名店の味は確かでした
ここの天ぷらもやはり衣がふわふわしていた。そしてその塩味の衣が相当分厚いので中に何が入っているのかは食べてみないとわからない。イカも魚もみな同じに見えるのだ。天ぷらとアンダギーを計4種類買ったのだけれど、歩きながら全部食べてしまった。食べはじめたらもう止まらない。
オキナワンファーストフード、天ぷら。これからも行く先々でついつい食べてしまうと思います。
呉屋てんぷら屋 沖縄県那覇市松尾2-11-1 |
天ぷら、と聞くと僕はちょっと高級なお店を連想してしまう。カウンターなんかに座って目の前で大将がからっと揚げたてを皿の上に乗せてくれるのだ。それに抹茶塩なんかをちょっとつけて上品に頂く、そんなイメージ。
しかし沖縄では天ぷらは完全に庶民の味方だ。1個40円くらいでばら売りしているので学校の帰りにだって食べられる。まさにファーストフードの王道なのだ。
※2007年2月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
町の天ぷら屋ではだいたい1個40円から50円くらいの価格で天ぷらを買うことができる。簡易包装なので歩きながら開けて食べるのにちょうどいい。事実僕は最近小腹が減ると目についた天ぷら屋にふらっと入り、2~3個買って歩きながら食べている。沖縄における天ぷらはおかずではなくお菓子と思ってもらったほうがいいのかもしれない。
天ぷらをとりまく環境もさることながら、天ぷら自体も他県とは少し様子が違う。衣がふわふわしていてとにかく分厚い。もともとからっと揚がったものが時間が経ってやわらかくなったのではなく、元々そういうものなのだ。そして衣自体に塩味がついている。
町には天ぷらを売っている店がたくさんある。それも特に天ぷら屋というわけではなく、弁当屋さんだったり魚屋さんだったり漁協だったりする。
特に魚屋では天ぷらが売られている確率が高い。思うに、新鮮なうちは刺身で売って、ちょっとあやしくなってきたやつから天ぷらにしちゃうんじゃないか。事実関係は確かではないが、まあそれは無駄がなくてよいことだと思う。
こちらの鮮魚店にも店頭に「そうざい、たこやき、てんぷら」と書かれている。一瞬も魚の宣伝をしていないところが好きだ。
店内には大きなショーケースが真ん中で二つに分かれていて、片方には鮮魚が、もう片方には天ぷらが並べられていた。あいにく天ぷら部門はほとんど売り切れだったが。
天ぷらはイベントでも十分に主役を張る。先日、となり町の産業祭りへ行ってきたのだけれど、出店でもやっぱり天ぷらが人気だった。
こちらのお店の天ぷらは10個で500円。内容はもずくとイカ、そして魚。そう、沖縄では「魚の天ぷら」という商品をよく見かけるのだけれど、なんの魚なのかは誰も知らない。
出店の天ぷらはその場で揚げられ、モリモリに盛られて出てくる。それを待ち構えていたお客が群がるようにして買っていくのだ。で、だいたいそのへんで開けて食べている。みんな天ぷらが大好きなのだ。
たこ焼き風天ぷら、なんてのもあった。普通天ぷらとたこ焼きは結びつかないような気がするが、沖縄の天ぷらを知っている者にとってこの組み合わせは想像に難くない。ふわふわで塩味のついた衣に味の主眼を置く沖縄的天ぷら手法でいくと、タコの天ぷらというのは要するにたこ焼きなのだ。
食べてみたらやっぱりたこ焼きだった。これはこれですごくうまいのだけれど、ところで天ぷらってなんだっけ、と思い始めると首を傾げっぱなしだ。
次のページでは隠れた(本当の意味で隠れた)天ぷらの名店を紹介します。
沖縄的天ぷらの名店があると聞いて那覇にやってきた。事前に場所を調べてはいたのだけれど、行ってみるとぜんぜんわからない。困り果てて近くの市場のおばちゃんに聞いたらすぐに教えてくれた。
教えられたとおり、人とすれ違うのに苦労するくらいの細い路地をゆくと、突然おばちゃんが3人で天ぷらを揚げている場所があった。そう、こここそが名店、呉屋てんぷら屋だ。
呉屋てんぷら屋は路地に面した窓がいきなり厨房であり店頭でもある。今風にいうとオープンキッチンだ。店頭にはサーターアンダギー(沖縄版丸ドーナツ)がごろごろと、ショーケースにはイモ、イカ、魚など揚げたての天ぷらがまさにところ狭し(ほんとに狭い)と並んでいる。どれでも1個40円だ。
ひっきりなしに人がやってくるが、みんなさっと買ってさっと帰っていく。「魚とイカとゴマのアンダギーを3個ずつね、あったかいね、今日24度あるよ。」稲妻のように注文をすませ、おばちゃんが袋に天ぷらを詰めている間に送りバントみたいに世間話をしていく。店もお客もとにかくテンポがいいのだ。たぶん同じメニューを毎日のように注文しているんだろう。
僕もまねして注文をしながらいくつか質問をしてみた。
「ええっとイカと魚とイモと、これなんですか」
「かたはらんぶー」
「え?」
「か・た・は・ら・ん・ぶー」
「なんすか」
「お祝いの時はアンダギーとかたはらんぶー、それからあっちの松風を並べるの」
おばちゃんはずっと後ろを向いて油に向かったまま説明してくれた。これ以上リズムを崩させるのは粋ではないな、と思い買った天ぷらを手に路地を後にした。
ここの天ぷらもやはり衣がふわふわしていた。そしてその塩味の衣が相当分厚いので中に何が入っているのかは食べてみないとわからない。イカも魚もみな同じに見えるのだ。天ぷらとアンダギーを計4種類買ったのだけれど、歩きながら全部食べてしまった。食べはじめたらもう止まらない。
オキナワンファーストフード、天ぷら。これからも行く先々でついつい食べてしまうと思います。
呉屋てんぷら屋 沖縄県那覇市松尾2-11-1 |
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