まずは見てください
わさビーズはとにかく見た目のインパクトが大きい。
まずはこちらを見てほしい。
これが巷で噂のわさビーズである。
ツヤ感もサイズもまるでいくらのようだ。色を除いて。
これを一般的なわさびと同じ要領で、料理にトッピングしていただく。
見た目が派手だが、食べると味はしっかりわさびなのだ。
ツンとした香り、ピリッとした辛さ、食感こそ違えどこれは間違いなくわさびだ。
このわさビーズ、昨年12月の発売以来売切れ続出の大ヒット商品である。発売から半年経った今も、楽天市場の田丸屋本店のページを開くと「売切れました」の文字が表示されている。
「ほしいアイテム、ここにあったー!」というつかの間のよろこびのあと、まさかの売切れ…という地獄パターンのあれだ。
そんな大ヒット商品を生み出した田丸屋本店の開発担当者に話を聞けることになった。ここまでのヒット商品を開発した人なんて、さぞかし計算高い人だろう…
創業144年の老舗わさび屋 田丸屋本店がわさビーズを開発した理由
インタビュー場所として指定された静岡市駿河区にある田丸屋本店 静岡工場にやってきた。
工場だけだと思って行ったら、直売所や一般車両・大型バスの駐車スペースもある大きな施設だった。
今回話を聞かせてくれるのは、開発係長の松永さん。
開発係長だが、なんとあの大バズりツイートを起こした田丸屋本店のTwitterアカウントを運用しているいわゆる“中の人”も松永さんだそうだ。
気分は開発ですが…開発と広報、両方ですね。
なるべく費用をかけずに、TwitterなどのSNSはわたしが空き時間にやっている感じです。
12/22に「わさビーズ」が一般用に発売します‼大変おまたせしました楽天で予約受け付けてます‼20日までの受付で22日から発送をしますキラッキラのわさビーズ✨平成最後クリスマスに合わせたくて急ぎましたhttps://t.co/8b0D6P8h8y#田丸屋#わさビーズ#新発売#クリスマス pic.twitter.com/P3254xIjSC
— わさびの田丸屋本店@5/25.26感謝祭 (@tamaruyahonten) December 15, 2018
松永さんが運用する田丸屋本店のTwitter
わさび漬けですね。わさび漬けを中心として、チューブわさびやわさびふりかけ、ドレッシング、わさびの加工食品へと移ってきました。
歴史は長く、明治8年に初代 望月寅吉が静岡市新通りで佃煮や漬物の製造販売を行ったのがはじまりです。
その1年後、旧駿河国・伊豆地方・浜松県が合併して現在の静岡県が誕生した。つまり、静岡県が誕生する前に田丸屋本店が誕生していたのだ。
ちなみに、大日本帝国憲法が施行されたのは15年もあと。憲法よりも先輩。
販売し始めたのは昨年ですが、実は10年前から代表取締役・望月 啓行の頭の中には構想があったんです。
きっかけは、「わさびの辛みをいかに保つか」という悩みでした。
はい。わさびの辛みは揮発性があるので、熱にかけたり水に触れたりすると、辛みがすぐ飛んでしまうんです。生わさびをすっても、30分もすると辛みは消えてしまうんですよ。
そんな辛みを保ちたいということで、3年前まずオブラートのメーカーに相談したんですが、「できません」と断られました(笑)
わさビーズの中には、わさびオイルが入っているんです。わさびオイルは、静岡県産のわさびの色と香りを植物油脂に溶かし込んで作ったものです。被膜は海藻由来の成分でできています。
見た目はいくらに似ているんですが、わさびの辛みを閉じ込めるため、被膜はいくらより厚くできています。なので食感はゼリー状のものに近いです。今も技術開発を進めていて、被膜を薄くすることを考えています。
目指すはいくらです。
目指すはいくら…!
製造としては6月に設備の増設を予定しています。これで生産体制が1.8倍になるので、小売りはもちろん業務用としても大きく展開していきたいですね。
こちらへ来る前にJR静岡駅内にあるキヨスクで田丸屋本店さんのコーナーを見たら、やはりわさビーズだけぽっかり売切れていました。
楽天市場も売切れが続いているようですが、やはり再販売してもすぐに売り切れてしまうことが多いでしょうか?
アーティストのチケットみたい!
ちなみに…ここまでのヒットは予想されていましたか?あれだけの拡散を起こせるということは、狙って起こしたとか…?
正直予想していませんでした。ただ田丸屋本店の商品はお客さんの若返り化を図るため、ターゲットを30~40代の女性と設定しています。
そのターゲット像と、インパクトのある見た目と、SNSが相乗効果を起こしてここまで広がったのではないでしょうか。
望月社長は10年前から構想を練られていたということですから、それが商品化された時は喜ばれたんじゃないですか?
わさビーズ×スイーツの変わり種を食す
売切れ続出のわさビーズだが、この日は静岡工場の隣接する直売所「STEP IN たまるや」で運よく買うことができた。
取材しておいて買えなかったらマジでどうしようかと思った。
わたしたちのほかにも大型観光バスで来たお客さんが大勢買い物していたが、やはりわさビーズがある売り場はひと際にぎわっていた。
そしてこの直売所には「メゾン・ド・フリアン」という田丸屋本店がプロデュースする洋菓子店も入っており、わさビーズ×スイーツの変わり種商品も販売されている。
これは買うっきゃない!
わさビーズが乗ったわさびフロマージュと、わさびシュークリームを1つずつ買った。
わさびシュークリームは元々わさビーズは入っていないが、先ほど話を聞かせてくれた松永さんからわさビーズトッピングの方法を聞いたので、買ったわさビーズを早速開けその場でトッピングした。
外のベンチで準備していたら、直売店のスタッフさんが「中にインスタ映えする場所があるから!」と気を利かせて案内してくれた場所がこちら。
合成感がすごい…!でも、田丸屋本店のスタッフさんは皆とても親切にしてくれて、心が温かくなった。
場所も収まったところでわさびシュークリーム わさビーズトッピングバージョンからいただきます。
そう、わさビーズは被膜が破れ中のわさびオイルがしみ出た時に辛くなるのだ。
しかも1粒1粒がしっかり辛いので、写真映え重視でたくさん盛り過ぎると後で痛い目見ることになる。
松永さん曰く、一口3~4粒が限度とのこと。
人は辛いと笑うらしい。
わさビーズが想定していた以上に辛いことがおわかりいただける写真だ。
しかしわさびソフトクリームが世に出回っているだけあって、わさビーズ×スイーツの組み合わせもなかなかいける。
かわいい見た目とは裏腹に噛んだ後はしっかりわさびの辛みが口に広がるので、大人向けのスイーツという印象を受けた。
わさビーズは、さまざまなわさび加工食品を作り続けてきた老舗わさび屋 田丸屋本店がチャレンジし生み出されたからこそ、多くの人々の心をとらえた商品だということがわかった。
「辛み挑戦室」に入れる工場見学もおすすめ
静岡工場では、無料で工場見学もできる。
取材した日も、田丸屋本店の生き字引だといわれる元工場長・石塚さんが多くの観光客を案内していた。
田丸屋本店の歴史やわさびについて学ぶことができるが、中でも刺激的だったのが「辛み挑戦室」。
部屋の中に入りボタンを押すとわさびのツーンとした香りが部屋いっぱいに広がる、マジで挑戦的な部屋だった。