特集 2022年4月4日

北海道の郷土料理「いずし」を食べてもらいたい

北海道のスーパーで売られている郷土料理「いずし」をクール便で配送。いずしビギナーのお二人に食べてもらいました。

「いずし」という料理をご存知だろうか。

北海道ではスーパー等で販売されており簡単に手に入るのだが、おそらく北国以外ではほとんど知名度ゼロの料理であろう。

魚の切り身を麹で漬けこんだ発酵食品なのだが、これがうまいのだ。北国の民だけでこっそり食べているなんてもったいない。ぜひとも世間に「見つかって」ほしい。

クール便を駆使して本州に密輸し(合法です)、いずしのおいしさに気づいてもらおうと思う。

北海道在住の大学生。演劇サークルに所属していますが、やったことがあるのは音響担当・舞台装置担当・当日宣伝担当で、一度も演技をしたことがありません。好物はパステルのなめらかプリン。

前の記事:都市は巨大化する-北海道民の出身地紹介 傾向と対策


北海道の郷土料理「いずし(飯寿司)」とは

「いずし」は鮭などの生魚を野菜と一緒に米麹で漬けこんだ発酵食品である。寒い冬に数か月漬けこみ食する、北海道の冬の風物詩と言っていい食品だと思う。

生魚・にんじん・米麹のお漬物といった感じ。乳酸発酵によるほんのりとした酸味と、魚のうまみが大爆発。

古くは各家庭で漬けることが多かったいずしであるが、一般家庭で生ものを漬けるのはけっこうハードルが高く、現在はスーパーで買うことが多い。

スーパーの生鮮食品コーナーに「いずし」の一角があり、ご家庭用に様々なバリエーションのいずしが販売されているのだ。

小分けにパックされていて、手軽にいずしを楽しめる
鮭やほっけ、はたはたなど、様々なバリエーション!

北海道ではかなりの市民権を得ていてたいへん美味しいいずしだが、北日本を出ると途端に知名度が怪しくなってくる。僕はみなさんにいずしの存在を知らしめたい。知らしめようじゃないか。クール便を使って。

リモート・いずしを食べる会、開催

デイリーポータルZ編集長・林さんとライター・パリッコさんにご協力いただいて、「リモート・いずしを食べる会」を開催した。

右上:林さん、下:パリッコさん(以下、敬称略)

地元北海道のスーパーで普通に売られているいずしパックを厳重に梱包のうえ、あらかじめクール便で届けておいた。

無事に届いたようです!

林さんとパリッコさんに今回送付したのは……

・鮭のいずし
・ほっけのいずし
・にしんのいずし
・はたはたのいずし

の4種類。先ほどの画像で紹介した、近所のスーパーで手に入る主なものを全て送ってみた。

林さんはいずし未経験、パリッコさんは酒場で一度だけ食べたことがあるいずしビギナーとのこと。このお二人に4種のいずしをじゃんじゃん食べて比べてもらい、いずしの美味さにバリバリ気づいていただこう。

まずはいずしレクチャー

:そもそもいずしは主食ですか?おかず?

ジーン:うーん…。微妙ですね。あえていうなら小鉢ですかね。ごはんのおかずという位置づけではないかもしれないです。

:いずしって、鮭のいずしは聞いたことがあるんですけど、北海道では普通にこんなバリエーションのものが売られているんですね。

ジーン:色んな種類のいずしがスーパーにあるんです。

パリッコ:えっこんなに種類、売ってるんですか。

ジーン:はい。いずし、東京で見かけたりしますか?

パリッコ:魚が美味しい居酒屋で一度にしんのいずしを食べたことがあって、美味しかった記憶があるんですが…。

:スーパーにはないですよね。

パリッコ:いずしって、魚は生なんですか? いわゆる「刺身」なんですか??

ジーン:生の魚を、麹と野菜とかと一緒に漬けている感じです(詳しくは伊藤健史さんの記事をご覧ください)

:これ、もう送られて来た瞬間、「絶対自分で買わないものだな。これは人んちのものが来た」っていう嬉しさがありますよ。

発酵食品なので酸っぱいにおいがするのは正常です

鮭のいずし

まずは王道(だと僕が思っている)、鮭のいずしを食べてもらう。

癖がなく、子供でも食べやすい味。小学生だった僕は鮭のいずし、めちゃくちゃ食べてました!渋い!

ジーン:まずは鮭のいずしを……。

パリッコ:あれっ、米がついてますよね。

:これ、米がついた状態で食べるものなんですか?

ジーン:そのままいきましょう!

パリッコ:一旦、米だけ食ってみましょうか。

:米食ってみましょう。

おそるおそる米だけ食べてみるお二方
うまい…!

パリッコ:あっ、うまい!

:うまい! これ寿司じゃないですか! 関西の押し寿司みたいな。これ鮭入ってたらうまいはずですよね。

パリッコ:だんだん麹っぽい風味がしてきますね。で…。

ついに鮭本体を実食!

パリッコ:鮭本体いただきます!

:けっこうかたいんだ!

しみじみ「うまい…」とお二人
さすがパリッコさん、鮮やかな流れでお酒が出てきました

:これは何かで受け止めないといけないですね。この味の濃さを。

パリッコ:酒ですね。

ジーン:おじいちゃんとかがいずしと日本酒合わせて飲んでいる印象ありますね。

:これは日本酒かもしれないな……。

パリッコ:サーモンの刺身って3切れくらいで「もういいや」ってなっちゃうじゃないですか、かといって焼鮭とも違う…これだったらちびちびずーっといけそうですね。

:さっき「いずしは主食?おかず?」と聞きましたけど、そういうのじゃないですね。単体で美味しいし…。

近くにいたべつやくさん:これはおかずではないね。

ジーン:独特の立ち位置!

:パックを開けるとき、いずしに人参が入っているのを見て「人参か…」と思ってたんですけど、これ、鮭だけだと旨すぎるから、人参要りますね。

パリッコ:旨味を下げるって、どういう理由ですか(笑)

:全部鮭だと旨すぎるから、正気に戻るために(笑)

ジーン:皮の部分のコリコリ感、とてもよくないですか?

パリッコ:わかる! 刺身って皮ついていないじゃないですか。この皮がついているのがいいですよね。にしんのいずし、けっこう皮ついてますね。次はにしんいってみましょうか。

しみじみ「うまい…」を連呼する両氏。つぎはにしんのいずしを食べてみるようです。

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にしんのいずし

北海道でたくさん獲れるにしん。春ににしんが産卵のために海岸に押し寄せ、海が白く濁る「群来(くき)」が毎年地元のニュースになりがち。

パリッコ:ほら、見てください!

「表はにしんで…」
「うらはびっしり米なので、ほぼ寿司ですよこれ!」

パリッコ:うまッ!!

うまさのあまりのけ反ってしまう!
「いただきます」
笑みがこぼれる

:これめちゃくちゃうまいっすね。

パリッコ:すぐわかりますよね、この感じ。

パリッコ:押し寿司っぽい。

パリッコ:光物の押し寿司の感じですよね。

:にしんってあまりちゃんと向き合ったことなかったんですけど、こんなサーディンみたいな青魚の味なんですね。

パリッコ:「こんなサーディンだったんだ」(笑)

:「サーディンじゃないか!」って感じ。あ~、うまい。

パリッコ:これがスーパーで売ってるんですか!? 賞味期限までそこそこあるから、ちびちび食える寿司みたいでいいですねこれ。

:皮の端の脂身のところすごく美味いですね…。脂のっているところ。

パリッコ:皮目のコリコリ感も脂の乗りもいいですね。

:旨味がすごいですよね。

パリッコ:定期便で送ってくれないかな。398円なんですね。手ごろな感じで。近所のスーパーで売ってほしいなぁ。

:これパンに挟んだら合いそうですね。

パリッコ:フランスパンみたいなハードパン、合いそうですね。

ジーン:売れますね。バインミーみたい。

:他のもいきますか。

パリッコ:はたはたを最後に残しておきたいので、次はほっけで!

にしんのいずしでバインミー、果たしていけるのか……。のけぞるほど美味いにしんに続いて、次はほっけのいずしへ。

ほっけのいずし

焼き魚で有名な、あのほっけが生で!

:ほっけって「開き」のもの以外そんな見ないよね…。けっこう生々しいですね。

パリッコ:焼いたでっかいやつしか見たことないから、この生々しさ、見たことないですね。

:皮のテクスチャが…。

パリッコ:皮がね。

:財布みたいじゃないですか。

パリッコ:いただきます!

うんうんとうなずいています

:うまいじゃないですか。

パリッコ:うまい! にしんに近いけど、皮のかたさがうまいですね。

:にしんに近いけど、確かにほっけっぽい、にしんと違うところがありますね。

パリッコ:ほんとだ!

:ほっけの開きで感じる味だ…。

パリッコ:漬けられても、ほっけのスケールの大きさを感じますね。北海道っぽい感じ。概念的ですけど。

:ほっけの味を初めて認識したなあ。ほっけの開きとか、居酒屋でなんとなく食べてるじゃないですか。さっきのにしんは「うまみ、ギュっ」っていう"うまみポルノ"みたいな感じでしたけど、ほっけは「あ~そうそうほっけね、これくらいだったわ」っていう。

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はたはたのいずし

パリッコ:はたはたいきましょうか。

:いきましょう。

北海道でよく獲れる魚、はたはた。よく獲れるものの、地元ではなぜか食べる機会が少ないかもしれない。

:はたはたってどんな魚なんですかね。

パリッコ:子持ちはたはたを焼いて食べると、卵がかなりの粘度で好き嫌いが分かれるんですよ。いずしのはたはたは卵入ってないですよね。はたはたの身は身としてうまいんじゃないかっていう興味があります。

:これもう「魚」じゃないですか。まるっと。

パリッコ:ああ!おいしい!

:うまいじゃないですか、これ。

パリッコ:いずしの良さをいちばん体現しているような感じですね。

:ツルツルした脂っぽい感じ、うまいなあ。

パリッコ:脂の感じと、皮のコリコリした感じもいちばんこれがあるし、米もまとってるし。これひとパックで一か月吞めますよ。

パリッコ:…これ、一尾をちょっとした小皿にのせて出したら居酒屋始められますよ。

:お通しに出てきたら「やっべえこの店」って思いますね。

パリッコ:この店通おうってなりますね。

:これがお通しに出てくる店で〆にラーメンとかあったらすっげえ美味いだろうなぁ。

パリッコ:澄んだスープでしょうね。

:生の寿司を美味いなって食ってましたけど、こうやって漬けて発酵させて味をギュっとさらにブーストしてあるやつってうまいですね。

パリッコ:いずし、これがひとつあってくれるといいですよね。


いずしがスター選手となる日が来るか

「いずしが気軽に買えるんだったら北海道最高すぎるんだけど。毎日これで飲みたいですよ」とパリッコさん。さらに途中、「これは日本酒だなぁ」と断酒中の林さんがなんと酒解禁

いずし、食べ物としてのパワーがものすごい。

「いずし」と検索すると贈答用のものがヒットし、ちょっと量は多いが簡単に入手することはできる。珍しいものでは高級魚きんきのいずしや牛肉のいずしもあるそうだ。気になった方はぜひ食べて、いずしをスターダムに押し上げてほしい。

にしんのいずしバインミー、実際にやってみましたがびっくりの美味さでした。これ、もっと磨けば売れるかも。
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