冬至に食べるトゥンジージューシー
二十四気のひとつである「冬至」といえば、本土ではかぼちゃを食べたりゆず湯に入る風習があるが、沖縄ではジューシーを食べる。ジューシーとは沖縄風炊き込みご飯のことで、食堂などで沖縄そばとセットで提供されたり家庭でもよく食べられている沖縄料理だ。
スーパーへ行くといくつかのメーカーのジューシーの素が並んでおり、あぐー豚入りやフーチバー(よもぎ)入りなど、味のバリエーションも楽しめる。冬至にはこのジューシーを仏前とヒヌカン(火の神)にお供えしてから家族で食べ、家族の健康と子孫繁栄を願うとされている。
子孫繁栄の象徴である田芋(里芋の一種)を入れたターンムジューシーもこの時期ならではのお楽しみ。ほっくりとした食感が寒い季節にぴったりだ。
クリスマスにはとにかく鶏の丸焼き
お次はクリスマス。基本的には本土のクリスマスと変わらず、街のイルミネーションを楽しんだり家族や友人とクリスマスパーティーをしたりして過ごすのだが、沖縄はクリスマスのご馳走としての「鶏の丸焼き」への情熱が半端ないのだ。
そもそも沖縄ではニンニクがたっぷり詰まった鶏の丸焼きが特別なご馳走としてだけではなく普段からカジュアルに食されており専門店も多くある。これは、かつてブラジルやアルゼンチンなどへ移民で渡った沖縄県民が、帰国する際に現地でポピュラーだった鶏の丸焼きのレシピを持ち帰りそこから広まっていったものとされている。
ごはんにもお酒にもよく合う、スパイスやハーブの効いた味つけが魅力だ。
丸鶏好きな沖縄県民は、どこそこのお店の丸焼きが美味い、どこそこのお店は少し味つけが変わった、などと普段から情報交換に余念がないうえ、クリスマスが近づいてくるとさらにソワソワしだすのである。
それもそのはず、人気店ともなるとクリスマス前後の予約が受付開始からわずか数日、または数時間で埋まってしまうところもあるほどで、クリスマスにお気に入りの丸鶏をゲットするためこの時期沖縄県民の間では静かに丸鶏の争奪戦が繰り広げられているのだ。
シーサーがサンタコスプレをさせられがち
沖縄の街を歩いているとよく見かけるシーサー。集落や屋敷を厄災から遠ざけるありがたい守り神だが、クリスマスが近づくと浮かれたサンタコスプレをさせられがちなのもこの時期ならではの光景だ。
それぞれ100円ショップの材料などをうまく使って手作りしているのがなかなか趣深く、見かけるとつい写真を撮ってしまう。
シーサーは魔除けという役割から迫力のある表情をしているものが多いので、サンタコスの浮かれた雰囲気とのギャップがまたたまらない。
しめ縄に昆布を巻いた炭がついている
お正月が近づくと玄関などにしめ縄を飾るのは本土と同じなのだが、沖縄のしめ縄はみかんの下に炭に昆布を巻いたものが付いているのが特徴的。
これは「たん(炭)と喜ぶ(こんぶ)」の語呂合わせからきており、炭は永く朽ちないことから長寿や家の繁栄を表すといわれている。本土のものと比べると沖縄のしめ縄はシンプルで素朴な佇まいだ。
この炭飾りはしめ縄の他、家庭を守る神様である台所のヒヌカン(火の神)にもお供えして新年を迎える準備をする習わしがあるため、炭飾り単体でも販売されている。
年越しにもやっぱり沖縄そば
そして年越しといえば年越しそばが定番だが、沖縄では蕎麦粉を使った「日本蕎麦」ではなく「沖縄そば」を食べるという家庭が圧倒的に多い。
年末が近づくと沖縄そばメーカー各社は「年越し用」と銘打ち、麺とそばだし、三枚肉などのセット商品の販売に力を入れるようになる。
夜中(年越し)に食べるにしては日本蕎麦と比較してややこってりした印象の沖縄そばだが、沖縄県民のソウルフードなのでこれを食べなければ年が越せないという人も少なくない。
お雑煮よりも豚肉入りの汁物が定番
沖縄ではかつて年末に豚を屠殺して新年を迎える風習があったため、お正月には豚肉料理を食べるものだったのが、現代ではスーパーにお餅やおせち料理などが並ぶようになり、本土風のお正月料理を楽しむという家庭も増えている。
当然、お餅が入ったお雑煮も食べる習慣が無く、沖縄でお正月に食べる汁物といえば豚の内蔵が入ったすまし汁「中身汁」や、豚肉や甘いカステラかまぼこが入った白味噌仕立ての「イナムドゥチ」が一般的。
どちらも豚肉を使った沖縄らしい家庭料理なので、これを「おふくろの味」として記憶している人も多い。
年が明けてもお歳暮ギフト
そしてお歳暮。「暮れの元気なご挨拶♪」というCMフレーズがあったように、一年間の感謝を込めて年末の時期に渡すものだが、沖縄ではお歳暮は「正月三が日に直接手渡しするもの」という文化がある。
正月を過ぎたら「お年賀」になりそうなものだが、そのまま「お歳暮」の熨斗がついているのが一般的である(無地熨斗の場合もあり)。地域によっては現在も旧正月の方を盛大に行う地域もあるので、そのあたりが影響しているのだろうか。
正月三が日はだいたい親族郎党が仏壇のある本家に集まるので、それぞれが持ち寄ったお歳暮が仏壇前や床の間に山のように積まれることになる。
またお歳暮として贈る品物については高級ハムやお酒などより、お米やツナ缶など日常的に使われる食材が圧倒的に多いのも家族が多い沖縄ならではの特徴といえる。特に、定番のツナ缶は贈答用として箱売りされており、沖縄限定デザインの化粧箱があるほどの定番ギフトだ。
沖縄のチャンプルー料理などに使いやすく日持ちもして親族で分けやすいので、もらって嬉しいお歳暮ナンバーワンかもしれない。
お年玉の相場は1000円
沖縄のお正月といえば、仏壇のある家に親族が入れ替わり立ち替わりで新年の挨拶に訪れるところも多いのだが、子どもの数が多い沖縄だけに「○○の長男の○○」といった会ったこともない親戚に出くわすことも少なくない。
そのため、沖縄のお年玉は1000円が相場だといわれている。誰に会うか分からないので、毎年大量の千円札とポチ袋を用意しておくという人もいるほどだ。
ちなみにTwitterでは「小学校低学年のとき、お年玉の相場は25セントでした」という人がいて、お年玉にもドル時代が反映されていたことに驚いた。
まだまだあるぞ、沖縄ならでは
その他にもTwitterで沖縄の年末年始あるあるについて訪ねてみたところ
- おせち料理はなくてもオードブルは欠かせなかった
- お正月に放送される「新春民謡紅白歌合戦」なる沖縄民謡の歌番組をオジーオバーたちが毎年楽しみにしていた
- 初日の出ツーリングで沖縄最北端の辺戸岬が早朝から大混雑した
- お屠蘇は無くやっぱり泡盛だ
- 旧正月を盛大にやるので新暦の正月は特に何もしない
など沖縄らしさ溢れるコメントが寄せられた。
沖縄の年末年始は、やはり本土のそれとはかなり違う。違っていておもしろい。
ちなみに、年が明けるとそろそろ沖縄の桜、寒緋桜(カンヒザクラ)の開花時期。盆と正月は一緒に来ないが、桜と正月はほぼ一緒に来るのだ。やはり沖縄はおもしろい。