やり方は簡単だ。
シャッターが切られる瞬間に顔を動かしてブレた写真にするのだ。うまくいけば、かなりスピード感のあるスピード写真に仕上がるはずである。
早速、渋谷駅南口のスピード写真機を目指した。写りが良いと評判のマシーンである。
渋谷駅南口、モヤイ像のそばにはスピード写真機が3台あって、僕が訪れた時は2台が使用中だった。スピード写真、大人気である。うかうかしていると残り1台も使われてしまう。
急いでスピード写真機の中に入った。
写りが良いと評判のこのマシーンは、1回700円で2カット撮影してくれる。1回だけ撮り直しの猶予があるので、都合4カットの中からベストな1枚を選べる仕組みだ。つまり、スピード感を与えるチャンスは700円で4回。その中から1番いい感じにブレたものを選ぶ予定だ。
マシーンの指示に従って撮影が進む。目の高さを指定のラインに合わせ、背もたれに背中をつける。位置が定まったら、マシーンのカウントダウンが始まる。
「トリマス。サン、ニー、イチ」
普通ならここで目を閉じないようにがんばるタイミングであるが、僕は思いっきり顔を左右に振る。ブレればブレるほどスピード感が増すはずだ。
しかし、写りが良いと評判なだけあって、このマシーンはとても賢いのだ。
顔を左右に振っていると中々シャッターが下りない。
ん? と思って顔を止めるとその瞬間にピカッと光る。
全然ブレてくれないのだ。
スピード感は一切ない。
よし、作戦変更だ。
小道具を使ってスピード写真にスピード感をつけていこう。