デジタルリマスター 2024年6月7日

東大模擬試験(デジタルリマスター)

東大入試プレ問題 論文1 (150分 200点)

次の文章を読み、後の設問に答えなさい。

Sifts in the primary means of production mark the great turning points in society,and,……以下略

設問1.
西洋におけるコミュニケーションの様式は古代から現代に至るまでどのように推移し、それに伴ってどのようなことが起こったと筆者は言っているか。300字以内の日本語で述べなさい。句読点も1字に数える。

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この他に「親身な指導」っていうのもありました

 

→住解答

 口承伝達による物語りが示されるようになったのが紀元前5世紀。
 そのコミュニケーションの流れを大きく変えたのが16世紀、グーテンベルグによる印刷技術の発明だ。活字と印刷の登場はマスコミュニケーションの登場であり、人々の生活様式、思考形態に影響を与え、又それを形成してきた。その後5世紀に渡り活字・印刷によるコミュニケーションはそれまでの口承伝達による手段を包括しそれを全く否定する訳ではなく発展してきた。そして現代、コンピューター技術による通信という新たなコミュニケーション手段が発達し、人々の生活様式にグーテンベルグ以来の衝撃を与えている。

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見合って


→林解答

 紀元前5世紀に口述の物語が記述されるようになった。その後16 世紀にグーデンベルグにより活版印刷が発明され、旧来のヒエラルキーを破壊した。印刷の時代になっても口述コミュニケーションがなくなるわけではなく、有効な手段であり続けた。現代においてはコンピュータ技術の発達により、グーデンベルグなみのインパクトをコミュニケーションに与えている。新しい技術は人々の考え方、コミュニケーション方法を新しくし、世界を変える。印刷を好む人たちからはその考え方に反対している。

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アンゴラやぎ

 

設問2.
コンピュータを用いた情報のやり取りが優勢になった現在、活字文化にこだわり続けることについて筆者は懐疑的な見解を述べている。その筆者の主張をふまえた上で、次のA、Bの指示にしたがって、それぞれ600字以内の日本語で述べなさい。句読点も1字に数える。

A. 筆者の主張に賛成する立場に立って、賛成論を展開しなさい。

B. 筆者の主張に反対する立場に立って、反対論を展開しなさい。

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1230名もいるなんて……

 


→住解答

A.
 グーテンベルグ革命後の活字文化は、それまでのコミュニケーション 形態の発展形として存在し得た。つまり口承伝達から手書き、そして 活字文化という推移において、根本的な差異は見当たらない。 思考の単一性・一方向性・普遍性という要素を内包している。それは 大量生産・大量消費というシステムが確立した事の象徴として活字文化 を取りあげる事も出来る。

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ハッケヨイ

 しかし、今日のコンピューター、特にインターネットによる情報のやりとりの中でそれまでの様な思考の単一性・一方向性・普遍性といった要素を見つける事は難しい。コンピューター上に表示されるテキストは多次元であり双方向であり、更に時間軸を持っている。レディメイドな文節、それだけに対して存在価値は見出せない。送り手と受け手、という活字文化では成立していた関係性もあいまいになっていく。しかしながら、それは表面的な現象に過ぎない。活字文化とコンピューター文化との決定的な違いは我々市民の意識の中にある。 科学技術の発展に伴い市民の要求は推移してきた。物を欲す時代、お金を欲す時代。それらはやはり活字文化によって支えられて来た。そして今日、人々は「関係」を求める時代に入って来ている。その要求を満たすツールとしてコンピューターの存在は必然である。それはそれまでの活字文化を否定する事につながる。

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下手投げ

B.
午前中の試験が終わりマックでランチ。
僕「あの問題、賛成にしました?反対にしました?」
林さん「えっ!あれって両方書くんでしたよね」
僕「えっ!」
という訳で僕は問題の意図を勘違いし、反対論を書きませんでした。
マイナス50点です。

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→林解答
A.

 人間の考え方はコミュニケーションに規定される。虹の色の数が 国ごとに違うのは有名な話である。色を表現する言葉が言語によっ てことなるからである。言葉にない色は<見えない>のである。こ れは端的な例だが、コミュニケーションは自他の関係はもちろん、 自分という内部の基盤になっているものなのである。

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深夜の新小岩駅前のパンダ

 活字文化では、情報を伝えるものとその内容は一体であったが、コンピュータによってはじめてそれが区別された。ハードウェアとソフトウェアのメタファーによってである。本では、本そのものと内容を切りはなすことはできないものだった。それが今では別物であるなんて活字文化では想像もし得ないことだろう。いまではメディアとコンテンツという語によってそれらは区別されている。
このように活字文化ではありえない考え方が一般的になっている 。

 高度成長期に家電が普及して主婦が自由に使える時間が増えたように技術はライフスタイルを変え、世界と自分の関係を変えてゆく。その環境にあったコミュニケーションの方法を模索すべきである。コミュニケーションの方法が変わった以上、人々の考え方がかわるのは当然である。

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蒲田東急プラザ屋上のぶた

B.
 コンピュータ技術といっても情報をやりとりのベースになっているのは文字である。コンピュータのスクリーンにうつる文字を読んでいるのだ。文字のほか、音声や映像による表現ももちいられるだろうが、ものを理解するということは文字を読むことである。
 分子構造を3次元でモニター上にうつし、閲覧者が自由にうごかすコンピュータがあったが、動かすおもしろさと分子構造を理解することは別である。文字による知識があってこそ、映像による表現が理解できるのだ。

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大森のはとたち

 コンピュータによるマルチメディア技術には、見た目の派手さで理解した気にさせる力をもっている。見えないものを見えるようにする。一般性をもたせることで、活版技術がもたらした以上のものを与えるような気にさせる。しかし、まさにそれこそ、コンピュータによる情報のやりとりの得意とする点である。

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これ以降、時間がないので下書きせずに解答用紙にいきなり書きました。
以下が余白に走り書きしてあった。

・文字による説明がないと象をみてもアフリカゾウかインドゾウかわからない。
・文字について考えるとき、活字文化のコミュニケーション方法が有効である。

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川崎駅前で飼い主を待つ犬

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