近江神宮の帰りに見かけた看板がこちらだ。
これは……気になるじゃん。石碑には700m、徒歩15分とある。情報を鵜吞みにし、「サクッと行ってみるか」と歩き出したのだが、これから「想像してたんと違う」に、苛まれることになるのであった……。
少し行くと、宇佐八幡宮の遥拝所があった。
遥拝所というのは遠く離れた神仏に遠くから拝むために作られる。遥拝所があるということは……? とこの時点で何か気づくべきだったのかもしれない。この時はまだ楽観視していた。
300mまでもずっと坂だな……とは思っていたけどまあせいぜいあと400mだし、余裕でしょと思っていた。でもこのあたりから急に道のりが険しくなっていく。
坂を上り続け、ようやく何か見つけた。この時点で既に息が切れている。
この地に居を構えた源頼義は、神鳩の導きでこの地に八幡宮を創建した。御足形にはその時の神鳩の足の跡が残されているそう。
そしてこの御足形を現在地として、神社までの地図を確認したら、まだかなり手前の場所にいた。さーっと血の気が引いた。
日が長くなったとはいえ、こんな山の中で夕闇が迫っているし、ここまでも来るのも結構必死だったのにさらに上に進まなきゃならないの、今日はもう無理では……?
もう引き返そうかとも思ったが、とりあえず(比較的)近くにあった「金殿井」まで進むことにした。
ここからすぐです、とは書いてあったがまだ上がる必要がある。ここまでで既に体力が残り少ない私にとって「すぐ」の範疇からは外れていた。
金殿井は、近江大津宮にいた天智天皇(中大兄皇子)が病になった際に、この水を飲んだら病が完治したと伝わる霊泉が湧く井戸だ。
今も水が湧いているのかはわからなかったが、近づいたらカエルの合唱……というかこれカエルなのか? というバリエーションに富んだ鳴き声が聞こえた。ぜひ聞いてみてほしい。
神水が湧く金殿井から聞こえた鳴き声?はカエルでいいのかな?
— 井口エリ?(ちぷたそ) (@chip_potekko) April 21, 2023
最後の高い声は本当にカエルなの…これ…? pic.twitter.com/U342W104do
コッコッコッみたいなのはまだわかるけど、高い声でミイ、みたいなのははじめて聞く感じの鳴き声だ。しかも周囲には自分以外誰もいない山の中で聞いている……。怖すぎるでしょ。
でも、イスのある金殿井で一休みをしたことで少しだけ体力が回復した。「もうこちらに来る機会はないかもしれない……せっかくだから参拝しよう!」と奮い立たせ、神社まで進むことにした。頑張るぞ。
ひたすら山道を行く
これまでも傾斜がきつかったが、神社に近づくと道のりがさらにきつくなった。
誰もいないことをいいことに、一歩一歩必死の形相で踏みしめた。私、今何でこんなことになってるんだろ……汗が止まらない。
長かったがこの階段を登り切れば神社だ……! こうしてなんとかたどり着いた宇佐八幡宮は、こんな神社だった。
「ほぼ山登り」の果てに宇佐八幡宮へ到着
ええ~~~!? すっごい素敵な神社だ大津の宇佐八幡宮……! 空気は澄んでいて山の中というロケーションも最高だし、そして何よりもこんな素敵な神社なのに、人っ子ひとりいない(道のりが過酷だから?)。このロケーションを独り占めだ。
ここ以外にも大津の神社を何社か参拝したが、この神社のように拝殿の前に神楽殿がある神社を多く見た。
関東ではあんまり見ないタイプなような……!
ゆるい土鳩がいっぱいの境内を見ていく
そんな宇佐八幡宮は土鳩信仰の神社で、あちらこちらにゆるくてかわいい土鳩モチーフを見つけることができた。
おしりの羽毛がホワホワしているのかわいいね。よく見ると阿吽の土鳩になってるのだ。
絵馬もかわいい。駅とかで見かけるあの身近な鳩である土鳩を、赤と水色で表すの、ポップですごい……!
子どもの守神として信仰されている宇佐八幡宮。本殿の横にずらっと並ぶ土鳩の土鈴には、子どもの名前と年齢が書いているものもある。
参拝時は自分以外誰もいない神社で、神職さんもいなかったが、境内は掃除したてのようにきれいに整備されていた。
そして参拝の時に見つけたのがこれ。
感染症対策で鈴尾がない神社は珍しくなくなったが、代わりに箱が置いてあった。これは……?
鈴の音が誰もいない神社に響き渡る。急なハイテク装置に驚いた。
そして人がいないので御朱印もあきらめていたが、書置きの御朱印が書類ケースに置いてあった。
初穂料を賽銭箱に納めるタイプの神社で、特に地方で稀に遭遇する。そんなわけで無人だったが御朱印もいただけたのだ。嬉しい!!!!
こんな素敵な神社を貸し切りのようにゆっくり楽しめるなんて……! ここまで来るのに大変な思いをしたが完全に報われた。
ネット上にここの道のりについて言及している情報がそこまでなかったので書いたが、本当に行って良かったし、大変だったのも含めて思い出に残った神社だ。
たどり着くだけで大変だったが、宇佐八幡宮の9月の例祭「夜祭」では神輿で坂道を上り下りを繰り返しつつ麓の遥拝所まで渡御をするらしい。行くだけであんなに苦労したのに、神輿で……?
いつか見てみたい気持ちと、またあの道のりを行くのか……の気持ちがせめぎ合っている。でも、やっぱりここにはまた行きたい。