いよいよ「焼き」段階に入る
さてさて、ここから料理は佳境に入る。
ここでもう一人、スタッフが増えることになった。先ほどハニーマスタード事件で頭角を現した馬場さんの奥さまである。
スタッフが増えて、知らない単語と的確な意見が飛び交うようになったキッチン。僕はどこにいるかというと。
ここだ。
馬場さんも奥さんも二人とも料理が上手で、自宅でパーティーなんかするときには交代で料理を作ってお客をもてなすのだという。いま感情を抑えてここまで書いたが、最後にひとこと言おう。いいな。
馬場さんの奥さんはいう。「私が物を片付けないといつもこの人(馬場さん)、ここが工場だったらケガ人出てるぞ、って言うんですよ」と。もちろん本気で言っているんじゃない、愛ある冗談である。いいな。
でもすいません!今はこのトーファーキーの方に目を向けてもらっていいですか!
水切りしておいた豆腐をクッキングシートの上に広げ、中に詰め物をいれて巻いていく。
難しい作業だが、馬場さんにかかれば丁寧かつスピーディーに形になっていく。
この段階、豆腐が柔らかいので慎重にしないとぐしゃぐしゃに混ざってしまう。僕がやったらたぶん豆腐の和え物になっていたに違いない。
初めての料理なのにこの手際の良さはなに!
あとは成形した「トーファーキー」の表面にソースをたっぷり塗り、グリルで焼いていくだけだ。
もう完全に後ろから写真を撮る係になった。
馬場さんと奥さまはさすがのチームワークで次々と仕事をこなしていく。
僕にも何か仕事ないかな、と思ってみていたのだけれど、特にすることはなさそうだった。ぎりぎり写真を撮る仕事が残っていてよかった。
一度焼いたトーファーキーを取りだしてソースを塗ってまた焼く。
これを繰り返すときつね色の焼き色が付く。良い香りが漂ってきた。
馬場さんの家のグリルは中に小型のダッチオーブンを収納できるようになっており、これで焼くと強力に全面から火がとおるのだ。
使い道とかよくわからないが、もう僕の手に負える段階では無くなった、ということだけはわかる。くやしいのでグリルについて自分の物のように自慢げに書いてみた。
余熱も使って焼くこと1時間。その間に数度取りだしてひっくり返したりソースを塗ったりした(馬場さんが)。
そしてついに、トーファーキーが完成したのだ。
「たぶんこんな感じじゃないですかね」
パリパリに焼けた表面からは、何度も塗られたソースがしみこんでえもいわれぬ良い香りが漂ってきている。見た感じ巨大ながんもどきのようにも見えるが、色とか表面の質感なんかは確かに肉のそれに近いものがあろうか。
これがトーファーキーだ。
トーファーキーー。
完成、そして実食
ターキーを模した豆腐料理、ということで正直あまり味の方は期待していなかったのだけれど、はっきりいってこれはすごい美味そうだ。
さっそく実食させてもらう。
馬場さんがいつもビール飲んでいる場所に座らせてもらった。
自家製トーファーキーは豆腐の部分がジュワッとジューシーで、詰め物と一緒にほおばるとハーブの香りがふんわりと広がって口の中がお祭りになった。
味付けが味噌、しょうゆ、ごま油、と和風なためか、豆腐の風味ともベストマッチなのだ。照り照りに焦げた表面の香ばしさもまた絶叫もの。
正直ターキーの代用になるのかと言われると、そうとは思わないが、これはこれとして、とても旨い料理だと思う。
馬場さん、ありがとうございました。
ターキーじゃないけどトーファーキーは美味しい
馬場さん夫妻からもコメントをいただきました。
・肉の食感を目指すなら外側の豆腐にクルミとか椎茸なんか入れるといいかもね
・食感も味も、日本人としてはすごく美味いのだけれど、これでアメリカ人が満足するんだろうか
・料理としては非常においしい。でもターキーの代用としてはどうなのか、とも思うね
馬場さんが「せっかくだからクリスマスっぽくしよう」って言って持ってきたポインセチアがでかい。
つまりトーファーキーはうまい、でもターキーではない、という結論でよいだろうか。僕は正直ターキーよりもこちらの方が好きです。
今回の件でいろいろ思うところがあったので、この後家に帰って妻に「これからは週に一度はおれが弁当つくるから」と宣言したのでした。メリークリスマス。