デジタルリマスター 2022年5月21日

東京崖っぷちツアー(デジタルリマスター)

拝啓、崖の上から

崖という非日常に憧れる。

四つんばいになって下をのぞき込む。ぱらぱらと落ちる小石。砕ける波しぶき。途中に咲く可憐な花。

しかし崖は遠い。

と思っていたら都内にもけっこう崖っぽいところがあるじゃないか。近場で崖っぷちを巡ってみることにしたんだ僕は。

2005年12月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:ガラスに映ってポール・モーリアになりたい

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いい崖の調べかた

東京のどこに崖があるか。「いい崖、しらない?」といろんな人に聞いてみたがあいまいな返事しか帰ってこなかったので地図で調べることにした。

使ったのは「数値地図 5mメッシュ(標高)」という地形データとカシミール3Dというソフトウェア。

この2点で都内の標高を立体的に見ることができる。会社の近所で目についたのが池上本門寺。小高い山になっており、その周りは崖だ。

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池上本門寺周辺。周囲に崖。地図上では標高差190mと表示されていた。崖じゃん!

しかもカシミール3Dには鳥瞰図を作る機能があり、それでみるともうなんだか中国の奥地みたいな映像が出てきたのだ。おおお。まじこれ?超すげえ。

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立体表示すると「ウーロン茶のふるさと」みたいな場所になっていた。

とりみだして若者言葉になるぐらいすごい。うずうずしてきた。池上の崖を堪能してこよう(ふつうの地図だとこのあたり)。

Data
数値地図 5mメッシュ(標高)
カシミール3D
本記事の地図は上記を使用しています

これが大田区の崖だ

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本物はこんな感じの崖でした

実物はあんな岩山ではなかったが神社の奥に山が迫っている。その斜面はけっこう崖だ。転げ落ちたら痛そうだ。

崖のそんな暴力性にどきどきしつつ崖を登る。崖を登る、といっても大田区は住宅街ですので、階段があるわけですね。崖の非日常性に惹かれるわけだが、こういう便利さはウェルカムだ。

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階段が整備されている崖。

いちばん高いところから見下ろすと、ビルの4階から下を見たような高さがある。崖だ。住宅街にあるまじき断絶。

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崖だな…。

冬ということもあって写真が地味だ。企画に不安を感じつつも大田区にはもう一箇所、ナイス崖スポットがあるので移動します。 

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この特集、地味じゃないか。

お金持ちしか見れない崖

山王だ。山の上にできた住宅街であちこちに急な坂や階段がある。町のあちこちにコンクリで固められてはいるが崖もある。地図で見てもこんな崖っぷりだ。

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山だ。まわりは崖だ。

だけど高級住宅街なので崖のうえにはでかい家が建っているのだ(本人的には崖の上じゃなくて丘の上だと思っているだろうけど)。

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右手にコンクリで固められた崖。
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崖の上にでかい家
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僕は見上げるのみ

崖からの景観を楽しめる場所がほとんどない。僕はただ下から見上げるだけだ。

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坂の多い町なので電動自転車に乗ってる人が多かった。

崖から見下ろしたい

崖は神社やお金持ちの家という特別な意味がついてしまうのか。

もっとオープンな崖はないものか。

僕の実家方面に行ってみることにします。

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マイホームタウン板橋

僕は練馬と板橋の境目のあたりの出身なのだが、板橋の公園に行くときに急な坂が多かったのを覚えている。自転車で下るのが楽しかった(地図だとこのあたり)。

カシミール3Dで見るとたしかにすごい高低差だ。

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東武東上線の上板橋と東武練馬のあいだの北部の地形。3D表示すると…。
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探査機が送ってきた写真、じゃなくて板橋区。

板橋は多摩から23区にかけて広がる武蔵野台地という台地の端にあたるらしい。東京のはじっこだと思っていたが、そんな由緒あるはじっこだったとは。

ちなみに3D表示させると火星みたいになった。ここに生物が!?と思うような場所だがだからそれは実家だ。

ここならいい崖あるかもしれない。

板橋3Dタウン

東武練馬の駅から崖を探して歩く。

町は立体的に入り組んでいる。エッシャーの描く城のようだ。こっちの階段を上がるとあっちの道路の坂をくだったところにたどり着いて…、みたいな。

たとえば下のマンション。片方から見ると3階建てのように見える。脇の階段を下りて反対側から見ると8階建てなのだ。

ずいぶん埋まっている。

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こちらからみると3階建てですが
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脇の階段よこにずっとマンションが続いてて
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反対側から見るとこんなに高かった
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別の階段沿いに立つアパート。何階建てなのかよくわからない
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長崎のような路地が続く

いい旅がけ気分

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お、いい崖

たしかにいい崖がある。

コンクリで固められたものもあれば、土がむき出しのものもある。

山王のように崖のうえをお金持ちが占領しておらず、空き地だったり公園だったりするので崖の上からの景観を満喫できる。オープンでフリーダムな崖である。

崖マニアは板橋に行くといいよ!

誰に言うでもないことばをここに記すよ。

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崖の上で手を振る僕

ガケガケ言って誰もついてきてないんじゃないかと不安になるがなにしろ崖っぷちツアーだ。答えは既に出ているので気にせず次のページへ進みたまえ。

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崖鑑賞の姿勢

崖はやっぱり腰が引けた姿勢で鑑賞したい。四つんばいで下をのぞき込むのもいいだろう。

板橋の崖にもそれで臨む。

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トラディショナルなへっぴり腰
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「おおお、超こええ」
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「キャホー」

ちょっと人んちをのぞき込んでいるようだが、見ているのは地面。建物の2~3階建てはあるような高さだ。

いまでこそコンクリで固められているけれど、かつては荒々しい崖だったんだろう。崖の途中に花も咲いていたかもしれない。

武蔵野台地のはじっこにいるんだと思うとへっぴり腰にも力が入る。

いたばし崖ミュージアム

このあたりは住宅が密集しているため、ところどころに空間を作る目的で小さな公園が意図的に作られている。

その公園がこれまた崖鑑賞に最適なのだ。段々畑のように公園が階段状になっているところもあった。上を見ても下を見ても崖なのだ。どこを向いても崖ばかり。

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公園の背後に崖。崖の上も公園。
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のぞき込むと
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眼下にまた公園

どこを向いても崖ばかり、ってかなり閉塞的な状況のようだが、断崖マニア的には横浜ラーメン博物館ぐらい楽しい。

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崖もおもしろいがこの猫の顔もおもしろい

新宿の崖

山手線のなかにも崖は存在する。なかでも新宿区と文京区の境界の神田川沿いはけっこうな崖である(ふつうの地図だとこのあたり)。

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中央やや下を横切るのが神田川。その上は、崖だ。

崖は公園になっているので(江戸川公園)、崖に触れて楽しめるかもしれない。

行ってみるとたしかに崖だ。しかも、園内に崖に登ることを禁じている看板があった。区が崖であることを認めている。オフィシャルな崖である。

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実物はコンクリでソフィスティケイテッドされた崖だった。
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区も崖と認める。

実はこれまで、僕が勝手に崖と呼んでいるだけで実は斜面なんじゃないか?と不安に思っていたのだが(そしたらこの企画自体がだめじゃん)、これで安心だ。ここは崖だ。

しかし看板の通りここは登ってはいけない崖。猫だけが誇らしげに崖の上からひとを見下ろしていた。

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「登るにゃよ」

隣に

コンクリの崖は禁止されていたが、その先にあった土の崖には特になにも注意書きがなかった。ここに登って崖を全身で味わうことにしよう。

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ここは登れる

なかなかの斜度だ。この前の板橋区で3時間ぐらい階段を上り下りしていたので足がぷるぷる震える。弱い。そして枯れ葉が意外に滑るのだ。わしゃしゃしゃしゃと滑って踏ん張りがきかない。

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崖のなかから。枯れ葉で足が滑る

あと、都会の公園なのでどこに犬の糞があるかわからないというメンタルな不安もつきまとう。

たどり着いたのはコンクリ製の崖の中腹。都内の崖をまわってみていちばんの崖らしい高さだった。四つんばいのポーズを撮ろうとしたが、なだらかに傾斜しているのでできなかった。

ほんとうに危険だとあの格好はできないんだね。

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ちょっ、ちょっと高いな。
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なに照れてんだ

東京にも崖はある

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椿山荘

神田川ぞいの崖は椿山荘(結婚式場)に続いている。椿山荘の庭園のなかの崖は大手資本の庇護のもとわかりやすい崖であったが立ち入り禁止だった。よじ登りたかったが残念だ。

なんかおれ、いま崖っぷち、と思ったらリアル崖っぷちに立ってみてどっちが勝ってるかを比べるのも一興かもしれません。なにも解決しませんが!

(崖見物の際は、転げ落ちたり危険な場所に入らないよう注意してください。)

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