特集 2019年5月30日

近未来わさび「わさビーズ」開発秘話を開発担当者に聞いてきた

美しい見た目と裏腹にしっかりと辛いわさビーズ

Twitterで話題になりさまざまなメディアにも取り上げられている新感覚わさび「わさビーズ」。

まるでいくらのようにキラキラツヤツヤした美しいビジュアル。
わさびをビーズに閉じ込めるというこれまでにない発想。

なぜ、わさビーズが開発されたのか。
売切れ続出の現状をどのように受け止めているのか。

わさビーズを製造・販売している田丸屋本店に伺い、開発担当者に話を聞いた。

1988年静岡生まれ・静岡在住。平日は制作会社勤務、休日は大体浜名湖にいる。
ダイエット目的でマラソンに挑戦するが、練習後温泉に入り、美味しいものをたらふく食べるというサイクルを繰り返しているため、半年で10kg近く太る。

前の記事:言葉を失ったわたしのファービー


まずは見てください

わさビーズはとにかく見た目のインパクトが大きい。

まずはこちらを見てほしい。

これが巷で噂のわさビーズである。

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きれいな色してるだろ、わさびなんだぜ…

ツヤ感もサイズもまるでいくらのようだ。色を除いて。

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みどり色のいくら、といったところ

これを一般的なわさびと同じ要領で、料理にトッピングしていただく。

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ローストビーフ わさビーズ添え
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スモークサーモンサラダ わさビーズがけ
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ちらし寿司 わさビーズトッピング

見た目が派手だが、食べると味はしっかりわさびなのだ。

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辛…

ツンとした香り、ピリッとした辛さ、食感こそ違えどこれは間違いなくわさびだ。

このわさビーズ、昨年12月の発売以来売切れ続出の大ヒット商品である。発売から半年経った今も、楽天市場の田丸屋本店のページを開くと「売切れました」の文字が表示されている。

「ほしいアイテム、ここにあったー!」というつかの間のよろこびのあと、まさかの売切れ…という地獄パターンのあれだ。

そんな大ヒット商品を生み出した田丸屋本店の開発担当者に話を聞けることになった。ここまでのヒット商品を開発した人なんて、さぞかし計算高い人だろう…

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創業144年の老舗わさび屋 田丸屋本店がわさビーズを開発した理由

インタビュー場所として指定された静岡市駿河区にある田丸屋本店 静岡工場にやってきた。

工場だけだと思って行ったら、直売所や一般車両・大型バスの駐車スペースもある大きな施設だった。

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取材先が大きいと正直ちょっとビビる
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事務所入り口の取っ手がわさび!

今回話を聞かせてくれるのは、開発係長の松永さん。

開発係長だが、なんとあの大バズりツイートを起こした田丸屋本店のTwitterアカウントを運用しているいわゆる“中の人”も松永さんだそうだ。

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なんだか有名人に会った気分…
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今日はよろしくお願いします。
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よろしくお願いします。
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早速ですが、松永さんは開発の人なんですか?広報の人なんですか?
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気分は開発ですが…開発と広報、両方ですね。
なるべく費用をかけずに、TwitterなどのSNSはわたしが空き時間にやっている感じです。

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空き時間にやってあの大バズりツイート&フォロワー数はすごいですね!(やっぱり計算高い人に違いない…)

 

松永さんが運用する田丸屋本店のTwitter

 

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わさビーズが出る12月はフォロワーさんが4000人くらいしかいなかったのですが、わさビーズの効果もあって今1.3万人を超えています。
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わさビーズを発売する前の田丸屋本店の主力商品は何でしたか?
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わさび漬けですね。わさび漬けを中心として、チューブわさびやわさびふりかけ、ドレッシング、わさびの加工食品へと移ってきました。

歴史は長く、明治8年に初代 望月寅吉が静岡市新通りで佃煮や漬物の製造販売を行ったのがはじまりです。

その1年後、旧駿河国・伊豆地方・浜松県が合併して現在の静岡県が誕生した。つまり、静岡県が誕生する前に田丸屋本店が誕生していたのだ。

ちなみに、大日本帝国憲法が施行されたのは15年もあと。憲法よりも先輩。

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そんな老舗わさび屋である田丸屋本店が、わさビーズという尖った商品を開発した理由は…?
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販売し始めたのは昨年ですが、実は10年前から代表取締役・望月 啓行の頭の中には構想があったんです。
きっかけは、「わさびの辛みをいかに保つか」という悩みでした。

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「辛みを保つ」ですか?
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はい。わさびの辛みは揮発性があるので、熱にかけたり水に触れたりすると、辛みがすぐ飛んでしまうんです。生わさびをすっても、30分もすると辛みは消えてしまうんですよ。

そんな辛みを保ちたいということで、3年前まずオブラートのメーカーに相談したんですが、「できません」と断られました(笑)

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断られちゃったんですね…
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それからいろいろな所に出向いて、辛みを包み上げることのできる現在のわさビーズの技術を見つけ導入しました。もちろん田丸屋仕様になっています。
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「辛みを包み上げる」って、これまで聞いたことのない表現ですね。
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わさビーズの中には、わさびオイルが入っているんです。わさびオイルは、静岡県産のわさびの色と香りを植物油脂に溶かし込んで作ったものです。被膜は海藻由来の成分でできています。

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こんなに明るいみどり色もわさびによるもの
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見た目はいくらに似ているんですが、わさびの辛みを閉じ込めるため、被膜はいくらより厚くできています。なので食感はゼリー状のものに近いです。今も技術開発を進めていて、被膜を薄くすることを考えています。

目指すはいくらです。

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目指すはいくら…!

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正直、いくらがなかったらいいのになぁと思いますね。いくらが基準になっちゃうから!
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確かに、「いくらより厚い」とか「いくらよりプニッとしている」とか、どうしてもいくらと比べてしまいますね。
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いくらとめちゃくちゃ比較していた。すみません!
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今後の展望を聞かせてください。
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わさビーズの見た目から最初はおもしろがって買ってくれる人も多いと思いますが、一発屋では終わらせたくないですね。もう一度買いたいと思ってもらえる、リピーターを生みたいです。

製造としては6月に設備の増設を予定しています。これで生産体制が1.8倍になるので、小売りはもちろん業務用としても大きく展開していきたいですね。
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こちらへ来る前にJR静岡駅内にあるキヨスクで田丸屋本店さんのコーナーを見たら、やはりわさビーズだけぽっかり売切れていました。

楽天市場も売切れが続いているようですが、やはり再販売してもすぐに売り切れてしまうことが多いでしょうか?

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そうですね、その時の在庫状況やメディアへの露出状況にもよりますが、テレビで放送されて2分以内で売切れてしまったこともありますね。
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アーティストのチケットみたい!
ちなみに…ここまでのヒットは予想されていましたか?あれだけの拡散を起こせるということは、狙って起こしたとか…?

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正直予想していませんでした。ただ田丸屋本店の商品はお客さんの若返り化を図るため、ターゲットを30~40代の女性と設定しています。

そのターゲット像と、インパクトのある見た目と、SNSが相乗効果を起こしてここまで広がったのではないでしょうか。

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なるほど…(狙って起こしたわけじゃなかった!)
望月社長は10年前から構想を練られていたということですから、それが商品化された時は喜ばれたんじゃないですか?
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商品化された時より、売れた時の方が喜んでくれましたね(笑)
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わさビーズ×スイーツの変わり種を食す

売切れ続出のわさビーズだが、この日は静岡工場の隣接する直売所「STEP IN たまるや」で運よく買うことができた。

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あった~!よかった~!

取材しておいて買えなかったらマジでどうしようかと思った。

わたしたちのほかにも大型観光バスで来たお客さんが大勢買い物していたが、やはりわさビーズがある売り場はひと際にぎわっていた。

そしてこの直売所には「メゾン・ド・フリアン」という田丸屋本店がプロデュースする洋菓子店も入っており、わさビーズ×スイーツの変わり種商品も販売されている。

これは買うっきゃない!

わさビーズが乗ったわさびフロマージュと、わさびシュークリームを1つずつ買った。

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こちらが例のブツです…

わさびシュークリームは元々わさビーズは入っていないが、先ほど話を聞かせてくれた松永さんからわさビーズトッピングの方法を聞いたので、買ったわさビーズを早速開けその場でトッピングした。

外のベンチで準備していたら、直売店のスタッフさんが「中にインスタ映えする場所があるから!」と気を利かせて案内してくれた場所がこちら。

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富士山&茶畑のThe・静岡パネル

合成感がすごい…!でも、田丸屋本店のスタッフさんは皆とても親切にしてくれて、心が温かくなった。

場所も収まったところでわさびシュークリーム わさビーズトッピングバージョンからいただきます。

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ん!そこまで辛くな…(プチッとわさビーズがはじける) 辛い~~~!

そう、わさビーズは被膜が破れ中のわさびオイルがしみ出た時に辛くなるのだ。

しかも1粒1粒がしっかり辛いので、写真映え重視でたくさん盛り過ぎると後で痛い目見ることになる。

松永さん曰く、一口3~4粒が限度とのこと。

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わさびフロマージュも
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うん、おいしいけどやっぱり辛いね!

人は辛いと笑うらしい。

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同行していた橋田さんもこの顔…!

わさビーズが想定していた以上に辛いことがおわかりいただける写真だ。

しかしわさびソフトクリームが世に出回っているだけあって、わさビーズ×スイーツの組み合わせもなかなかいける。

かわいい見た目とは裏腹に噛んだ後はしっかりわさびの辛みが口に広がるので、大人向けのスイーツという印象を受けた。

わさビーズは、さまざまなわさび加工食品を作り続けてきた老舗わさび屋 田丸屋本店がチャレンジし生み出されたからこそ、多くの人々の心をとらえた商品だということがわかった。


「辛み挑戦室」に入れる工場見学もおすすめ

静岡工場では、無料で工場見学もできる。

取材した日も、田丸屋本店の生き字引だといわれる元工場長・石塚さんが多くの観光客を案内していた。

田丸屋本店の歴史やわさびについて学ぶことができるが、中でも刺激的だったのが「辛み挑戦室」。

部屋の中に入りボタンを押すとわさびのツーンとした香りが部屋いっぱいに広がる、マジで挑戦的な部屋だった。

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本気で泣いた
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