カラシじゃない
豆腐の水切り以外、馬場さんのアドバイス通りにここまで順調にいっていたのだが、ソースを作る段階でまた場が止まった。
どうした。馬場さんは僕が買ってきたカラシを持っているのだが、違ったか。
「安藤さん、これって和がらしですよね。こんなのレシピに書いてないですけど」と。
いやいや、ハニーマスタードって書いてあったので、ハニーとマスタード、つまりハチミツとカラシを買ってきたのだ。ち、違いますか。
いくらか誤解はあったが、その後はすばらしい手際の良さでソースを作っていった。
ソースは味を決める大切な部分だからだろうか、ほとんど馬場さんが作ってくれてしまった。
ちなみに馬場さんは結婚するまではまったく料理をしなかったらしい。それなのに結婚した瞬間からいきなり弁当なんて作れるものなのか。
「やればなんとかなるもんですよ」
と言っていたが、200キロとか走っちゃう人に言われてもにわかに信じられないものがある。