここが万徳屋だというのは、見る人が見て分かれば良いと思って。消えたらまた書き直せばいいし。

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文字も薄くなってきたしそろそろ書き時ではないですか?と聞くと、マジックペンが見つからないとのこと

やっぱりカッコいい。見てくれは二の次。ここは第二の居場所。来るものは拒まず。

宣伝もないまま、もう一つの万徳屋がひっそりとオープンした。

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店までは自宅から自転車通勤。良い運動になるそうです。まだまだ杖いらず!
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自転車のカギを探すと、ポケットが破れていたというアクシデント。「あちゃぁ」と笑うそのようすに、お茶目さを感じついシャッターを切った。ちなみにその後カギは見つからず、錠を力づくで破壊したらしい

 

店として積み上げてきた時間はまだ一年未満。だが、さまざまな時代を越えて集まってきた商品や、店主・隆徳さんが辿ってきた時間の重みは見えない形でそこかしこに存在している。

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見上げると美容室の名残も
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商品は奥の部屋にも眠っているのだ

いろいろあったけど、やっぱり古物商って面白いんですよね。あなたもやってみるといい。簡単だから。

わたしは「そんなサラッと。古物商歴がわたしの年齢以上の隆徳さんだからこそのお言葉ですよ!」と突っ込みながら、一国一城の主が微笑むのにつられて笑った。

古物商はおもしろい

――ずばり、古物商のおもしろさって何でしょう。

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陳列した本人も通るのに一苦労

思い通りにならんところです。「これは売れる!」と仕入れるでしょう。けど、お客さんも同じとは限らない。でも人によってはこっちが思った以上の価値を感じる方もいるし、逆も然り。特に、僕のように日用品を扱っている者にとってはお客さん次第なところが大きい。けれどそれが楽しいんですよね。

――さっき、「これ売れるのかな?」って思いながら仕入れることもある、とおっしゃってましたもんね。

そう。それが売れたら、飛び上がるほど嬉しいんですよ。あと、仕入れるときも、こっちが思った値段で買えないことも多くて。そこからどう値段設定していくかを考えるのも楽しさの1つです。

――価格設定ってどうされてるんですか?

売れるやろう、って値段で。あちこち見て回って決めたりはせんよ。売れんなら売れんでも大丈夫。今は、生活のためというか、一日の大半をここで過ごすのが好きだから、やってるだけね。エアコンつけないから夏冬は大変だけど、物に囲まれて、お客さんと会話するのがなにより楽しいからね。

――いまこの瞬間もそう思っててくださったら嬉しいです。

うん。生きてたら楽しい。のんびりやっていきますよ。またおいでね。話し相手ぐらいにはなれるから。僕はいつだってここにいるんだから。

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一日の大半を過ごす大切な場所

――ありがとうございます、泣いてもいいですか。

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「魔除けですか?」と尋ねると、ハサミの片割れがどこかへ行ってしまったので、とりあえずぶら下げているとのこと。荷ほどきで活躍するそうだ
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夕方17時、台の商品を片付けて店じまいです
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今日も一日お疲れさまでした
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かつては「潮見商店街」と呼ばれており、東京銀座のような活気を放っていたというこの通り沿いで、もうひとつの「万徳屋」はこれからも静かに時を刻むのです

調子に乗って無茶ぶりをしてしまう

すっかり楽しくなってしまったわたしは、「1000円でなにか見繕ってくれませんか」と無茶ぶりをしてしまった。

そうね~といいながら、隆徳さんが山のような商品からガサガサと探してくれたのは、『AAA』のグッズとストッキングだった。

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これ、かわいいよ
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ストッキングは普通に便利!右手パッケージに入ってるのはチケットファイルのようだ。「韓国のアイドルやろ?」とおっしゃる隆徳さん。AAAです
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この子と目が合ったのでワナワナしていると「それも持って行っていいよ」とのこと。以上で1,000円です。有難うございました

 

可愛い枕も発見した。

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すっごく挟まれているけど
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なかなかな昭和っぽさ。500円で購入。
 

家に持って帰ると子どもたちが大はしゃぎ。大切に抱きしめていました。

このことを隆徳さんに伝えたらどんな顔するかなー。とても楽しみです。

勇気を出して、次は本店の方でもお買い物してみよう。

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おまけで洗剤もいただきました。大量です

 

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