特集 2019年5月10日

昭和ファンシー紙袋の偽物を作って本家に見てもらった

偽ストップペイルと、本物ストップペイルの邂逅。

知り合いの古文房具屋さんが、SNSで「ストップペイルのパチもん包装紙を見つけた」と写真付きで呟いているのを見て、「おおっ!」となった。

このパチもんストップペイルがとてもゆるくて面白かったのだ。

じゃあ僕も対抗して偽ストップペイル作ろう!っていうのがいつものデイリーポータル的な流れなんだけど、今回はそこからなぜか「本家ストップペイルのデザイナーさんにインタビュー」ということになってしまったのだ。

なにがどうしてこうなった。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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ストップペイルって、これですよ

ところで、そもそも『ストップペイル』って聞いて「あー、はいはい」と応えられる人はそんなにいないと思う。

でも実物を見たら、30代~50代の人なら結構な確率で「あー、はいはい」となるんじゃないか。紙袋/包装紙で、赤枠で仕切られた中にかわいいものがいっぱい並んだ柄の名前が、ストップペイルなのだ。

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見たことないですかこれ。あー、はいはい、ってなるでしょ

昭和の頃は、全国の学童系文房具店とかファンシーショップで使い倒されていたので、記憶に残ってる人はわりと多いはず。

僕は昭和48年(1973)生まれなんだけど、小学校近くの文房具屋で消しゴムとか買うと、だいたいこのストップペイル柄の紙袋に入れて渡してもらっていた。

そういうウキウキ気分の買い物の記憶と直結してるので、いま改めて見ると身震いするぐらい楽しくなってくる。

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昭和ファンシーの煮こごりか!というほどにファンシー極まった柄。かわいい。

墨赤の2色印刷で、赤のぶっとい枠に、昭和の女子児童が好きそうなものやキャラのかわいい絵、謎のローマ字。

当時、少女漫画でコマ外に作者のセルフツッコミや近況報告をローマ字で書くのが流行っていたので、謎ローマ字はその流れなんだろうな。

(ファンシーイラスト神こと水森亜土さんもローマ字多用していた)

とにかく全方位的にザ・女子という雰囲気の紙袋なんだけど、僕ら男子も「うーん、まぁ文房具屋さんの紙袋ってこういうもんだよね」ぐらいで受け入れていたような気がする。

というか、昭和40~50年頃って、こういう雰囲気のイラストが社会的に溢れていたので、違和感も感じなかったんだろう。

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底に『ストップペイル』って書かれていたけど、当時はそれが柄の名前だとは気付かず、こういう紙袋のことを英語でストップペイルと言うのかな?ぐらいに思っていた。

対して古文房具屋さん(以前に『鉄板に鉄板ギャグを書く』記事でもお世話になった中村文具店)が見つけてきたパチもんストップペイルはこちら。

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パチもんは本物よりイラスト豊富(20柄)。そして壮絶にゆるい。

うむ。本物と比べると見事なゆるさ。

赤枠にイラストにローマ字という文脈はきっちり踏まえているので、遠目にはちゃんとストップペイルなんだけど、そのイラストの雑さ、ローマ字の適当さがすごい。

線もガタガタだし、猫のキャラクターも「うーん、ギリだよ?」というぐらいでギリギリ猫だと分かるレベル。全体的にちょいちょいスペルミスもある。

ここまで徹底的にゆるいと、逆に嬉しくなってくるな。

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かわいい猫(左)と、猫的ななにか(右)。パチ側の仕上がりの低さに震える。

あと、本家のイラストからちょいちょいデザインをいただいてきてるのも、パチもん感があって楽しい。

例えば本家ストップペイルで「猫がママのお手製エプロンを着ようとしてるイラスト」が、パチもんでは「猫がおニューのドレスを着ようとしてるイラスト」に変わっている。

パチ絵の完成度が低すぎて気付きにくいけど、構図的には結構キワキワなラインだぞ。

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模写にしても普通にヘタだなキミは、という素直な感想。

こちらは、ストップペイルという名前の由来になったと思しきバケツ(Pail)のイラスト。完全に丸パクりかと思いきや、ローマ字をよく読むと本家が「お砂遊び」なのに対して、パチは「泥んこ遊び」になってる。

微妙に変えてきたな。そして変えたからセーフだと思うなよ。

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思わず「そう来たか!」と膝を打ったパチ側の改変。

個人的に最高なのは、本家の「瓶入りの星形キャンデー」がまるっとそのまま「星の砂」になってるところ。

沖縄が本土復帰(1972)して観光地としてメジャーになった頃に、お土産物として瓶詰めの星の砂がブームになった時期があったのだ。

それにしても「ピカピカ」とはどういうことだ。星の砂、光らないぞ。

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パチにおける、「リンゴ・ニンジン・トマト」の怪物体っぷり。どれひとつおいしそうじゃないのもいい。

こちらは一見するとパクりに思えないが、実は本家のうさぎの足元にあるバスケットだけを抜き出して、別の柄にしてしまっているのだ。

ちなみに本家のバスケットの内容は「ニンジン・リンゴ」で、パチは「リンゴ・ニンジン・トマト」。サービスで一品足しときましたとでも言うつもりか。

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結局のところ、なんでリンゴの木に星なのかは謎だな。

唯一、本家の方に待ったをかけたいのが「アップルツリー」だ。

なぜかAPPLEと言いつつ、木に鈴なりになってるのがリンゴではなく、星。ローマ字も「ピカピカ、ピカピカ、食べたいな…」という謎コメントである。

もちろんパチの方も、果たしてリンゴなのか確信を持ちづらい仕上がりではあるけれど。

…と、こういう楽しいのがいくらでも見つかるので、眺めていてもまったく飽きることがない。

これだけ楽しいと、そりゃ「わー、僕もパチもん作ってみたいー!」って気持ちになるだろうよ。

なので、作るよ。

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