デジタルリマスター 2024年3月12日

山崎蒸留所は酒飲みの天国だった(デジタルリマスター)

ウイスキー製造工程紹介その1:仕込み・発酵

製造工場に案内される見学ツアー御一行。手をアルコールで消毒し、建物内へと入る。すると、何やら妙な臭いが漂ってきた。酸っぱいような、甘いような、独特な臭い。

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そして目の前には、巨大な銀色の物体が

どうやらこれは、仕込槽らしい。原料の大麦麦芽をピート(泥炭)でいぶして乾燥させ、細かく砕き、温水と共にこの仕込槽に入れておくと、麦芽に含まれる酵素によってデンプンが糖に変化して甘い麦汁が取れるという。

その麦汁を次の発酵槽に移し、酵母を加えて発酵させる。そうすると、糖がアルコールに変わってウイスキーの元となるウオッシュ(もろみ)ができる。

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……というような説明を、お姉さんがしてくれる
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ウイスキーの原料サンプル。これに加え、重要なのは水
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そしてこちらは発酵槽

仕込槽がUFOみたいな金属テカテカのステンレスであるのに対し、発酵槽はザ・木桶。木は保温性が高く、発酵に都合が良いらしい。また、木に付く微生物がアルコール以外の様々な成分を生み出し、後の熟成に良い効果をもたらすだそうだ。

とまぁ、そんな感じで説明を受けながら、工場内を進んでいく。それにしても、実際に見ながらウイスキーの製造について教えてもらうと、驚くほど理解が進みますな。設備も物珍しいし、酒が入らないうちからテンションが上がってきた。楽しいねぇ。

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ウイスキー製造工程紹介その2:蒸留

続いて案内されたのは、天井が高い広々とした建物。その両脇には、金ぴかなメタルスライムみたいな物体が、左右6基ずつ、計12基据えられている。

入った途端に、むあっとした熱気が私の全身を包む。それはまるで植物園の温室のような、重くて温かい空気。

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この金ぴかスライム(銅製で、金メッキが施されているとの事)でアルコールを蒸留するのだ

先ほどの発酵槽で作られた、アルコールを含むウオッシュをこのスライムたちの中に入れ、加熱してアルコールを蒸発させる。その蒸気を冷やして液化し、度数の高いアルコールを精製する。中学校の理科でやったよね、そういう実験。

火をガンガンに焚く故、夏はサウナ状態になるそうで、今の季節に行って丁度良いくらいの温度であった。寒い冬は、蒸留所見学に最適なのかもしれない。

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よく見ると、一つ一つ形が違って味がある
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その下では燃料を燃している
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丁度、蒸留されたニューポットが注ぎ出ていた

アルコールは二度蒸留された後、スピリットセーフと呼ばれる比重計を備えたガラス箱にジョロジョロ出てくる。この蒸留された液体はニューポットと呼ばれ、いわば赤子ウイスキー。そのアルコール度数は70%ぐらいで、色は無色透明。

工場ではこのニューポットの匂いを嗅がせてもらえるのだけど、アルコール臭さが鼻を突く一方、麦の香りが混じっていて、それはまるで麦焼酎みたいな感じだった。

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渡廊下からふと外に目をやると、外は至って普通の工場っぽい
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ウイスキー製造工程紹介その3:樽詰と熟成

蒸留棟で精製されたニューポットは、樽詰めされて貯蔵庫で長期間熟成される。「山崎12年」とか「山崎18年」とか、ウイスキーの名前に付く年数はこの熟成期間の事ですな。

ウイスキーは熟成する事で樽から成分が溶け出し、またそれらの成分が変化して、香りや味わいの元になるのだそうだ。樽の種類などによっても、それは異なってくるという。

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延々と続く樽、樽、樽……

ここに貯蔵されているものの中で、最も古いウイスキーは何年のものなのか。ふと疑問に思って案内のお姉さんに聞いてみたのだけれど、うまい具合にはぐらかされてしまった。ひょっとすると、企業秘密なのかもしれない。現存する最古の樽は、この蒸留所が稼動し始めた1924年のものだと教えてくれたが、それは中身が空なのだ。

また、奥の暗がりには鉄格子がはめられた物々しい一角もあった。そこに貯蔵されている樽は個人が所有するオーナーズ・カスク。所有者の好きなタイミングでボトル詰めできるらしい。お値段は一樽50万から2000万。樽一つで家が建つ!

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樽詰め年別に積まれているっぽい
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熟成年によってこれだけ減るという見本(左が12年で右が4年)

樽は呼吸しているので空気が出入りし、貯蔵されているウイスキーは年々蒸発してしまう。その減った量は「天使の分け前」という洒落た名前で呼ぶ。古ければ古いほど「天使の分け前」が多くなる分、当然ながら値段が高くなるってワケ。

ちなみに、ブレンダーは時折味見をして熟成の度合いを測るというが、もし私がブレンダーをやったとしたら、通常より「天使の分け前」の量が多くなってしまうに違いない。

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