センブリ茶割りを飲んだ時、「やばい、センブリ茶の記事になる!」と思った。それくらいセンブリ茶の苦味が強烈だったのだ。
本文中にも書いたが特筆すべきは苦味の襲い方である。こんなものが自然界に存在するのかと、何か人工的なものを疑ってしまうくらい苦味のピークが突然襲いかかってくるのだ。
たまったものではない。そして、誰かに飲ませてみたい。そう強く感じた。
焼酎の飲み方として緑茶割りや烏龍茶割りなどが存在するが、それ以外のお茶割りを見かけることはまれである。
他のお茶割りはおいしくないのだろうか、それともあまりのおいしさに秘匿されているのだろうか。きっと秘匿されているに違いない。暴いてやるぞ。
みなさま方の中に焼酎のお茶割りを飲んだことのある方はいらっしゃるだろうか。
私が最初にお茶割りに出会ったのは大学生の時、午前2時、薄暗い居酒屋でのことである。2軒3軒とハシゴした私と先輩が最後にたどりついた居酒屋にて、先輩は入るやいなや「緑茶割りをください」と言ったのだ。
緑茶割り。お酒といえばビールやハイボールしか知らない、わんぱくを絵に描いたような当時の私は大変に衝撃を受けた。そんな落ち着いた飲み物のなにがよいというのか。そんなものを頼む人の気が知れない。飲んだこともないくせにそんな言葉で先輩を批難していたかもしれない。
しかし社会人生活も板についてきた今ならば分かる。お酒をとことん飲んだ人間が最後にたどり着くのはお茶割りなのだ。まるで〆のお茶だといわんがばかりにさっぱりとしたその味は、飲人(のみんちゅ)の最後の防波堤であり、明日への希望なのだ。
そうなってくると湧いてくるは探求欲である。考えてみれば居酒屋で見かけるのは緑茶割りや烏龍茶割りばかりだが、お茶の種類は無限大だ。きっと他のお茶割りだっておいしいはずなのだ。
前置きが長くなってしまった。気になったが最後、試してみるほかないのだ。
早速近場のスーパーやコンビニをまわり、緑茶や烏龍茶以外のお茶を10種類ほど集めてみた。普段あまりお茶を飲まないので気づかなかったが、身の回りだけでもけっこうな種類のお茶が集められるものだ。
ここからは実際に焼酎を割ってみた中で特徴的だったお茶を、飲みながら書いた感想メモとともにご紹介したい。
またそれぞれのお茶割りの評価指標として、おいしさを表した「うま度」、緑茶割りの代わりとして成立するかを表した「緑茶割りの代替度」、そして各お茶ごとの独自指標を用意している。5段階評価で点数付けを行ったので、併せてご確認いただきたい。
そしてネタバレとなってしまうが、上記写真のお茶の内格別においしいと感じられたものが1つ存在した。どのお茶なのか予想しながら読んでいただけると幸いだ。
トップバッターでいきなり主張の強い輩が出てきてしまった。一口飲むとほうじ茶のほうじ部分(特徴的な香ばしい香りのことを勝手にそう呼んでいる)が焼酎と手を組みながらふわあと鼻に抜けるのだ。
少しほうじ茶の苦味も強調されるため好き嫌いは別れるかもしれないが、面白いぞ。もはやほうじ茶がメインである。ほうじ茶の焼酎割りだ。
うま度 ☆☆☆
緑茶割りの代替度 ☆☆☆
ほうじ度 ☆☆☆☆☆
そば屋で食後に飲むそば茶を思い浮かべてほしい。あの純朴なそば茶に、ぽっと体を温めるようなお酒としての機能が加わったもの。それがこのそば茶割りだ。焼酎の深みもそば茶の素朴さも失わず、うまく手を取り合って共存を果たしている。おいしいじゃないか。
ベースがそば茶なので、飲んでいるとなんとなく健康にいいものを飲んでいる気すらする。これさえ飲めば悪酔いも二日酔いもなく次の日を迎えられることだろう。知らんけど。
一つだけ問題点を挙げるならば、さっぱりしすぎて緑茶割りの代わりになりにくいということである。
飲み足りないからお茶割りを飲んでいるというのに、そこでお酒タイムが終了してしまう味なのだ。非常に惜しいところだ。
うま度 ☆☆☆☆
緑茶の代替度 ☆☆
健康度 ☆☆☆☆
うまい。こちらは「おいしい」ではなく「うまい」だ。それも格別にだ。
ルイボスティーのさっぱりと焼酎の深みが化学変化を起こし、未知の食中酒に変化している。まるで最初からそういうお酒だったかのように、やわらかな甘みと後を引かないシャッキリ感に溢れている。目の覚めるようなお酒だ。
実はルイボスティー自体はあまり得意ではなかったのだが、これならばいくらでも飲めそうだ。むしろこの飲み方のためにルイボスティーを買い占める旅に出ようと思う。進め、ルイボスの民よ。向かうは楽園だ。
うま度 ☆☆☆☆☆
緑茶割りの代替度 ☆☆☆
覚醒度 ☆☆☆☆☆
そば茶やルイボスティーは焼酎と仲良くなれたが、当然焼酎とうまくやっていけないお茶もある。ジャスミンティーはその一つだ。
ジャスミンティーの上品な香りがかき消されるだけでなく、何故か焼酎の風味すらもどこか行ってしまった。残ったのはただの水である。なんとなく少しだけ苦い水である。
感想メモの口数もどことなく少なくなっている。そりゃそうだ、水なんだから。水にかける言葉はないのだ。
うま度 ☆
緑茶割りの代替度 ☆
水度 ☆☆☆☆☆
緑茶割りとほとんど遜色ない味だ。あまりの変わらなさに今まで居酒屋では緑茶割りではなく抹茶割りを飲んでいたのではないかと思うほどだ。
そんな事を思いながらふと緑茶に目をやると、「抹茶入り」と書いてあった。えっ、緑茶と抹茶って同じものなんですか?
この疑問はおそらくインターネットで検索すればすぐに解消することだろう。だがそんなことは瑣末な問題なので放っておきたい。大事なのは抹茶割りがうまいかうまくないか、それだけだからだ。
うま度 ☆☆☆☆
緑茶割りの代替度 ☆☆☆☆☆
緑茶度 ☆☆☆☆☆
すごく落ち着く味となった。甜茶そのものはそこまで甘みの強いお茶というわけではないのだが、とろっとしたやさしい甘みが印象的なお酒に変化したのだ。
このやさしさ、例えるならば養命酒である。一日の終わりに次の日の健康を願って一杯だけ飲むお酒だ。深夜番組をうつらうつらと眺めながらグラスを傾ける酒、それが甜茶割りなのだ。
うま度 ☆☆☆☆
緑茶割りの代替度 ☆
これを飲んだら寝よう度 ☆☆☆☆☆
最後はセンブリ茶である。バラエティ番組で苦い苦いと言われ続けているセンブリ茶が前から気になっていたので、これを機に買ってしまったのだ。「テレビもすなるセンブリといふものを、我もしてみむとてするなり」ということだ。
苦い。苦い以外の感情がない。芸能人が「うわあ〜」とひっくり返っていたのは間違いではなかった。じわじわ苦いのではなく、いきなりガツンとした苦味が口の中を蹂躙するのだ。
焼酎もない。お茶としての味もない。そこにあるのはただただ苦味である。メモもあまりの衝撃に口が悪くなっている。いやこれもうただのセンブリ茶の感想だな。
うま度
緑茶割りの代替度
二度と飲みたくない度 ☆☆☆☆☆
色々と試してみた結果、なんと10種類中5種類と半数のお茶でおいしく楽しめる結果となった。やはりお茶割りは緑茶や烏龍茶だけではないのだ。
せっかくなので上記で紹介しなかったお茶割りについても、一言ずつだけ触れておくと次の通りである。
もちろん今回試した種類以外にもお茶は無数に存在する。さらに言えば、今回おいしくなかったお茶割りも淹れ方や配分、銘柄によってはまた結果が変わってくるかもしれない。
俺たちのお茶割りはこれからだ。お茶割りフェスティバルは今、始まったのだ。
センブリ茶割りを飲んだ時、「やばい、センブリ茶の記事になる!」と思った。それくらいセンブリ茶の苦味が強烈だったのだ。
本文中にも書いたが特筆すべきは苦味の襲い方である。こんなものが自然界に存在するのかと、何か人工的なものを疑ってしまうくらい苦味のピークが突然襲いかかってくるのだ。
たまったものではない。そして、誰かに飲ませてみたい。そう強く感じた。
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