「半年後の楽しみ」が、「1年後の楽しみ」になった
高校生クイズは5年間続いた超難問期、2年間の原点回帰期を経て、ここ2回は地頭力がキーワードになった。来年はどうなるんだろう、早くも楽しみである。
半年前から人知れず楽しみにしていたイベントがある。それが「高校生クイズ鑑賞会」だ。
高校生クイズが大好きだ。
知力、体力、時の運、知の甲子園、ああ高校生クイズ。
一応説明しておくと、高校生クイズとは毎年夏に全国の高校生が集まって開催される日本テレビ系列のクイズ番組である。
例年誰かしらを誘って観戦しているのだけど、今回ふと「ライターの井上マサキさんと一緒に観たい」と思ったのだ。
というのも、井上さんは『超逆境クイズバトル!!99人の壁』というクイズ番組にて100万円を獲得するほどの実力者であり、テレビ番組レビューの連載を持つほどのテレビっ子だからだ。一緒に観たら楽しいに決まってる。
そう思いついたのが今年の2月ごろ。さすがに半年先の催しに声をかけたら気持ち悪いよな…と内に秘めていたが、つい先日満を持してオファーし、鑑賞会2019の開催が決まったのだ。
参加者を募ったところ、同じくクイズ好きの江ノ島さん、当サイトでもプープーテレビにて『テレビ報告』の連載をしている放送作家のヒロエさん、編集長の林さん、と心強いメンバーが集まった。もうこれは高校生クイズ鑑賞アベンジャーズだ。
で、そもそもこういった流れなので記事にするつもりもなかったのだけど、林さんから「楽しいことは記事にしたらいい」という言葉をもらったので、確かに、と思いこうして書いている。
この記事は驚くような展開もなければ、何のてらいもない、ただの報告である。
当たり前のことを言うが、高校生クイズはみんなで観ると楽しい。その当日の様子と、なんで楽しいんだろうな、ということを考えた。
※特に番組自体の内容に深く触れるものではない。井上さんの番組レビューがQUIZ JAPANに上がっているので番組の様子は良かったらこちら。
クイズ番組の楽しさって、やっぱり誰かと競って早く答えられたときの爽快感だと思う。
一人で観ていると、それは画面の向こうの高校生がライバルになるのだけど、あまりにも彼らとは問題に対峙する環境が違うし、解けてもそれを共有できないのだ。
今日は、横に4人、同じタイミングで問題に挑む人たちがいる。そんなの楽しいに決まっている。
筆者はもともとクイズが好きで、その延長で『高校生クイズ』という番組自体のファン目線で観ているのだけど、人数が集まると見方が広がるのもいい。
井上さん、江ノ島さんは同じくクイズ好きの目線で観るのに対し、林さんは「この高校生、将来どんな大人になるのだろう」という、参加者に対しての関心メインで観ているらしい。
浮いている風船を下へ落とした数を競うステージでは、様々な趣向を凝らして用意した道具が今ひとつ機能せず、あわてて道具を捨てジャンプで一つずつ風船を回収する様を見て「人間やなあ」とつぶやいていた。
通常のクイズ番組と異なり、勝ち進んだ高校生たちに焦点が当たることで自然と応援したくなるチームができたり、人間模様に笑みを浮かべることができるのも高校生クイズの醍醐味。
今回の大会では”陽気なおっちょこちょい3人組”とフレーズが与えられていた広島のAICJ高校が我々に刺さり、「人間だなあ」と微笑みの対象となった。
江ノ島さんが予想以上にクイズに詳しいのも面白かった。
江ノ島さん曰く、かの有名な『アメリカ横断ウルトラクイズ』という超難易度番組の司会をしていた福留さんが、人間ドラマの見える番組がやりたい、との思いからスタートしたのがこの高校生クイズという番組なのだそうだ※。道理で、人間たちが戦ってると思った。
番組の背景を知ると、また見方が変わる。開催してよかった。
※高校生から、ウルトラクイズに出たいというオファーが多くあったのもきっかけらしい
井上さんと江ノ島さんはその後も「あの番組は日高さん(※著名なクイズ作家)が問題を作っている」「99人の壁は矢野さん、日高さん、長戸さんもいる。最強の布陣」など、クイズ作家を主語にしたトークに花を咲かせていた。
そしてやっぱり井上さんが詳しい。あと、写真を見ていただくと伝わると思うが、リアクションがとにかく魅力的なのだ。なんて鑑賞会にいてほしいひとなんだ。
冒頭で、競うのが楽しいという話をしたが、最終的にはこの場の誰かが答えにたどり着いただけで盛り上がった。
中でもこの日一際湧いたのが5回戦の「二択ウォール」だ。ざっくりざっくり言うとあるなしクイズである。
出された絵の共通項を探して、当てはまる方を二択で選んでいく(もちろん戦略はあるのだけど、ここでは割愛する)のだけど、これがなかなかに難易度が高い。
こんな具合なので、もう誰かが答えるだけで乾杯だ。
通常のクイズだと早押しで一瞬にして勝負がついてしまう。今回のひらめき系の出題だと全員がうんうん唸った後の「あっ!」だからこその良さがあった。脳みそのデトックスだ。
高校生クイズは、視聴者を飽きさせないためだろう、試行錯誤を重ねてテーマや傾向を年々変えていく。だからこそ賛否両論のある回も多い。高校野球でいうと、「今年は甲子園の1塁と2塁のあいだに池を作ります!」と高野連がルール変更するようなものだ。
でもそのやきもきも高校生クイズの魅力だと思う。あれだけ反対派の多かった2010年前後の”超難問期”※だって、今や「あの頃はよかった」と口々に懐古されていたりもするのだ。
※2008〜2012年の間は徹底した知力重視路線で、到底一般人には解けない難問が多く出され、当時は「視聴者の入る余地がない」と批判も多かった
そりゃあ筆者も(決勝くらいは早押しクイズでも良いのでは?)と思わないでもないけど、編集のされ方にハラハラしたりしないでもないけど。なにより、複数人で観るとそれも含めてつっこんだりして昇華もできるのである。
要は、楽しかったのだ。今年も高校生クイズのエンディングとともに、夏が終わってしまった。
高校生クイズは5年間続いた超難問期、2年間の原点回帰期を経て、ここ2回は地頭力がキーワードになった。来年はどうなるんだろう、早くも楽しみである。
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