また作ってもらえますか?
作業途中に何度も「量産したら売れますよ!商品化しましょうよ!」と言ったがずっと苦笑いだった。
終わったらこんなにいい笑顔なのに!
石から彫り出したシーサー「石獅子(いしじし)」がかわいいので、黒糖で作った黒糖獅子があったら料理に使うときも楽しいなと思ったのだ。
でも自分で彫れる技術があるとは思えなかったので、プロに頼んだら想像以上にかわいいものに出会えた。
石獅子とは、沖縄で昔から村を災いから守るために、村落の入り口などに置かれていた守り神のこと。
戦後、民間に広く普及したシーサーのルーツにもなっていると言われており、目の粗い琉球石灰岩などを手彫りして作られているので、それぞれに無骨ながらも愛らしい表情をしているのがたまらない。
そんな石獅子に魅了されすぎた夫婦がいる。
ご夫婦は那覇市の首里城の城下町でショップ兼工房「スタジオde-jin(でーじん)」を立ち上げ石獅子の魅力を発信している。
ご主人の若山(わかやま)大地さんは沖縄県内でもほとんどいない石獅子作家として、奥様の若山恵里さんは沖縄中を歩いて森や藪の中に隠れていたものも含め約130体の石獅子を見つけ本にした。
そんな石獅子夫婦の前に用意した黒糖を。
石の代わりに黒糖で獅子を作って欲しいのですが、と恐る恐るお願いしてみたところ、なんで黒糖で?と困惑されつつも面白そうだから!ということでやってもらえることに。ノリの良いご夫婦で本当に良かった。
なるべく厚みのありそうな黒糖の塊を買ってきたので大きさ的には問題ないようだが、黒糖を彫ったことがないので途中で割れるかもしれないし、どうなるのかまったく想像がつきませんとのことだった。
割れたら割れたときだろう。石獅子だったら売りものにはならないが、黒糖獅子なら食べるには問題ない。
心配したが、「めっちゃ彫りやすい」とのことだった。毎日硬い石と向き合っているので、黒糖の柔らかくて粘りのある(水分が多い)塊が彫りやすすぎて驚いたそう。
石の道具では彫れないだろうという長年の勘で小刀を用意していただいていたようだが、いざ彫ってみるとそのまま石の道具で問題なさそうとのこと。
せっかく用意してもらっていたのになんかすみません。
まずは手始めにと練習がてら顔だけの獅子を彫っていただいたのだが、ものの15分ほどで彫れてしまった。
これが石ならば通常3時間ほどかかるらしい。
彫り出された黒糖が吐瀉物にも見えなくもないが。
続いて2体目の制作に入る。2体目にして大地さんは既に黒糖の性質を把握しだしたようで、さすがプロである。
通常は万力に挟んで固定するらしいが、万力だと固定する力が強すぎて黒糖が割れてしまうかもしれないからと恵里さんを万力がわりをすることに。
どんどん彫り進める大地さんを前に、怯える恵里さん。
大地さんがあまりに楽しそうに彫り進めていくので、これからは石獅子に加えて黒糖獅子も商品化できるのでは!?と提案したのだが、「それは..」と渋い反応。
理由はめちゃくちゃ手がベタベタして気持ち悪いからだそう。
彫り始めて30分後完成。石獅子は3時間かかるのでの6倍のスピードである。
かわいい!
しかし、途中から気づいていたが、当初のもくろみである"料理に使う"にはでかすぎる。
黒糖獅子を使ってラフテーなどを作るとしたら30人前ぐらいになりそうだ。
かといって頭から少しづつ削ぎ落として使うのはどうにも忍びない。
黒糖獅子はこの後どうするかもう少し考えるとして、ひとまず料理にはこちらの黒糖を使おうと思う。
作業途中に何度も「量産したら売れますよ!商品化しましょうよ!」と言ったがずっと苦笑いだった。
終わったらこんなにいい笑顔なのに!
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